政策と実装を結ぶ議論の場として開幕
8月14日、ホーチミン市で開催されたテクノロジーフェスティバル「Conviction 2026」は、人工知能(AI)やブロックチェーン、デジタル資産を主要テーマとして開幕した。会場はティスキーホール・サラ・コンベンションセンターであり、政府関係者、専門家、投資家、企業などが参加する約40のセッションが予定されている。
主催者側は、前回の「Conviction 2025」で約5万人が参加した実績を踏まえ、今回は政策・法的枠組みと技術の実践的な応用促進に重心を置いている。国家レベルの意思決定と、企業現場での技術導入をつなげることが今回の狙いだ。
副首相のメッセージ—データとAI、ブロックチェーンの位置付け
開会セッションで講演したベトナム共産党中央委員で副首相のホー・クオック・ズン氏は、世界の発展段階の変化とそれに伴うデータやAIの重要性を指摘した。副首相は、データが「重要な資源」となり、AIが「スマートインフラ」として機能すること、そしてブロックチェーンがデジタル環境での価値の確立や移転、検証の手段を提供する点を強調した。
「ベトナムは時代の流れから外れているわけではありませんが、かといって何が何でも時代の流れを追いかけているわけでもありません。」
副首相はまた、技術導入にあたっては法律や国益を踏まえ、リスク管理を行いつつイノベーションを促進する必要性を訴え、国民・企業・投資家の正当な権利と利益の保護に言及した。
法整備と産業実装の同時推進
会議では、ブロックチェーンやデジタル資産に関する規制枠組み、企業や投資家向けのコンプライアンス要件、税制、資本移動の扱い、情報セキュリティ、知的財産保護、そして管理された試験運用(サンドボックス)について幅広く議論される予定だ。政府側は既に、デジタル技術産業法や人工知能法、そして次のような決定や決議を通じて制度整備を進めていることを示した:
| 法令・決定 | 内容(出典の表記に基づく) |
|---|---|
| 決定第21/2026/QD-TTg号 | 戦略的技術に関するものとして言及 |
| 決議第05/2025/NQ-CP号 | 暗号資産市場の管理された試験運用に関するものとして言及 |
こうした枠組みは、単に技術を許容するためだけでなく、ビジネスが安心して投資・実装できる明確で安全なルールづくりを意図している。
企業側からの視点—技術は経済価値を生むか
ベトナム商工会議所副会頭で持続可能な開発の立場にあるグエン・クアン・ビン氏は、技術革新の速さはベトナムにとって機会であると同時に課題でもあると指摘した。重要なのは技術そのものではなく、企業活動や生産・サプライチェーンに技術が浸透し、生産性向上や製品の品質改善、コスト削減、市場拡大といった具体的な経済成果をもたらすことであるという点だ。
ビン氏の主張は、テクノロジーが「デモンストレーション」や「流行」にとどまらず、実際の価値創出につながることを求めるものである。会議の焦点は、研究・開発とともに現場への実装をどう加速するかにある。
討議テーマと期待される影響
- AIの産業適用:スマートインフラと製造・サービス分野での業務効率化
- ブロックチェーンの実務的活用:認証、トレーサビリティ、データ整合性確保
- デジタル資産の監督と投資家保護:透明性とリスク管理
これらのテーマは、法制度と実証実験を並行して進めることで、短中期的にベトナム国内の産業構造や国際競争力に影響を及ぼす可能性がある。特に輸出主導で成長してきたベトナムにとって、デジタル技術の導入はサプライチェーン管理や付加価値化の面で重要な鍵となる。
日本企業・投資家にとっての示唆
開催地が示すように、ベトナムは政策と市場の両面でテクノロジー導入を加速する意思を明確にしている。これに伴い以下の点が注目される:
- 法制度の整備に伴う事業機会と規制対応の必要性。
- ブロックチェーンやAIを活用したサプライチェーン改善・トレーサビリティ関連の共同事業機会。
- デジタル資産に関する規制枠組みが整う過程で生じる投資スキームの変化。
こうした動きは、日本企業にとっても事業戦略や進出判断に影響を与える可能性が高い。法的枠組みや実証プロジェクトの公表・成果を注視することが求められる。
「Conviction 2026」は、技術の最先端トピックを単に紹介する場ではなく、政府の政策判断と企業による実装を結びつけるための重要なプラットフォームと位置づけられている。今後の議論と政策の展開が、ベトナムの生産性や国際的地位にどのように反映されるかが注視される。