真備で続く舞台、被災からの再出発
倉敷市真備町を拠点に活動する主婦主体の人形劇グループ「たんぽぽぐみ」が、被災からの復興過程で地域に笑顔を届け続けている。結成は1996年で、30年目を迎えた今年も各地の幼稚園や小学校、イベントで上演を続けている。6月29日、市立二万幼稚園で行われた公演は通算806回目に当たる。
同グループのメンバーの多くは2018年7月の西日本豪雨で自宅が浸水した。倉庫が泥に埋まり舞台道具の一部が使えなくなるなど被害は大きかったが、豪雨から約2か月後の9月10日には当初から依頼のあった市内の幼稚園で公演を再開した。被災後の再稼働は632回目の公演となった。
仲間と子どもの声が支えに
公演を見守った園児たちが人形の動きに笑顔を見せると、メンバーは「また頑張れる」と力を取り戻したという。代表の岡野照美さん(75)をはじめ、上大田京子さん(70)、楠木育美さん(64)、高橋直子さん(72)らが舞台を続ける中、仲間同士の励ましや子どもの歓声が復興の原動力になったと話している。
「みんなで、『負けてたまるか』と気持ちを重ねてきた。それは、ずっと変わらない」 — 岡野照美
上大田さんは豪雨で自宅を失い吉備中央町へ移住したが、たんぽぽぐみへの参加が「心の支え」であり生きがいになったと振り返る。楠木さんは全壊した自宅の再建に携わりながらも舞台に立つことで苦労が和らいだと語り、高橋さんは被災した仲間たちの道具類の泥落としを率先して行った。
活動継続が持つ地域的意味
真備地区では堤防決壊などで広範な被害を受け、住宅や公共施設の復旧には長い時間がかかった。地域の文化・余暇活動が途絶えがちな状況下で、地元の市民団体が継続的に活動を続けることは住民の精神的な復興にとって重要だ。
- 子ども向けの上演は地域内の交流機会を生み、保育・教育現場の行事を支えている。
- 高齢のメンバーが中心となる活動は、世代間の接点や地域の連帯感を維持する役割を果たす。
- 道具や舞台の維持管理を通じたボランティア活動が復旧作業に寄与した。
公演回数はこれまでに800回を超え、呼び出しがあれば市内外どこへでも出向く姿勢を続けている。観衆は100人を超えることもあれば数名の時もあるが、依頼がある限り活動を続けるという。「呼んでもらえるなら、どこへでも行く」との言葉に、地域での頼りにされる存在であることがうかがえる。
住民にとっての実用的な情報
被災地での文化活動再開や公演依頼を考える団体・施設にとって、たんぽぽぐみの歩みは参考になる点が多い。道具の保管や災害時の対応、代替の保管場所確保、被災後の迅速な連絡網づくりといった具体的な準備が、公演継続の可否を左右する。
| 項目 | 現状・ポイント |
|---|---|
| 結成年 | 1996年 |
| 活動拠点 | 倉敷市真備町 |
| 通算公演数 | 800回超(6月29日で806回目) |
| 主な対象 | 幼稚園・小学校・地域イベント |
地域の自治体や公民館、学校関係者は、被災リスクを見据えた道具管理の協議や、地域団体との連携を強めることが望まれる。災害時に文化活動が中断しないための支援策として、保管場所の分散化や簡易な修復支援の提供、機材保険の導入などが考えられる。
たんぽぽぐみの活動は被災からの復興の象徴の一つだ。地域の記憶を伝え続ける舞台があることは、被災経験を共有し次世代に引き継ぐうえでも価値がある。今後も地元での上演を通じ、被災地の復興過程やコミュニティの強さを発信していくことが期待される。