調査が示す転換点
PwCの最新調査は、オペレーションのデジタル化が2025年の段階から2026年にかけて明確なフェーズ移行を迎えたことを指摘している。これまでの「個別技術の導入」による改善から、AI・データ・オペレーティングモデルを一体化して機能させることが成果創出の分岐点になったという見立てだ。
「個別技術の導入」から「業務・組織の再設計」へ
調査は、技術投資が期待どおりの成果につながっていないという認識が依然として高く、統合の複雑さやデータ品質が主要な障壁であると指摘する。一方で、完璧なデータを待つのではなく、意思決定に使えるデータを活用しながら段階的に改善を進めるアプローチが現実的だと論じている。
現場で起きている「意思決定の分断」への対処
PwCは、全社横断の完全統合を目指すよりも、まずは「意思決定の分断」が生じている具体的な業務プロセスを特定して接続することを提言する。例えば、営業で更新された販売見込みが調達に反映されるまでに日数を要する、拠点間の在庫融通が会議待ちになるといった、つなぎ目での遅延や手戻りが典型的な痛点だ。
こうした領域を単位に、データとAIを組み込んだ「部分的な接続」を積み上げる手法が、やがて全体最適へとつながるという。重要なのは順序であり、まず連携と概念の統一を進め、その上で自律化(AIによる意思決定委譲)を段階的に広げるべきだと強調している。
データ統合の現実的な指針
調査では、データ統合に関する誤解を戒める。同じ名称のデータ項目でもシステム間で意味が異なることが多く、AIが複数システムを横断して判断する際に意味の不整合があると誤った判断を招くリスクがある。したがって、物理的な統合を急ぐより先に、判断に用いる主要概念の意味の定義を関係者間で揃えることが求められる。
- 完璧なデータを待たずに、使えるデータで価値を出す
- データ項目の「意味」を揃えた上で段階的に接続する
- アクセス範囲やAI利用ルールなどのガードレールを先に設ける
競争軸の変化と人の役割
PwCは、今後のサプライチェーン競争の軸が「予測」「連携」「自律化」へと移ると指摘している。AIエージェントや自動化が重要な中核技術となる一方で、個別最適のままでは効果が限定的だという認識は依然強い。
また、人材の役割も変化する。単に処理を行う「処理する人」から、部門やプロセスのつなぎ目を設計し、連携とガバナンスを担う「つなぎ目を設計する人」へのシフトが求められるとされる。
| 観点 | 2025年の状況 | 2026年の焦点 |
|---|---|---|
| 戦略 | 個別技術の導入が中心 | 業務・組織の再設計と連携 |
| データ | 統合・品質への投資が課題 | 使えるデータの活用と意味の定義 |
| 最終目標 | 短期的対応 | 自律化に向けた段階的整備 |
企業が取るべき実務的な一歩
調査に基づく実務的な示唆は明快だ。まずは、重要な意思決定の「つなぎ目」を洗い出し、その単位でデータとAIを適用していく。並行して、データの意味定義や利用ルールといったガードレールを整備することで、現場は安心して実験と改善を繰り返すことができる。
こうした手順を踏むことにより、部分的な接続の成功体験が蓄積され、やがて全社的・サプライチェーン横断的な自律化へと段階的に到達できる。PwCの調査は、技術投資と組織設計を切り離さずに進める必要性を改めて提示している。
本稿はPwCのオペレーションに関する調査内容を基に構成した。企業は本調査の示す順序と実務上の注意点を踏まえ、短期の改善と中長期の再設計を両輪で進めることが求められている。