失われた民具を地域で取り戻す試み
鳥取市福部町岩戸でかつて日常的に使われていた手ほうき「バリンボウキ」を復活させる動きが本格化している。企画・主導するのは、同地でアウトドア複合施設「IWADO BASE(イワドベース)」を運営する上田博隆さん(57)。上田さんは東京の保険会社に長年勤務し、2018年に鳥取を訪れたのがきっかけで地域に魅力を感じ、2024年に移住した人物だ。今回の取り組みは、素材の栽培から製作、販売、地域への波及効果までを見据えた計画となっている。
バリンボウキとは
バリンボウキは、鳥取砂丘に自生するイネ科の植物・ケカモノハシの根を束ねて作る手ほうきである。根を使うため独特の手触りがあり、名前は根が「バリバリ」した感触に由来するとの説が紹介されている。かつては岩戸地区の漁家などで内職として冬場に作られ、海風で家に入る細かな砂を掃くのに適した道具として重宝されたが、1963年の鳥取砂丘の国立公園指定以降は採取制限が強まり、加えて掃除機の普及で需要が減少した。結果として、50〜60年前に地域での技術継承が途絶えたとされる。
復活の具体的な計画と進捗
上田さんは近隣住民や鳥取砂丘ビジターセンターの協力を得て、バリンボウキの現物を確認し、作り方を学んだ。取り組みの柱は次の通りだ。
- 素材の確保:もともと採取されていたケカモノハシは、現在は自由採取が難しいため、近くの元らっきょう畑だった耕作放棄地に上田さん自らが栽培を予定している。
- 製作:編む作業は地域の就労支援事業所に委託する計画で、地元での雇用機会づくりを図る。
- 資金調達:クラウドファンディング(CF)を活用しており、募集は今月2日からスタート。目標額は100万円、募集期間は8月14日まで。CFサイトは「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」を利用している。
- 販売・波及:完成品はCFの返礼品に加え、「山陰海岸ジオパーク認証商品」を目指して販路拡大を図る方針。
地域への影響と期待される効果
この取り組みは単に古道具を復元するだけでなく、地域にもたらす効果が複合的だ。
- 文化・記憶の継承:かつて地域で行われていた生活文化を可視化し、次世代に伝える役割を果たす。
- 観光資源化の可能性:ジオパーク認証を目指すことで、鳥取砂丘周辺を訪れる観光客への新たな情報発信や土産品化が期待される。
- 就労支援・地域雇用:製作工程を地元の就労支援事業所に委託することにより、安定した作業提供や技能継承につながる。
住民にとっての具体的な利点と注意点
住民がこの動きに関わる場合や商品を利用する際のポイントは次の通りだ。
- 地域文化への理解が深まる:ワークショップや展示を通じて、砂丘という地形と暮らしが結び付く歴史的背景を学べる。
- 購入や支援で地域に還元できる:CFでの支援や今後の販売購入は地域内経済の循環に寄与する。
- 植物採取の規制に留意:ケカモノハシの自生地からの無秩序な採取は国立公園の保全上問題となるため、栽培による素材確保を重視している点は重要である。
上田さんは「バリンボウキは砂丘のある岩戸ならではの文化。単なる古い掃除道具ではなく、物を生かす先人の知恵を伝えたい」と話している。
今後の見通しと住民ができること
プロジェクトは現在クラウドファンディングで資金を募っており、目標の100万円が事業推進の一助となる。関心のある住民や団体は、CFでの支援や地元イベントでのワークショップ参加、完成品の購入などで支援できる。行政や観光関係者にとっては、ジオパークや国立公園の保全方針と連携しながら、文化的価値を損なわない形での活用策を検討することが求められる。
| 項目 | 現状・計画 |
|---|---|
| 素材 | ケカモノハシ(栽培予定) |
| 製作 | 就労支援事業所へ委託予定 |
| 資金 | CAMPFIREでCF実施中(目標100万円、8月14日まで) |
| 販売 | CF返礼品、ジオパーク認証を目指す |
上田さんの取り組みは、地域に残る生活技術や素材利用の知恵を現代に繋げる試みだ。伝統の再生を通じて地域の魅力を再確認し、観光や就労の面でも実利を伴うことが期待される。関心のある方は、CFのページやイワドベースの活動情報を注視するとともに、今後予定されるワークショップ等の告知を確認してほしい。
(長谷川 豊・プレスリリースジェーピー鳥取支局)