山口市中市町の山口井筒屋で14日、戦時中に三坂神社へ奉納された肖像写真の展示会が始まった。15日の終戦記念日を控え、地域に残る戦争の記憶と遺族への返還を目的に開催されている。会場には旧山口市内の住所が記された1232枚の写真をはじめ、これまでの返還活動に関する資料や手紙が並んだ。
奉納写真の規模と返還の経緯
三坂神社に奉納された肖像写真は約2万5000枚に上る。戦後、先代の宮司が本人や家族に対して約1万1000枚を返還したが、残る約1万4000枚は神社で保管されてきた。現在は江端希之宮司(46)と三坂神社歴史館の石丸祐司館長(84)を中心に、保管分の返還を進めている。
| 項目 | 枚数 |
|---|---|
| 奉納された写真(総数) | 約2万5000枚 |
| 過去に返還済み | 約1万1000枚 |
| 現在保管中(返還対象) | 約1万4000枚 |
展示内容と会場
会場では、旧山口市内の住所が記された1232枚の肖像写真が展示され、25人分の写真を集めたA2判パネル49点や、返還活動に寄せられた礼状なども並んでいる。展示は14日から16日まで山口井筒屋で行われ、期間中は家族や親族からの問い合わせにも対応するという。
地域の教育現場が担う役割
返還作業には防府市の県立防府商工高が2021年から協力している。商業科の総合実践学習の一環として、生徒が名簿作成・修正や写真のデジタル化、展示用のポスター作りなどの作業を担当してきた。今年も生徒8人が参加し、パネル編集に加わった中村昊雅さん(18)は会場での感想を述べた。
「若者が戦争に行かざるを得ない時代だったのだろうと思うと、戦争は怖い、なくなってほしいと思った」
学校の参画は、単なる作業支援にとどまらず、地域の戦争史を若い世代に伝える教育的意義を持つ。生徒らは個人情報や遺族感情に配慮しつつ、写真のデジタル化や名簿整備を通じて記録を整理している。
遺族への影響と今後の見通し
会場には、自分の親族とみられる写真を見つけて調査を依頼する来場者の姿もあった。山口市阿知須から訪れた女性は、大叔父とみられる人物の写真を見つけ、神社に調査を依頼した。女性は戸籍にフィリピンで亡くなった記録があるものの、写真の所在は確認できていなかったと語り、写真が戻れば納骨堂に一緒に納めたいという意向を示した。
今回の展示を通じて、返還活動への問い合わせや照会が増えることが予想される。神社側は引き続き写真の調査・返還に努める方針であり、展示期間中は神社関係者や協力者が来場者の質問に応じている。
住民が知っておくべき点
- 展示期間は14日から16日まで。会場は山口井筒屋。
- 展示写真には旧山口市内の住所が記されたものが含まれ、来場者は家系確認や返還申請の相談が可能。
- 返還活動は神社と三坂神社歴史館、及び防府商工高生徒らの協力で進められている。
戦時中、三坂神社は「弾除け神社」として知られ、日中戦争や太平洋戦争に出征する兵士の家族らが無事を願って写真を奉納した歴史がある。展示と返還の取り組みは、記録の保存と同時に遺族の心の区切りにもつながる。地元の歴史を知る機会として、また遺族が所在確認を行う場として、今回の展示は重要な意味を持っている。
会場では、神社側への照会や写真の所在確認に関する相談窓口が設けられているため、該当する家族や関係者は期間中に足を運ぶとよい。返還作業は今後も継続される見込みで、展示以外の時期でも問い合わせで対応できる場合があるという。
山口の地域社会にとって、戦争の記憶を次世代へどう伝えるかは引き続き課題となる。地元の学校と神社、歴史館が連携する今回の取り組みは、記録保存と教育の双方に資する実践例として注目される。