薬剤師不足の現状と高校生の職業体験
大分県内で薬剤師不足が続く中、8月21日、佐伯市で地元の高校生12人が病院や調剤薬局を訪れ、薬剤師の業務を体験しました。県によると、2024年12月末時点で県内で働く薬剤師は2370人で、全国順位は38位です。県内に薬学部を有する大学がないことも、地域内での人材確保に影響を及ぼしているとみられています。
体験の内容と生徒の反応
参加した生徒たちは病院の設備見学に加え、調剤業務の一端を模擬的に体験しました。お菓子を錠剤に見立てて小分けにする作業など、調剤に伴う手仕事や薬の取り扱いの細やかさに触れる機会があったといいます。
「薬剤師の仕事を詳しくは知らなかったが、今回の体験を経て調剤するだけでなく患者のそばにいる存在だと感じた」
別の参加者は、今回の経験を進路選択に生かす意向を示し、学業に取り組む決意を語りました。県はこの取り組みを通じて「地域医療の現場を知ってもらい、将来は県内で薬剤師として働いてくれることを期待したい」と述べています。
地域医療への影響と課題
薬剤師は医薬品の調剤に留まらず、服薬指導や薬歴管理、医療チームの一員としての役割も担います。県内で薬剤師が不足すると、以下のような影響が考えられます。
- 医療機関や薬局の業務負担が増加し、診療や薬局サービスの提供に遅延が生じる可能性
- 服薬指導や副作用対応など地域住民への薬学的ケアが手薄になるリスク
- 離島・へき地などでは医薬品管理や供給体制の脆弱化が懸念される
こうした事態を防ぐためには、地元で学び地元で働く人材の育成・定着が重要です。しかし、大分県内に薬学部を持つ大学がない現状は、進学時点で県外へ流出し、そのまま県外就職に至るケースを招きやすい構造的な課題を抱えています。
行政と教育機関、医療現場の取り組みと期待
県は今回のような職業体験を通じて高校生に地域の医療現場を知ってもらう取り組みを行っています。具体的には、病院・調剤薬局の見学、実務体験、現場で働く薬剤師との対話などを通じて、職業理解を深めるプログラムが中心です。こうした施策は短期的に進路意欲を高める効果が期待できますが、人材確保の観点からは次のような継続的な対策も重要です。
- 進学支援(奨学金、学費援助等)を充実させ、薬学部進学後の県内回帰を促す制度設計
- 医療機関・薬局と連携したインターンシップや長期実習の仕組みづくり
- 県内で働くための就職・定着支援(職場環境の改善、勤務条件の見直し)
データで見る現状
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 県内で働く薬剤師数(2024年12月末) | 2370人 |
| 全国順位 | 38位 |
住民にとっての実務的な影響と助言
薬剤師不足は直接的に住民の医療アクセスに影響を及ぼします。具体的には、かかりつけ薬局の営業時間短縮や専門的な薬学相談の減少などがあり得ます。住民ができる対応としては、かかりつけの医療機関や薬局に通院・服薬の記録を残す、処方箋に関する疑問は早めに相談する、地域の医療・福祉の情報に関心を持つことなどが挙げられます。
今回の体験で薬剤師の仕事に関心を持った高校生が進路選択を通じて地域へ戻ってくるかどうかが、今後の人材確保の鍵となります。県と教育機関、医療機関が連携し、進学支援や現場での継続的な学びの機会を整備することが求められます。
(取材・執筆:松田 理恵)