テクノロジー

IBMとデロイト、IT投資可視化で協業し経営管理の高度化を支援

IBMとデロイト トーマツが、SaaSプラットフォーム「Apptio」を軸にITコストと投資価値の可視化で協業。TBMを用いた経営管理の定着支援や社内導入で得た知見を顧客に還元し、FinOpsやサステナビリティ経営の強化を目指す。

IBMとデロイト、IT投資可視化で協業し経営管理の高度化を支援
©イラスト AI生成 :編集部/プレスリリースジェーピー

IBMとデロイトがApptioで連携、IT投資の可視化と経営判断の強化へ

日本アイ・ビー・エムと合同会社デロイト トーマツは、SaaS型プラットフォーム「Apptio」を中心に、企業のITコスト構造とIT投資の価値を可視化・分析する協業を進めると発表した。両社は戦略立案から導入、定着までを包括的に支援する体制を整え、財務とITを結びつけるフレームワークであるTBM(Technology Business Management)の適用を通じて、経営レベルの意思決定を促すことを狙う。

協業は、IBMの技術プラットフォームとデロイト トーマツのアドバイザリー知見を融合するもので、日本市場におけるApptioの導入・活用支援が主な焦点だ。両社は既にグローバルでの連携実績があり、日本でもFinOpsやサステナビリティ経営、サイバーセキュリティ、生成AIの領域で協働してきたという。今回の取り組みは、これらの延長線上で、企業がIT投資の効果とコストを全社視点で管理するための支援を強化する。

「Apptioは、そのTBMを全社で実践するためのプラットフォームです。」

両社が強調するポイントは、単なるコストの“見える化”にとどまらず、財務の観点と結びつけて具体的なアクションにつなげる点にある。デロイト側は、TBMを組織横断で運用するための業務プロセス改革やTBMオフィスの立ち上げ支援まで含めた伴走支援を提供するとしている。導入後の継続的な改善サイクルを確立することが、経営管理の高度化に不可欠だと位置づける。

導入実践と内部検証が示す“伴走”の意義

デロイト トーマツは自社を“クライアントゼロ”としてApptioの導入に取り組み、得られた知見をコンサルティングに反映させる方針だ。2025年末から実施したPoC(実証実験)でTBMに基づく分析の実効性を確認し、その後に本格導入を進めた過程で、データ不足が業務プロセス改革の契機になったという。こうした実地の経験を持つことで、顧客に対してより現実的で実行可能な導入プランを提示できることが期待される。

協業の実務面では、IBMがApptioを含む技術基盤やプラットフォームを提供し、デロイトがTBMの適用や業務改革、ファイナンスとの連携設計などのアドバイザリーを担う役割分担が示されている。これにより、戦略立案から運用・定着までのエンド・ツー・エンドの支援が可能になるとしている。

国内外での採用状況と業界組織の関与

Apptioはグローバルで広く採用されており、報告ではフォーチュン500企業の60%超で導入されているとされる。また、TBMの普及と標準化を担う組織であるTBM Council Japanには500名超の会員が参加し、CEOやCIO、CFO、経営企画、IT、財務、DX部門のリーダーらが関与している点が紹介されている。こうした業界横断の取り組みは、TBMを単なる技術手段ではなく経営の共通言語にすることを目指す動きだ。

項目数値・状況
フォーチュン500への導入率60%以上
TBM Council Japan 会員数500名超

こうした採用実績とコミュニティの存在は、TBMを取り巻くエコシステムが一定の成熟段階にあることを示す。しかし、日本企業が自社の経営管理やITファイナンス業務の高度化を実現するには、単にツールを導入するだけでは不十分で、組織内の役割調整やデータ基盤の整備、業務プロセスの見直しが不可欠だと両社は指摘する。

背景と示唆される影響

近年、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中で、ITへの支出規模は拡大を続けている。一方で、投資対効果の評価や予算配分の妥当性を巡る経営判断は依然として難しい課題だ。TBMはこうした課題に対し、財務と技術・事業の間に共通の尺度を作ることで、より合理的な配分や効果の検証を可能にするフレームワークとして注目されている。

今回の協業は、日本の大企業や上場企業に対し、ITコストの最適化や投資価値の可視化を経営課題として取り組むための実行支援を拡充するものだ。特に、以下の点で影響が考えられる。

  • 上場企業の財務報告とIT投資評価の精緻化に寄与し、取締役会やCFOレベルでの議論が高度化する可能性
  • IT部門と財務部門、事業部門の連携を促進することで、資源配分の透明性が向上すること
  • サステナビリティ経営や生成AI活用など、新たな投資領域での費用対効果の検証がしやすくなること

ただし、導入の実効性を高めるためにはデータ収集体制の整備や業務プロセスの刷新、人材育成などの取り組みが必要であり、短期的な成果だけに依存するのは危険だ。デロイト側が自社での実運用を通じて見えた課題を公表している点は、実践的な導入支援を重視する姿勢を示している。

企業側に求められる対応

経営層は、IT投資を単なるコストではなく戦略的資源として位置づける視点を明確にする必要がある。TBMを導入する際には、次の点が重要になる。

  • 経営目標と連動したKPI設計とデータ収集基盤の整備
  • 財務、IT、事業部門の役割と責任の明確化
  • 導入後の継続的改善サイクル(TBMオフィスなど)の構築

IBMとデロイトの協業は、こうした包括的な支援を提供することで、企業が長期的な経営判断の質を高めることを目指す。だが最終的な成否は、導入を受ける企業自身が組織文化や業務プロセスを変革できるかどうかにかかっている。

今回の発表は、IT投資の見える化と経営の連動に関心を持つ企業にとって、実務的な選択肢の一つを示した。今後、国内の大手企業や上場企業がどの程度この枠組みを採用し、実際に経営管理や投資判断の改善につなげられるかが注目される。

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