設計選定、公開プレゼンを経て非公開審議へ
徳島県が藍場浜公園(徳島市)で進める「県立新ホール」の設計事業者を選ぶため、7月27日に徳島市内で提案者説明が行われた。一次審査を通過した5事業者が公開の場でそれぞれの設計コンセプトを示し、学識者や舞台関係者ら7人の審査員による審議が現在、非公開で進められている。県は夕方以降に審査結果を発表する見通しだ。
今回の手続きは事業スケジュールの転換を受けたものだ。設計と施工を一括で担う事業者公募が2度続けて不調に終わったため、まず設計事業者のみを先行して選ぶ方式に切り替えている。設計の方向性が固まることで、後段の施工入札や周辺整備計画の具体化に影響を与えることから、決定の意味は大きい。
提示された設計の方向性
提案説明に臨んだ事業者は、ホールを中心とした周辺との連携や、バリアフリー、緑化、景観への配慮を強調した。提示された主な特徴は次の通りである。
- 歩行者動線と既存施設との接続を重視する案(プロムナードデッキ等)
- 劇場空間を上部に配置し、地上とつながる広場をつくる案
- 徳島の伝統的な演舞構成をホールの設計に取り込む案
- 屋上やデッキを公園と連続させ、県民の憩いの場とする緑化案
- 水辺の眺望や川との連続性を生かす案
会場での発表は約30人の県民が見守る公開形式だった一方、審査自体は非公開で行われている。県は設計のコンセプトを基に優先交渉権者を決定し、その後、具体的な設計契約や施工手続きへ進む計画だ。
「プロムナードデッキと呼ぶ2階レベルのデッキで、ホールのメインエントランスとペデストリアンデッキを連絡します」
住民生活と周辺経済への影響
設計者の決定は単に建物の姿を左右するだけでなく、周辺地域の動線・にぎわい創出、アクセス改善、緑地活用など多面的な影響を持つ。具体的には次の点が住民に関わる課題だ。
- 公共交通・歩行者動線:アミコや図書館、青少年センターなど既存施設との接続方法が変われば、来訪者の導線や混雑箇所が変化する。通学や買い物で同エリアを利用する住民の利便性に直結する。
- 高齢者・障害者のアクセス:提案の多くがバリアフリーを強調しており、車いす利用者や高齢者の安全なアクセスが改善される可能性がある。
- まちのにぎわい創出:公演終了後に観客を繁華街に誘導する設計が採用されれば、夜間の来訪者増が期待でき、飲食・小売業への波及効果が見込まれる。
- 公園・緑地としての活用:屋上緑化や公園と連続するデッキが導入されれば、地域住民の憩いの場としての用途が広がる。
ただし、実際の利用動向や混雑緩和の効果は設計の詳細、来場者数、イベント稼働率などで変わるため、今後の具体的な計画提示とシミュレーションが重要になる。
今後の手続きと住民向けの確認点
設計事業者の優先交渉権者が決まった後は、設計図面の作成、環境や防災に関する詳細検討、施工入札の準備が進む。県は当初計画との整合性や財政面の見直しも進めるものと見られるが、現時点での具体的な工期や費用額は発表されていない。
住民が注目すべき点は以下である。
- 設計図の公開時期と住民説明会の予定
- 交通への影響予測(イベント開催時の混雑対策)
- 公園の利用制限や緑地計画の詳細
- 工事開始時期と周辺への騒音・通行規制の情報
県は説明会やパブリックコメントの実施を通じて住民意見を反映させる機会を設ける可能性があるため、今後の情報発信に注目してほしい。
| 事業者(順不同) | 設計の主な特徴 |
|---|---|
| 松田平田設計 | 2階レベルのデッキで既存施設と接続、歩行者導線を重視 |
| 香山建築研究所 | 劇場を上部に配置し、地上と連続する広場を創出 |
| 佐藤総合計画 | 徳島の演舞構成を反映し、街と一体化する設計 |
| 石本建築事務所 | 屋上を既存公園と同種の樹種で緑化し市民の憩い場とする案 |
| 久米設計 | 水辺との連続性を強調し眺望を生かしたテラス配置 |
今回の設計者選定は、藍場浜公園の将来像と徳島市中心部のにぎわい創出に直結する。一方で、工事期間中の生活影響や財政負担の側面も無視できない。県や市は今後、公表する設計図や環境影響評価などの説明を通じて、地域住民の理解を得ることが不可欠だ。
(遠藤 望・徳島県担当記者)