石川県七尾市の中心商店街、一本杉通りにある大正時代創業の老舗醤油店「鳥居醤油店」が、能登半島地震の被災後、約2年7か月ぶりに元の店舗で営業を再開した。登録有形文化財に指定された建物は地震で土壁などに大きな損傷を受けたが、耐震補強や内装の改修、もろみ蔵の再建を経て、12日に営業が再開された。
被災から再開までの経緯
2024年の能登半島地震で、鳥居醤油店のもろみ蔵や店舗の土壁が剥がれるなどの被害が発生した。発災直後、店主らは店の再開を諦めかけたが、被害の状況を確認した結果、もろみ蔵内部は板で囲われており砂埃の混入はなかったことが分かり、仕込みの継続が可能と判断した。
地震発生から約3か月後には作業所を仮店舗に転用して営業を再開。その後、もろみ蔵の改修工事が進み、2024年末に完成。もろみの仕込みも再開され、店舗建物については耐震工事や壁のリフォームを行い、元の建物での営業再開にこぎつけた。
住民と常連の反応
再開当日は常連客が訪れ、新しい店舗と再生した蔵を見て喜びの声が上がった。ある来店客は、味と内容に信頼を寄せており、震災後も変わらぬ品質を期待することを明かした。
鳥居醤油店・鳥居正子さん「もろみ蔵は板で囲ってあったので、砂壁は一切入っていなかった。先祖が醤油屋を続けなさいって言っているのかなと思って」
文化財建物の保存と地域への意味
鳥居醤油店の店舗建物は国の登録有形文化財に登録されている。被災により土壁などに損傷が生じたことから、単なる店舗再開にとどまらず、歴史的建造物としての保存対策が重要となった。今回の耐震工事や改修は、文化財としての価値を守りつつ、今後の災害に備える観点からも意義がある。
地域経済・観光への波及効果
一本杉通りは震災で空き地が増え、商店街全体の来訪者が減少していた。登録文化財である老舗の営業再開は、商店街への人の流れを回復させる契機となる可能性が高い。地元の小売や飲食、観光関係者にとっては集客回復の足がかりとなり得る。
- 震災後の仮店舗営業で製造・販売の継続が図られた
- もろみ蔵の修復は2024年末に完了し、仕込みを再開
- 耐震補強と内装改修により登録文化財としての価値を維持
住民への実用的情報
営業再開に伴い、常連客や観光客は元の店舗で商品の購入が可能になった。製造は手作業が中心で、もろみの管理や仕込みの状況により販売品目や時期が左右される点に留意が必要だ。訪問の際は事前に営業日・営業時間を確認することを勧める(報道時点では12日に再開したことが確認されているが、定休日や営業時間は店舗により異なる)。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 建物指定 | 国登録有形文化財 |
| 被災状況 | 土壁剥落などの損傷 |
| 仮店舗営業開始 | 発災後約3か月 |
| もろみ蔵復旧完了 | 2024年末 |
| 元店舗での再開 | 地震から約2年7か月後(12日) |
今回の再開は、地域の歴史的資産を守りながら生活と産業を再生する一例だ。今後は商店街全体の復興計画や観光振興施策と連携し、老舗の存在を核にした賑わい回復が期待される。住民や来訪者は、復旧した建物・製品を通じて地域の継承を確認できる場が戻ったことを受け止めたい。
(取材・文=木村 淳、石川県担当記者)