世界遺産での参加型保存事業、今年秋に実施へ
和歌山県田辺市本宮町にある世界遺産・熊野本宮大社は、参拝者に参加してもらい本殿周辺に敷かれている「白石」を洗浄・磨く行事を今秋に実施する予定である。これは、吉野熊野国立公園指定90周年を記念した初の試みで、神社側は自然と人との関わりを見直す機会にしたいとしている。
白石は主に直径15~25センチ程度の石が敷き詰められ、本殿周辺の景観を形成している。これまでに2012年の「正遷座120年大祭」に合わせて約5,000個の新しい白石を導入するなどの整備が行われてきたが、風雨や経年により全体が黒ずみ、苔の付着も見られる状態だという。こうした状況を受け、神社は参拝者の手による清掃・磨きの機会を設けることにした。
実施要領と参加条件
行事は9月5日から10月12日までの期間に、計10回実施される。普段は立ち入ることができない御垣内(みかきうち)から白石を運び出し、仮設の洗い場で汚れを落とした後、再び元の場所へ納める手順で行われる。参加には事前の申し込みと初穂料が必要で、神社は参加を呼びかけている。問い合わせ・申込先は熊野本宮大社(電話:0735-42-0009)。
予行の様子と参加者の反応
直近に行われた予行練習には、神社職員、氏子総代会役員、熊野本宮観光協会、県世界遺産センターなど関係者約40人が参加した。仮設の洗い場を設け、たわしで石を磨く作業が行われた。予行に参加した地元の語り部は、作業の過程で白石が目に見えてきれいになることに手ごたえを感じている。
「白石を磨く体験は、自然への感謝と自らの心を整える祈りの時間になると思う。一人でもたくさんの方に関わっていただけるよう取り組んでいきたい」
神職の説明によれば、参加者からは「貴重な体験だった」「心が清らかになった」といった感想が寄せられており、観光客の飛び入り参加希望もあったという。
地域への影響と意義
今回の事業は文化財の維持管理と、地域観光における体験型プログラムの両面で意義がある。白石は景観の一部であると同時に、社域の清浄さを示す役割も担うため、状態を保つことは保存面でも重要だ。また、参拝者が手を動かすことで神社と訪問者の関係性が深まり、地域理解や再訪意欲の向上につながる可能性がある。
- 文化財の保存:年を経た白石の汚れや苔落としによる景観回復
- 観光振興:参加型の体験プログラムとして来訪者の関心を喚起
- 地域連携:観光協会や世界遺産センターとの協働による体制づくり
注意点と参加を検討する住民・来訪者への実務情報
申し込み方法は神社への電話連絡が案内されている。参加には初穂料が必要で、金額は一人当たり3,000円からとされる。作業は屋外での肉体労働を伴うため、動きやすい服装や濡れてもよい靴での参加が推奨される。作業用具や洗浄のための設備は神社側が用意するが、詳細な持参品や当日の集合場所・時間などは申込時に確認する必要がある。
スケジュールは10回に分けて行われるため、都合が付けば複数回参加することも可能だ。参拝と合わせて参加する場合は、混雑が予想される日程を避けるなど事前調整が望ましい。体力に不安のある高齢者や小さな子ども連れの場合は、申し込み時に作業内容を確認し、無理のない範囲での参加を検討してほしい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施期間 | 2026年9月5日〜10月12日(計10回) |
| 参加費 | 初穂料:3,000円から |
| 申込先 | 熊野本宮大社(電話:0735-42-0009) |
| 予行参加者 | 約40人(神社職員、氏子代表、観光協会等) |
地域関係者は、今回の試みが今後の定期的な保存活動や観光資源として定着するかどうかを注視している。神社側は、祈りや清めの行為としての側面を重視しつつ、文化財保護の実効性や参加者の安全確保に努める考えだ。
熊野本宮大社が掲げる「白石を磨くことが、自然を守り、心を磨く一歩になれば」という趣旨は、地域の文化資源を活用した市民参加型の保存活動のモデルとなる可能性を秘めている。参加を考える市民や観光客は、事前の問い合わせと十分な準備を行ったうえで申し込むとよいだろう。
(和歌山県担当記者 岡田 美穂)