大野市で初確認、前期白亜紀の鳥盤類大腿骨化石
福井県大野市下山の約1億2880万年前(前期白亜紀)とされる地層(手取層群伊月層)から、鳥盤類とみられる大腿骨の化石が確認された。市内の地層から骨格部位の恐竜化石が見つかるのは今回が初めてで、同市和泉郷土資料館が7月18日に開幕する企画展「九頭竜の恐竜たち」で初公開する。
この大腿骨化石は2024年6月に愛知県の化石愛好家が発見し、その後、北九州市立自然史・歴史博物館の大橋智之学芸員と大野市教育委員会の酒井佑輔学芸員による共同研究が進められてきた。研究成果は2025年12月に日本古生物学会で報告された。
化石の特徴と分類上の意味合い
確認された化石は、長さ約5.5センチ、幅約2センチ、厚さ約1.2センチで、全長およそ1メートル程度の恐竜の左大腿骨と考えられている。大橋学芸員は、大腿骨の曲がり具合などから鳥盤類に属することは確かだとする一方で、現時点では詳細な分類群や個体の成長段階(幼体か成体か)は絞り込めていないと説明している。
鳥盤類は恐竜を大別した二つのグループのうちの一方で、植物食の種類(角竜類、堅頭竜類、鳥脚類、鎧竜類、剣竜類など)を含む。手取層群からは勝山市などで複数の鳥盤類が報告されているが、今回の化石はこれらと比べて体のサイズが小さく、大腿骨の形態も異なる点が指摘されていることから、手取層群内でこれまで報告がない種類である可能性も示唆されている。
酒井学芸員は「ようやく骨化石が出たことで、歯化石だけでは導き出せなかった恐竜の姿や大きさに想像を膨らませることができる」と話している。
地域の発掘史と今回の意義
大野市内では1996年に同市和泉地区で恐竜の歯化石が見つかって以来、歯化石が主な成果だった。今回、骨格部位の化石が初めて確認されたことで、地層から復元できる情報の幅が広がる。歯のみの資料では個体の大きさや体型、生活様式を限定的にしか推定できないが、骨格の発見はより具体的な復元や比較研究を可能にする。
また、同じ伊月層からは獣脚類とされる歯化石(長さ約5ミリ、幅約1.5ミリ、厚さ約0.5ミリ)も見つかっており、この歯化石は2011年に発見、2017年に学会で報告されている。今回の新資料と併せて解析することで、当時の生態系や地域内での種の分布の解明につながる可能性がある。
住民・観光への影響と企画展の見どころ
発表を受け、和泉郷土資料館の企画展は地元での関心を集める見込みだ。企画展「九頭竜の恐竜たち」は7月18日から11月8日まで開催され、今回の大腿骨化石と、既報の獣脚類の歯化石が初めて一般公開される。
- 公開期間:7月18日〜11月8日(企画展の会期は報道に基づく)
- 展示場所:和泉郷土資料館「くずりゅう化石ラボ ガ・オーノ」
- 主な展示:鳥盤類の大腿骨化石、獣脚類の歯化石(2011年発見のもの)
地域の観光面では、既に福井県内の恐竜関連施設や展示の人気が高く、本件は大野市への来訪動機の一つとなる可能性がある。特に化石発掘地に近い住民や教育現場にとっては、実物資料を通じた学習・文化資源としての価値が高まる。
今後の研究と留意点
今回の化石は共同研究の成果として学会報告まで至っており、今後は詳しい分類の特定と比較解析が望まれる。ただし、現段階で分かっているのは外形や寸法、所属が鳥盤類に近いという点に限られるため、追加の比較資料や詳しい記載が公開されるまでは分類や生態に関する結論は保留されるべきだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発見地層 | 手取層群 伊月層(大野市下山) |
| 年代 | 前期白亜紀(約1億2880万年前) |
| 化石の部位 | 左大腿骨と推定(長さ約5.5cm) |
| 発見時期 | 2024年6月(発見者:愛知の化石愛好家) |
| 公開 | 和泉郷土資料館企画展(7/18開幕、〜11/8まで) |
今回の発見は、地域の地質・古生物学の理解を前進させるだけでなく、教育資源や観光資源としての価値を高める。地元自治体や博物館は、引き続き適切な保存・調査体制を整える必要がある。来館を検討する際は、展示期間や開館時間、入館方法などを事前に資料館へ確認するとよいだろう。
(執筆:林 佳奈、プレスリリースジェーピー福井県担当記者)