香港で秋田の魅力を直接発信
秋田県の鈴木健太知事は7月22日、台湾から香港入りし、同地で観光誘客と県産品の販路拡大に向けたトップセールスを行った。知事の香港訪問は初で、現地の旅行会社や小売店を訪れ、秋田の食や観光資源を実際に手渡しで売り込んだ。
訪問先には、香港から日本への送客実績を持つ旅行会社EGLツアーズ(東瀛遊)や、秋田県産品を扱う高級スーパーマーケットのcity'super(シティスーパー)が含まれる。city'superでは、今春の展開で好評だった大館産の米に続き、日本酒、稲庭うどん、いぶりがっこなど約40品目を並べ、中央に大きな秋田犬のぬいぐるみを置いてコーナーを演出したという。
鈴木知事は現地で、秋田の「食」や「温泉」「自然景観」、さらに県内に多くある国指定の重要無形民俗文化財を挙げながら、香港マーケットへの期待を示した。県が示したデータによれば、2025年の香港からの秋田県延べ宿泊者数は7,570人で、国・地域別では台湾、中国、アメリカに次ぐ4位となっている一方で、全国的・東北内での比率は相対的に低い現状があるとされる。
この数値を踏まえ、鈴木知事は「マーケットの規模だけでは見えないポテンシャルがある」と指摘し、秋田の「癒やしの旅」や食文化の訴求を今後の基本戦略として示した。香港の来訪客が秋田に来ても宿泊せずに他県へ移動してしまう課題についても触れ、滞在時間の延長や宿泊につながる観光商品の開発が必要との認識を示した。
- 現地での販売品目には、糖度23度以上のスチューベンを用いた横手のブドウジュースなど、地域性の強い加工品も含まれる。
- 県の観光アピールには、男鹿のナマハゲ、竿燈まつり、美郷町の六郷のかまくらなど、複数の文化資源が取り上げられた。
香港の高品質志向の消費者に向けた試みとして、city'superでの常設販売へつなげたことは実務的な前進だ。県内事業者にとっては、現地での販売実績が販路拡大の足がかりとなる可能性がある。今後、どの品目が継続的に売れるか、価格帯やパッケージングの最適化など、細かい調整が必要となるだろう。
また、香港側の旅行会社との接触は、秋田への送客ルートを強化する上で重要だ。鈴木知事は訪問先で、秋田の「すいている」点や湯治に適した温泉資源、レベルの高い食文化を訴え、香港のビジネスパーソンや観光客が「リラックスできる」目的地として秋田を意識するよう働きかけた。
「データの人口規模の数字だけで見るとマーケットが限られている印象だったが、実際に来てみるとポテンシャルは高い」と鈴木知事。
現地での反応として、大館の米が好評だった点は注目される。農産品や加工品は品質評価が高ければ継続的な販売につながる可能性が高く、県は今後も現地の流通事情を踏まえた生産・出荷体制の整備や、検疫・表示対応などの後方支援を検討する必要がある。
住民・事業者への具体的な影響としては、次の点が挙げられる。
- 販路拡大により、地元農林水産・加工業者の受注増のチャンスが生まれる可能性がある。
- 観光客数の増加が実現すれば、宿泊業・飲食業などの地域サービス業に直接的な経済効果が期待されるが、同時に受け入れ体制・誘客商品の整備が不可欠である。
- 短期的には試験的な販売・ツアー造成が続く見込みで、事業者は品質管理や安定供給、英語・中国語表記などの対応準備を進める必要がある。
県が掲げる課題は明確だ。香港からの来県者数は増加傾向にあるものの、秋田までの送客や宿泊につなげるにはさらなる工夫が求められる。県内の観光・物産関係者は、今回の現地取引や意見交換の成果をどう地域振興に結び付けるかが問われるだろう。
鈴木知事の今回の訪問は、行政トップが直接マーケットへ出向き、生の反応を得るという点で意義がある。今後は、現地で得た手応えを踏まえ、参加事業者の販路拡大支援や、滞在時間を伸ばす観光商品の具体化、受け入れインフラの充実に向けた施策実行が求められる。県民や事業者には、観光・物産振興の機運を見極めつつ、品質向上と輸出準備を進めることが現実的な対応となる。
| ポイント | 現状・課題 |
|---|---|
| 香港からの延べ宿泊者数(2025) | 7,570人(国・地域別で4位) |
| 現地販売状況 | city'superで約40品目を展開、大館の米は好評で常設化へ |
秋田としては、短期の販路確保だけでなく、中長期的なブランド戦略と旅行商品の造成が重要だ。香港市場は規模こそ限定的でも高付加価値市場の側面があり、首都圏とは異なる顧客層を取り込む余地がある。今回の取り組みが次の段階へどう発展するか、地元事業者と行政の連携が注目される。