既存コードから仕様を“逆生成”する仕組み
エクサウィザーズのグループ会社であるExa Frontier Edgeは、ソースコードや関連資料をAIで解析し、実際の実装に合致した仕様書を自動生成・継続更新する「Living Spec(リビングスペック)生成サービス」の提供を開始した。サービスは、仕様書が失われている、あるいは現状の実装と齟齬が生じている既存の業務システムや基幹系システムを主な対象としている。
同サービスの柱は、コードを出発点に仕様を“逆生成”する工程である。ソースコードの構造や処理ロジックをAIが機械的に解析してドラフトを作成し、コードだけでは判別が難しい箇所は関連情報で補完する。補完の優先順位としては既存文書、実機設定、ログ、問い合わせ・作業履歴を順に参照し、最終的なヒアリングは最小限にとどめるとしている。
提供側が示す狙いは明確で、これまで担当者の記憶や暗黙知に依存していた仕様理解を形式知化することにある。形式化された仕様書は、保守・脆弱性対応・監査などの業務で即戦力となるだけでなく、後続のAI活用やシステムモダナイズの基盤にもなる。
- 解析対象となる言語:JavaScript、TypeScript、Python、Java、VB.NET、COBOL(その他言語は順次拡大予定)
- 対象環境:オンプレミス、クラウドいずれも対応。ソースコードがあれば稼働環境を問わず解析可能
- データ取り扱い:学習利用を停止する設定(オプトアウト)を適用したLLMを利用。国内リージョン指定やユーザー既存のLLM利用にも対応
期待される効果と具体的活用領域
同社が想定する主な効果は次の通りだ。
- 属人化の解消:長年の運用で担当者のみが把握している仕様や暗黙知を、AIが読み取り書面化することで共有可能にする。
- 保守・セキュリティ対応の高度化:脆弱性対応やパッチ適用の前段階として、影響範囲や前提条件を明確にする資料作りを自動化・継続支援する。
- AI活用とモダナイズの基盤化:AIが読み取りやすいフォーマットの仕様書を作ることで、要件定義や発注見積もり、将来的な基盤移行のための土台を整える。
これらは、保守コストの圧縮や人手不足下での運用継続に直結するメリットとなる。特に、老朽化した基幹システムや現場にしか知識が残らない組織では、情報の可視化が意思決定や刷新投資の判断を後押しする。
技術的な範囲と運用上の配慮
サービスは現段階で主要なモダン言語に加え、COBOLの解析にも対応する点を明記している。レガシー系の言語対応は保守現場からの要望が強く、COBOL対応は基幹系業務での採用を意識したものと読める。一方で、解析精度を高めるためにコード以外の周辺情報を順序立てて確認するワークフローを組んでおり、完全自動で完結するだけではない運用設計になっている。
データ取り扱いに関しては、AIモデルへの学習データとして預かり資産が利用されない旨の説明をしており、オプトアウト設定を適用したLLMを標準で用いるなど、運用面での配慮が示されている。顧客側で既に契約しているLLMを解析に利用するオプションも提供することで、データ管理の要件に応じた柔軟な導入が可能だと説明されている。
| 対応言語(一例) | 対象環境 |
|---|---|
| JavaScript、TypeScript、Python、Java、VB.NET、COBOL | オンプレミス/クラウド(ソースがあれば稼働環境不問) |
導入過程と今後の展望
発表では、既に複数の企業と実案件での取り組みを始めていることが明示されている。これらの実運用から得られる知見を踏まえ、対応言語の拡大や解析精度の向上、そして仕様書を起点とした上流工程(見積もり・要件定義)や保守自動化の機能充実へと段階的に展開していく方針だ。
特に注目されるのは、生成した仕様書をAIがそのまま読み取って後続作業に利用できる形式で出力する点だ。この点は、AI導入を進める組織にとって「資産のAI化」を加速する直接的な利点といえる。保守に追われていたリソースを、将来の刷新へ振り向けるための判断材料が整うことが期待される。
導入検討時のチェックポイントと問い合わせ先
導入を検討する組織が押さえておくべきポイントは次の通りだ。
- 現行システムのソースコードが十分に取得できるかどうか
- 社内のセキュリティ・規約で外部サービスへコードを預けることが許容されるか
- 解析後の仕様書をどの業務領域(保守、監査、刷新)に優先的に活用するか
より詳細なサービス情報や導入相談は、Exa Frontier Edgeの案内ページで受け付けているとされる。
問い合わせ先(案内ページ):https://exawizards.com/efe/
AI技術を活用して“現状の動作を説明できるドキュメント”を作るというアプローチは、企業のシステム運用・開発の現場における作業負担とリスクを軽減する可能性を持つ。今後、実運用からのフィードバックを受けてどの程度の精度と自動化が実現されるかが、導入のカギとなるだろう。