文化財を宿泊施設に改修、17日開業
倉吉市河原町に所在する県指定保護文化財の小川家住宅と国登録有形文化財の旧高多家住宅を改修した分散型ホテル「風の 倉吉」が17日に開業する。改修は、地域のまちづくり会社である第三セクター「赤瓦」と、歴史的建造物を宿泊などに活用する事業を手がける「風のヘリテージ」(京都市)の共同事業として進められた。観光庁や県、市の補助金を活用して2024年から改修が行われてきた。
市は本事業を、従来の「通過型観光」からの転換につながる取り組みと位置づけ、期待を示している。開業を前に行われた式典で、広田一恭倉吉市長は文化財を活用した宿泊施設の新たな価値に触れ、滞在型観光の促進に期待を表明した。
客室構成と宿泊料金、提供する体験
ホテルの客室は小川家が6室、旧高多家が5室の計11室。うち7室は蔵を改修して客室とした。運営は風のヘリテージが担い、年間利用目標を4,000人に設定している。
| 施設 | 客室数 | 最安料金(1泊2食付、1人) |
|---|---|---|
| 小川家住宅 | 6室 | 4万8620円から |
| 旧高多家住宅 | 5室 | (上記に含む) |
最も広い小川家の3号室はスイート(164平方メートル)で、1泊2食付き1人7万7660円(2人利用時)から。室内はテレビや時計を置かず、民芸木工や陶芸作品、掛け軸などで演出している。小川家にはラウンジが設けられ、アルコールを含む飲み物を宿泊客に提供する。旧高多家には40席のダイニングが併設され、宿泊客は約100メートル離れた旧高多家へ移動して地元産食材を用いた食事を楽しめる。夕食は宿泊客以外も利用可能だ。
文化財保護と利活用の両立
改修にあたっては、文化財としての意匠や歴史的価値を損なわない配慮が求められ、県文化財課と協議を重ねながら工事を進めたという。工事に際しては「なるべくくぎを打たない」など、伝統的な工法や材料に配慮した改修が行われ、室内の名残や細部の意匠はできるだけ保存されている。
風のヘリテージの他力野淳社長は「倉吉の歴史や文化のファンになって帰ってもらうことが重要。滞在時間を延ばして消費額を上げ、滞在することで歴史や文化の本質が見えてくる」と述べている。
地域への波及効果とプログラム
運営側は単なる宿泊にとどまらず、まちや周辺の自然・歴史・文化を体感してもらうことを重視している。用意された体験プログラムには、旧国鉄倉吉線廃線跡の竹林での瞑想や三徳山(三朝町)参拝登山などが含まれる。こうしたプログラムは宿泊者の滞在時間を延ばし、周辺の飲食・土産店などへの消費波及を狙う。
市側は、この取り組みが滞在型観光の定着につながれば、地域の観光消費の底上げと雇用・サービス提供の拡大に寄与すると期待している。一方で、文化財を活用した宿泊施設は初めての試みであるため、保存と利活用のバランス、地元住民との連携、交通や受け入れ態勢の整備といった課題も残る。
- 開業日:17日
- 運営:風のヘリテージ(施設の所有は赤瓦・貸借関係あり)
- 年間利用目標:4,000人
地域の観光関係者や事業者は、今回の事業が観光客の滞在延長を促し、倉吉市内および周辺地域の回遊性向上に結び付くかを注視している。特に宿泊料金帯が高価格帯に設定されていることから、富裕層をはじめとする新たな顧客層の呼び込みと、受け入れ環境の整備が鍵となる。
開業後は、宿泊者の利用動向や地域経済への波及効果を定量的に把握し、文化財保存と地域振興を両立させる運営手法の確立が求められる。倉吉の歴史資源を活用したこの試みが、鳥取県内の他地域にとってもモデルケースとなる可能性がある。