駅前に新たな拠点、にぎわいの起点へ
鳥取市はJR鳥取駅北口近くの目抜き通り沿いに、交流スペースやレンタルオフィスを備えたビジネス交流拠点「鳥取市まちなかビジネス共創スクエア『カトカミ』」を整備し、7月7日に開所した。市が約1億8千万円を投じて遊休不動産を改修したもので、中心市街地への人の流れや新規事業の創出を狙う。施設は1階から3階までを利用可能とし、コワーキングやイベントスペース、個室オフィスなど多様な働き方に対応する構成になっている。
施設の構成と入居状況
改修されたビルの各階は用途ごとに機能を分けている。詳細は市の説明によると以下の通りだ。
- 1階:コワーキングスペース(相席形式)および最大75席のイベントスペース。常駐スタッフが相談対応や運営を行う。
- 2階:ウェブ会議ブース、2人用の半個室、最大16人が利用可能なグループワークエリア。
- 3階:4~8人用の完全個室が8室設置され、一定期間の入居に対応。
現時点で2階・3階には県内外の企業11社が入居済みで、さらに1社の入居が予定されている。市は1階の交流機能を入口として、関係者同士の接点を増やし、順次ビジネスが育つ流れを想定している。
地元ベンチャーの移転・期待
施設に入居した企業の一つに、鳥取大学発のベンチャー「ONESTRUCTION(ワンストラクション)」がある。建設業のデジタル化支援を手がける同社は、在学中に起業したCEOの西岡大穂氏が率い、鳥取大周辺から今回のスクエアへ移転した。西岡氏は入居期間を「1~2年ほど」とし、施設内での交流を通じて事業と雇用を拡大し、地元企業との連携を深めたいと述べている。
「さまざまなレベルで交流できるのは魅力。1~2年ほど入居する予定で、その間に事業と雇用を拡大させ、他の地元企業との結びつきもつくれれば」と西岡大穂CEO。
市の狙いと期待される効果
市は今回の整備を、中心市街地の回遊性向上や新規事業の創出、若者の定着促進につなげたい考えだ。開所式では深沢義彦市長が出席し、次のように期待を示した。
「ここから生まれた人の流れや活力が中心市街地はもとより市全体に広がり、地域経済の活性化につながることを期待している」
市が遊休不動産を活用して改修を進めた点は、公共支出を絞りつつ既存の都市構造を活かす手法として注目される。駅周辺という立地は通勤・通学者や来訪者にとって見えやすく、短期的にはイベント集客や交流機会の増加、長期的にはテナントの定着や雇用創出が見込まれる。
住民・事業者への具体的な影響
今回の施設整備が地域にもたらす影響を整理すると、主に次の点が想定される。
- 中心市街地の人通り増加:駅前でのイベント開催や共用スペースの利用で通行量が増え、周辺商店への波及効果が期待される。
- 起業支援と雇用創出:常駐スタッフによる起業支援や入居企業の成長に伴う地元雇用の増加。
- 地域連携の強化:大学発スタートアップと地元企業の接点が増え、産学官連携の実務的な展開が進む可能性。
一方で課題も明確だ。スペースの利用が一過性にとどまらないよう、定期的なプログラムの企画、入居企業のニーズに応じた支援体制の継続、周辺まちづくりとの整合性を図る運営が必要となる。特に地方都市では、初期の賑わいを継続した経済効果に転換するための“受け皿”整備が求められる。
今後の見通しと利用案内
市はまず施設を軌道に乗せるため、オープン時点での入居促進やイベント開催を重視するとみられる。地元企業や起業家にとっては、短期間の試行入居や交流を通じて取引先や人材を探す機会となる。利用を検討する市民・事業者向けには常駐スタッフによる相談窓口が設けられており、入居希望やイベント利用の申し込みなどは市の案内に沿って行われる。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 投資額 | 約1億8千万円(改修費) |
| 入居企業数 | 11社(2・3階。さらに1社予定) |
| 主な施設 | コワーキング(相席)、イベントスペース(最大75席)、グループワーク(最大16名)、個室(4~8名×8室) |
今後、鳥取市は同様の遊休資産を活用した再生事業を継続することで、駅周辺の回遊性や中心市街地の活力を高める方針と見られる。入居企業や市民双方の利用状況が定着すれば、周辺商店街や若年層の定着促進にも寄与する可能性がある。地元の事業者や起業を志す若者にとって、『カトカミ』は初期の交流・実務の場として注目される存在となるだろう。
(取材・文=長谷川 豊)