社会

現場の稼働を止めないための技術――パナソニックが描くOTセキュリティの実務像

パナソニックはInterop Tokyo 2026で、工場やビル、再エネ、AIデータセンターなどの現場を対象に、稼働を止めずに被害を最小化するOT向けセキュリティ技術と運用体制を示した。

現場の稼働を止めないための技術――パナソニックが描くOTセキュリティの実務像
©イラスト AI生成 :森田 拓海/プレスリリースジェーピー

現場を止めない運用設計と技術の提示

2026年6月に幕張メッセで開かれた「Interop Tokyo 2026」で、パナソニックグループは工場やビル、再生可能エネルギー施設、AIデータセンターといった社会インフラの現場を対象にした技術とソリューションを展示した。ネットワークとデータ活用の進展は利便性を高める一方で、現場機器のIoT化やクラウド連携が進むことで、サイバー攻撃やシステム障害が現場の稼働停止という形で直ちに被害を与え得るリスクも高まっている。

パナソニックが強調するのは、「現場を止めない」ことを前提としたセキュリティ設計だ。単に攻撃を遮断するだけではなく、現場の運用や設備の特性を踏まえて影響を見極めながら対応する運用が重要だとする立場だ。

長年の実務蓄積を基にしたOT向けアプローチ

同社が打ち出したアプローチは、AV機器や記録メディア向けに培ってきた暗号・認証技術を基礎に、約40年にわたり蓄積したセキュリティ技術をOT領域に応用するものだ。パテントリザルト社の調査では、2024年にサイバーセキュリティ関連技術で2620件の特許の評価で国内首位となった点を背景に、技術的な基盤と現場知見の両輪で課題に対応する姿勢を示している。

「極端に言えば、ウイルス感染が発生したとしても、直ちにオペレーションを止めるのではなく、現場への影響を見極めながら対応を判断するケースもあります。」

この発言は、同社サイバーセキュリティ統括室 セキュリティ技術統括部長の松島秀樹氏のもので、現場の安全と事業継続性を両立させる運用判断の重要性を端的に示している。OT領域では現場ごとに通信プロトコルや制御方式が異なり、IT領域の標準的な対策がそのまま通用しないケースがある。パナソニックは多種多様な機器構成に関する深い知見を強みとしており、それが現場最適化のソリューションにつながっている。

提供するサービスと運用体制

具体的な取り組みの一つとして、工場向けのセキュリティ監視サービス「WisShield™」が紹介された。パナソニックグループはグローバルで200を超える自社工場の監視運用を行い、SOC(Security Operation Center)を複数拠点で運用して24時間365日の体制を整えている。この運用実績を外部顧客にも展開し、現場に適した監視と迅速な初動対応を提供する狙いだ。

  • 24時間365日体制での監視と分析
  • 現場ごとに最適化した検知・対応ガイドラインの適用
  • 攻撃か誤検知かを見極めて稼働を維持する運用判断

展示では、平常時からの通信状況をダッシュボードで可視化し、通常と異なる通信を自動検知する仕組みや、アラート発生時にIPアドレスや通信内容を分析して現場に通知する運用の流れが示された。重要なのは、単なる技術提供にとどまらず、現場の運用プロセスに組み込める形でサービスを提供する点だ。

現場特性を踏まえた対応の必要性

OT領域では、標準的なTCP/IPベースの対策だけでは不十分な場面が多い。工場やビル、再エネ施設には独自の通信プロトコルや制御系が混在しており、攻撃者はそうした固有の仕組みを狙う可能性がある。パナソニックは、モノづくり企業としての機器や設備に関する構造的知見を持っており、これが現場特化型の防御策構築での強みとなっている。

松島氏は、単にサイバー脅威だけを見て対応を決めるのではなく、現場のオペレーションや設備構成、日常の運用方法までを理解して判断することが重要だと指摘する。こうした運用重視の視点は、稼働停止が社会的損失に直結する現場では特に重みを持つ。

項目パナソニックの言及
自社工場の監視実績200を超える工場での運用
特許評価(2024年)サイバーセキュリティ関連技術で2620件を評価、国内首位
監視体制SOCを複数拠点で24時間365日運用

示唆される課題と今後の展望

今回の出展は、OTセキュリティをめぐる現実的な課題と、そこに対する現場起点の実務的なソリューションの必要性を改めて示した。今後は、パナソニックが自社で培ったノウハウやツールを外部顧客へと展開するフェーズに入り、産業インフラ全体の堅牢化に寄与することが期待される。

一方で、現場ごとに異なる運用慣行や機器構成をどう短期間で理解し、標準化できない課題に対してどのようにスケールさせていくかは業界全体の課題でもある。現場の「止めない」運用を確保するためには、技術だけでなく運用訓練、組織間の連携、標準化に向けた取り組みが不可欠だ。

社会インフラを支える「現場」を守るための議論はこれからますます重要になる。展示で提示されたアプローチがどの程度実運用での効果を上げ、他事業者へと広がっていくのか、今後の展開を注視したい。

森田 拓海
森田 AI編集 社会担当記者 オンライン

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