長岡平野西縁断層帯が示す新潟市への懸念
熊本で発生した地震を巡り、新潟大学災害・復興科学研究所の卜部厚志教授は、今回の震源となった断層と酷似した構造が新潟県内にも存在すると指摘した。対象は長岡平野西縁断層帯で、新潟市の沖合から小千谷市まで南北に約80キロにわたるものだ。教授は、同断層が角田山付近などで動いた場合、新潟市西蒲区、南区、西区を中心に震度6強や7程度の揺れが発生し、中越地震を上回る甚大な被害を生じるおそれがあると警鐘を鳴らしている。
卜部教授は、熊本地震で実際にずれ動いた日奈久断層帯の事例を踏まえ、「断層が分かれている場合でも連動で大きな規模のずれが起き得る」と述べ、長岡平野西縁断層帯が大きく4つに分かれていることを説明した。断層は山間部と平野部にまたがり地形が異なるため、必ずしも連動しやすいとは限らない一方、連動した場合の影響は甚大になるとの見方を示している。
県の試算も警戒を促す内容だ。新潟市単独の想定被害では、死者は約1,500人にのぼる見込みで、避難者数は約18万人と算出されている。卜部教授は避難所や物資の不足が続けば、冬季には凍死、夏季には熱中症のリスクが高まる可能性を指摘し、具体的な生活課題――食料、衣類、避難場所、水、電気――が長期的に欠乏する状況を強調した。
政府や自治体レベルでも備蓄や対策の強化は進められているが、新潟市では過去に備蓄食料の見直しを行い、毎年約8万食のペースで備蓄を増やしている。市は2028年4月までに42万食の備蓄を目標にしているとのことだ。卜部教授は断層の大きな地震発生周期について「2000年に一度程度という幅がある」と述べつつ、長岡平野西縁断層帯が約1200年前に大きな地震を起こして以来ほとんど動いていない点を踏まえ、「今は他人事ではない」と住民の危機意識向上を求めた。
住民にとって重要なのは、日常的な備えと地域での連携である。卜部教授が繰り返し呼びかける点を整理すると、以下の通りだ。
- 家庭での備蓄(食料、水、常備薬等)の確保
- 避難経路と避難所の事前確認、近隣住民との連携方法の共有
- 高齢者や障害のある人など支援を要する人への個別支援計画作成
これらはいずれも新潟市が公表している取り組みと合致するが、試算が示す避難者規模や被害想定を踏まえると、自治体単独の備えだけでは不足する可能性がある。住民側の備えに加え、地域コミュニティや企業、NPO等との連携による物資調達や避難所運営の支援態勢の構築が求められる。
下表は、記事内で示された主な数値の概略である。
| 項目 | 数値(記事内試算) |
|---|---|
| 新潟市内の想定死者数 | 約1,500人 |
| 想定避難者数 | 約18万人 |
| 市の備蓄目標(食料) | 42万食(2028年4月まで) |
| 断層帯の延長 | 約80キロ(新潟市沖合〜小千谷市) |
最後に住民向けの実用的な行動指針を示す。まず家庭では3日分以上の飲食料と生活必需品の備蓄を基本とし、可能であれば1週間分の備えを検討してほしい。災害時にはインフラ復旧に時間がかかることが想定されるため、停電時の対処(懐中電灯、携帯充電手段、カセットコンロ等)の準備も重要だ。地域での避難所開設や運営に関わる可能性がある人は、自治会・町内会や自治体の防災担当が実施する訓練に参加して運営ノウハウを共有しておくことを勧める。
「熊本で起きていることはわが身。防災への意識を持ってほしい」――新潟大学・卜部厚志教授
今回の指摘は、確率や時期を特定する話ではなく、地域としての備えと意識の重要性を改めて示すものだ。新潟市や県は今後、具体的な避難所運営計画や物資配分の見直し、避難情報伝達手段の多重化などを進める必要がある。住民一人一人が自助・共助の準備を進めることが、新潟での被害最小化につながる。