松本・アルプス公園で今夏、ナナフシモドキが多数出現
長野県松本市郊外にあるアルプス公園の里山で、木の枝に擬態する昆虫「ナナフシモドキ」が今夏、複数の場所で確認されている。園内にある古民家体験学習施設の外壁などに約100匹が止まっているのが見つかり、来園者や関係者が驚きを示した。地面で死がいが見られる場所もあり、樹木の葉を食べる本種の動向に関係者が注視している。
ナナフシモドキはナナフシ科に属し、本州、四国、九州に分布する。また体長は約7〜10センチで羽を持たず、食樹の葉を摂食する。雌が単為生殖を行うことが知られており、雄の発生は稀だという。
「ナナフシモドキは以前からいるが、昨年になって急に増えた。今は被害はないが、注意したい」
この発言は、市立の自然博物館に所属する学芸員の指摘で、地域の専門家と連携し動向を把握する姿勢を示している。
過去の大量発生と被害例、分布拡大の可能性
隣接する安曇野市明科では2017年に大量発生があり、当時はケヤキが食い荒らされ、農作物にも被害が出たと報告されている。現地を調査した地元の昆虫クラブの世話人は、発生数が数十万匹に達したと推定している。この記録は、今回の松本での発生が局地的な増加にとどまらない場合、里山や果樹・農地への影響が広がる可能性を示唆している。
専門家は、飛べない本種がどのように分布を広げるかについて、可能性を複数指摘している。雌が抱える卵の殻は硬く、植物の種子に似るため、鳥が雌を捕食しその排せつ物を介して卵が広がることや、人が利用する車両に付着して移動することが考えられる。研究では、鳥に食べられた卵が消化されずに排せつされ、実際にふ化した事例も確認されているという。
| 項目 | 状況・数値 |
|---|---|
| 松本・アルプス公園の確認数 | 約100匹(施設外壁など) |
| 体長 | 7〜10センチ |
| 過去の大発生(安曇野) | 2017年、推定数十万匹 |
住民・農業への影響と対応の要点
現時点でアルプス公園周辺における大規模な樹木被害や農作物被害は報告されていないが、過去の事例を踏まえると早期の観察と情報共有が重要だ。以下の点が住民や関係者にとって実用的な留意事項となる。
- 公園や里山で多数のナナフシモドキを見つけた場合は、無闇に捕獲したり移動させない。観察記録(場所・日時・概数の写真)を自治体や博物館などに提供する。
- 果樹園や植栽で葉の食痕が増えた場合は、早めに農業改良普及センターなどの相談窓口に連絡する。
- 車両や農機具に付着して移動する可能性があるため、遠方から搬入する際は車両周りの点検を行う。
地域の自然や農業を守るため、自治体や研究機関、住民が情報を共有し、適切な対応をとることが求められる。関係者は今後の発生状況を継続して観察するとともに、異常が見られた場合の連絡体制を確認しておきたい。
(取材・文=斎藤 綾)