被災の記憶を次に生かすために
2023年7月に秋田市を襲った記録的大雨から間もなく3年を迎える中、秋田市社会福祉協議会が中心となり、被災者支援に携わった民生委員やNPOなどが一堂に会して報告会を開いた。会場には、現場で対応に当たった関係者が集まり、当時の対応を振り返るとともに、今後の災害対応に向けた課題や学びを共有した。
この大雨で床上・床下浸水の被害は6,000戸以上にのぼり、地域の生活基盤が深刻な打撃を受けた。社会福祉協議会は被災者支援の拠点として「地域支え合いセンター」を設置し、戸別訪問やサロンの開設を通じて被災者のニーズ把握と孤立を防ぐ取り組みを続けてきた。センターは被災者の自立支援を進め、今年3月に閉所した。
報告会で秋田市社会福祉協議会の担当者は、現場での実務を次の点から評価しつつ、課題を率直に示した。社協の戸島健人氏は「誰一人取り残さないというところを合言葉に進めてきた」と述べる一方で、限られた人数と時間の中でどこまで被災者の自立を支えられたかという点については検証が必要だと語った。
「様々な機関の協力なくして今後の被災者支援は行えないというところが、この2年と5か月実施してきて思ったところであります」(戸島健人)
報告会には、支援活動を続けているNPOや民生委員、サロンの代表らが参加し、パネルディスカッションで現場の実感を共有した。登壇者の言葉からは、支援の現場で何よりも重視されたのが「顔の見える関係づくり」であることが浮かび上がった。
- 被災者への戸別訪問によるきめ細かいニーズ把握
- 地域サロンによる被災者の居場所の確保と交流促進
- 行政や他機関との平時からの情報共有と連携体制の構築
例えば、NPO法人あきたパートナーシップの畠山順子理事長は、今回の活動を通じて「私たち民間も含めて顔の見える関係づくりっていうのが一番今回体験して思ったことです」と発言。地域の中で信頼関係を築くことが、支援の継続性と効果につながると強調した。
また築山地区民生児童委員協議会の鈴木夏代会長は、平時の地域福祉活動と有事の被災者支援が連続している点を指摘し、「平時の地域福祉活動と有事の際の被災者支援の防災福祉は、どちらも住民の命を守るためにつながってることを実感いたしました」と話した。日常的な活動が災害時の対応力を高めるという実感が共有された。
センターの活動を引き継いだサロン「サロン東」の代表、髙𫞏久美子さん(自身も被災者)は、被災体験を背景に地域との結びつきの重要性を訴えた。高𫞏さんは「地域と社会のつながりがやっぱり一番なんじゃないかなと思います」と述べ、被災者自身が支援のための場を維持・運営していく意義を示した。
課題と今後の備え
報告会では、多くの登壇者が共通して、以下の問題を指摘した。
- 人的資源の限界:平時からの準備とボランティアの継続的な確保が必須であること。
- 情報共有の仕組み:要介護者など生活支援が必要な人の情報を平時から行政と共有すること。
- 支援の継続性:短期的な支援で終わらせず、生活再建まで見据えた長期的な支援体制の整備。
こうした課題は秋田市固有のものにとどまらない。大規模災害が発生した際に、同様の支援体制を迅速に立ち上げられるかは、全国の地域共助の在り方を問い直す問題でもある。戸島氏も報告で、同じような大規模災害が再度発生した場合に同等のサポートが可能かについて「首をかしげるところ」と率直に述べ、平時からの準備の必要性を強調した。
| 項目 | 報告時の状況 |
|---|---|
| 床上・床下浸水戸数 | 6,000戸以上 |
| 拠点 | 地域支え合いセンター(今年3月閉所) |
支援者たちは、今回の取り組みを通して得た知見を地域福祉活動に還元し、将来の災害に備える意思を確認した。報告会の場は、現場での知見を整理し、行政・民間・地域住民がどのように連携していくかを改めて議論する契機となった。
被災からの回復は個々の生活再建と同時に、地域の絆をどう取り戻し強化するかという課題でもある。顔の見える関係づくりや平時の情報共有が、被災者を支える最も基本的な防災福祉の土台であることを、今回の報告会はあらためて示した。
今後、秋田市の経験が他地域での災害対応の改善にどのように生かされるかが注目される。行政や支援団体は、報告に寄せられた現場の声を踏まえ、持続可能な支援体制と平時からのネットワーク構築に取り組む必要がある。