富山空港の新たな愛称に「高山」の名称が盛り込まれた発表から2日後の7月10日、岐阜県の江崎禎英知事が富山県を訪れ、両県知事による懇談会に出席した。今回の名称変更は観光振興を狙ったブランド戦略の一環であり、地域間の連携や空港と観光地を結ぶ交通整備が改めて焦点になった。
両知事の見解と現地での交流
懇談会の前に2知事は富山市岩瀬地区の古い町並みを歩き、すし職人の養成学校を訪問して「すし」を味わった。富山県の新田知事は愛称について「新しい愛称は、富山高山すしエアポート」と紹介。江崎知事は名称に対して「よろしくお願いします」と応じ、愛称の効果に期待を示した。
「新しい愛称は、富山高山すしエアポート。富山高山すし空港とさせていただきます」 — 富山県 新田知事
期待する誘客効果と課題
両県の会談では、新愛称を通じたインバウンドや国内観光客の取り込みが主要議題になった。新田知事は、高山の名前を冠することで富山空港が飛騨・高山地域への「空の玄関口」であることを世界にPRし、空港利用者の増加と岐阜県への誘客促進を図る狙いを説明した。これに対し江崎知事は、旅行者にとって「ここが富山、ここが岐阜という区別は関係なく、行く先に何があるかが重要」と述べ、観光資源としての期待を示した。
ただし現状には現実的な課題が存在する。報道では、高山には去年1年間で約100万人近い外国人観光客が訪れた一方で、訪日客の富山に対する認知度は低いことが指摘されている。ある調査では、高山訪問前にどこに宿泊していたかを尋ねたところ「富山」と答えた人はわずか数人にとどまり、高山の後に富山に宿泊する予定があると答えた人も少数だったという。
交通整備の必要性 — 二次交通と高速道4車線化
江崎知事は、今回の愛称変更が「世界に大きなインパクトを与える」と評価する一方、空港と高山を直接結ぶ二次交通が現在のところ存在しない点を問題視している。懇談会では、空港利用の増加を実際の旅行動線に結び付けるため、空港と観光地を結ぶアクセス整備の推進に両県で取り組む意欲が確認された。
また、両県は東海北陸自動車道の全線4車線化の早期実現に向けて国などに要望していく方針も確認した。輸送力強化は観光客や地域住民の移動利便性を高めると同時に、災害時の対応能力向上や物流効率化にもつながる点が強調された。
住民・事業者への影響と留意点
名称変更は地域ブランドの拡張を意図するが、実効性は輸送インフラと受け入れ体制に左右される。住民や観光関連事業者にとって具体的な影響としては次の点が挙げられる。
- 空港利用者の増加が見込めれば宿泊・飲食業の需要が高まる可能性がある。
- 二次交通が整備されない場合、観光客の移動が不便なままになり、期待される波及効果が限定的になる。
- 県境を跨いだ観光ルート構築や共同プロモーションの実施が不可欠で、費用負担や運営主体の調整が課題となる。
今後の見通しと実務ポイント
今回の愛称変更が単なる話題に終わらないためには、具体的な施策が必要だ。懇談で示された方向性に基づき、以下の点が実務的な焦点になる。
| 課題 | 検討・対応項目 |
|---|---|
| 二次交通の欠如 | 空港〜高山間の直行バスやシャトル、季節運行の導入検討、運行主体と運賃設定の協議 |
| 観光ルートの認知不足 | 国際向けプロモーションの強化、共同パンフレットやデジタル案内の整備 |
| 道路輸送の容量 | 東海北陸道の4車線化要望の具体化、国への働きかけと事業スケジュールの確認 |
地元自治体や観光関係者にとっては、愛称がもたらす注目を取りこぼさず、実際の集客につなげるための準備が急務だ。インバウンドの増加を見据えるなら、語学対応や観光情報の多言語化、乗換案内の分かりやすさ向上といった受け入れ体制の整備が求められる。
今回の懇談会は、名目上の「名称変更」から一歩進んで、実際のアクセス整備や県間連携の具体策を詰める端緒になり得る。地域の観光振興につながるかどうかは、今後のインフラ投資や運営の中身にかかっている。
(取材・文:山崎 大輔/プレスリリースジェーピー岐阜県担当)