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下関でクマ出没が増加 里山管理の空白が招く影響と対策

下関市内でツキノワグマの目撃が相次ぎ、2026年の出没記録は既に43件に達した。保護対象である一方、耕作放棄地の拡大や里山管理の低下が人里への出没を招いていると指摘される。地域への影響と具体的な対策を整理する。

下関でクマ出没が増加 里山管理の空白が招く影響と対策
©イラスト AI生成 :坂本 大樹/プレスリリースジェーピー

下関市でクマ出没が多発 住民と農林業に直結する課題

下関市は7月16日、ツキノワグマの目撃情報について改めて注意喚起を出した。市の公表によれば、令和8年(2026年)に入ってから市内で確認された出没記録は43件に上り、豊北町粟野、豊北町神田、菊川町など旧豊浦・豊北地域を中心に目撃が続いている。市民の生活圏に近い場所での報告が増えていることは、安全対策と地域の暮らし方を問う事態である。

中国山地に生息するツキノワグマは、環境省のレッドリストで「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定され、1994年以降は国の告示で狩猟が禁止されている。つまり、出没が確認されたからといって安易に駆除で対処できない法制度上の制約があることを市民は理解しておく必要がある。

出没増の背景と里山管理の重要性

専門の合同調査によれば、山口・広島・島根の西中国山地個体群の推定生息数は690〜1290頭(中央値950頭)とされる。個体数自体が単純に急増しているのではなく、クマが移動できる「空間」が拡大していることが分布の広がりにつながっているとの指摘がある。

その背景の一つに、人口減少に伴う耕作放棄地の増加や農林業従事者の減少がある。かつては人の手が入ることで保たれていた里山の境界線があいまいになり、クマが人里に近づきやすくなっている。里山は単なる自然ではなく、人の営みが生態系のバランスを保つ「文化的景観」であり、その維持が鳥獣被害の根本的対策につながる。

下関市の取り組みと課題

下関市は鳥獣被害防止対策協議会を設置し、農業振興課を事務局に猟友会、地域自治会、農事組合法人、山口県農林事務所らが連携する体制を整えている。また、豊北町朝生地区で実施している「山口型放牧」は、耕作放棄地に和牛を放牧して草地を維持し、集落と山林の間に見通しの良い緩衝帯をつくる試みとして評価され、令和6年度の農林水産大臣賞を受賞している。これらは点として有効な事例だが、面として里山全体を管理する仕組みには至っていないのが現状だ。

制度は整えても、それを支える人材・担い手の問題が深刻だ。猟友会の高齢化や会員減少、農山村の担い手不足は下関市でも例外ではない。現在の連携体制が将来にわたって機能し続けられるかは不透明であり、制度運用上の継続性をどう確保するかが重要な課題である。

再生可能エネルギー開発との関係での懸念

豊北町を含む市北部の山間部では、風力発電や太陽光発電の開発が進む地域もある。大型の造成工事は地形や植生を変え、動物の生息環境や移動ルートに影響を与える可能性があるため、環境影響評価の段階で野生動物への配慮が十分に検討されているかを確認する必要がある。ただし、クマの行動域変化と再エネ開発の直接の因果関係については、現時点で断定できるデータは示されていない。

「人が入らなくなった里山の空白が、クマと人の境界を曖昧にしている」——この指摘は、被害対策を超えた地域の暮らしと産業の維持を求める問題提起でもある。

住民が取るべき具体的な注意と実務的対応

市民向けには、下記の点が実務的に役立つ情報である。

  • 市の公式の目撃マップや注意喚起情報を随時確認すること。下関市が公開している目撃マップは最新の出没地点を示すため、外出や作業の際の参考になる(市の案内を参照)。
  • 夜間の山林付近や雑木林の近くでの単独行動は避け、農作業時は音を出すなど人の存在を意識させる工夫をする。特に幼児や高齢者のみでの林地周辺の行動は慎重に検討すること。
  • 飼料や生ゴミの管理を徹底し、クマを誘引しない環境整備を行う。ベランダや庭に食べ物を放置しない、家庭菜園の収穫物を外部に放置しない等の基本的な対策が有効である。

また、農地や山林の管理・再生を目的とした地域の取り組みや制度活用を進めることが、長期的には最も有効な被害予防につながる。放牧などの里山管理手法や、若手の担い手育成・確保、地域ぐるみの作業日や共同管理スキームの構築といった具体案が求められる。

項目現状・要点
出没件数(2026年)43件(市公表)
主な発生地域豊北町粟野、豊北町神田、菊川町など
保護状況西中国山地個体群は保護対象(狩猟禁止)

行政・議会での論点と今後の方向性

市議会や関係機関の議論では、鳥獣対策を単独の施策として扱うのではなく、農業振興、林業政策、廃校活用や地域コミュニティの再生と一体で議論する枠組みづくりが必要だ。具体的には、以下のような観点が議題となるべきである。

  • 里山管理の担い手確保に向けた支援制度や若手参入の促進策
  • 再エネ開発に伴う環境影響評価での野生動物配慮の徹底
  • 農地・草地の管理を通じた緩衝帯の確保とそのための補助制度

下関市の取り組み事例として山口型放牧があり、局所的には効果が確認されている。しかし、これをどう面として広げ、持続可能な仕組みに昇華させるかが鍵となる。

住民は、市が発信する注意喚起や目撃情報を常に確認するとともに、地域での情報共有と協力を進めることが求められる。被害が発生した場合の連絡先や対応フローについては市の公式情報を参照し、自治会や関係団体とあらかじめ連携体制を整えておくことが重要だ。

下関の里山と人の暮らしを守るためには、単なる短期の応急対応にとどまらない、農林業と生活を再建・維持する長期的な視点と地域の担い手育成が不可欠である。

坂本 大樹
坂本 AI編集 山口県担当記者 オンライン

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