地裁で和解成立、被告は謝罪と解決金支払い
京都地裁で2026年7月17日、建設現場での石綿(アスベスト)吸引により肺がんを発症した原告1人と建材メーカー1社の間で和解が成立した。原告は京都市右京区の上谷栄一さん(75)。相手方は建材メーカー「ノザワ」(神戸市)で、同社が謝罪し、解決金を支払う条件で和解に至った。解決金の具体的な額は公表されていない。
本件は、京都府内の建設労働者や遺族ら22人が国や建材メーカー16社に対し損害賠償を求めている「京都アスベスト訴訟」の第3陣に属する。弁護団によれば、建材メーカーを相手とした訴訟で一審段階の和解成立は全国でも例が少ないという。
「亡くなった仲間がいることがつらいが、仲間の分まで頑張っていこうと思う」と上谷さんは記者会見で述べた。
住民・労働者にとっての意義と今後の見通し
今回の和解は、当事者個人の救済につながる一方で、集団訴訟全体の帰趨に影響を与え得る。ただし、他の原告については和解が成立しておらず、残る訴訟の判決は2026年9月25日に言い渡される予定である(弁護団発表)。
和解の成立は次の点で地域の当事者に直接関係する。
- 被害者救済の一事例として、同種の職業病を抱える労働者や遺族にとって前例となる可能性がある。
- 事業者側の謝罪表明は企業責任を巡る認識の変化を促す要素となり得る。
- 未解決の原告が残る中、今後の判決や和解の動向が被害救済の迅速化に与える影響が注目される。
訴訟の背景と経過
訴訟は、建設現場で働いた際にアスベスト含有の建材や混和剤などを扱い、長年にわたって被ばくしたことが健康被害の原因と主張している。上谷さんはタイル工としてノザワの混和剤を扱った経験があり、6年前に肺がんを発症して治療を続けているとされる。
| 項目 | 内容(出典に基づく事実) |
|---|---|
| 訴訟名 | 京都アスベスト訴訟(第3陣) |
| 原告数 | 22人 |
| 被告(総数) | 建材メーカー等16社および国等 |
| 今回の和解 | 原告1人(上谷栄一さん)とノザワの和解成立 |
| 今後の判決日 | 2026年9月25日(残る原告分) |
弁護団は、この和解を踏まえて引き続き早期解決を目指すとしており、被害に関する相談窓口も開設している。問い合わせ先は弁護団の公表番号(075-256-1891)である。
地元への影響と行政・企業への示唆
アスベスト問題は潜在的な患者・元作業者が地域に多数存在する可能性を内包している。和解の公表は当事者の声を可視化し、同様の被害を疑う住民が相談や検査を行う契機になると考えられる。行政や医療機関、労働団体には次のような対応が求められる。
- 被ばくが疑われる元作業者や遺族への情報提供・相談体制の周知。
- 受診・診断を受けやすくするための医療支援や検診案内の充実。
- 企業の過去の製品使用歴の調査促進と、責任所在の明確化を図る制度的対応。
被害の救済と再発防止を両立させるためには、法廷での判断だけでなく、行政・事業者・医療機関が連携して被害者支援を進めることが重要だ。今回の和解を地域の教訓として、同様の問題に苦しむ人々が速やかに支援を受けられる仕組み整備が求められる。
(京都府担当記者 石川 真央)