海自施設の整備受け入れで市が土地利用を断念
京都府舞鶴市は7月、防衛省からの申し入れを受け、舞鶴湾沿いにある一連の海上自衛隊関連用地について、市がかつて掲げていた民間活用の方針を事実上断念する意向を明らかにした。対象は湾沿いの浜地区と東山地区、さらに背後の国有地東山を含めた区域で、合計面積はおおむね約8.7ヘクタールに上る。
この土地は1992年に市と防衛庁(当時)、海自が交わした覚書で、市が望めば事業計画に基づき活用できることになっていた。舞鶴市は当初、観光や商業を軸としたリゾート的なまちづくりを想定し、赤れんがパークと連携した整備も視野に入れていたが、ここ30年余りで具体化に至らなかった。
「貴重な水際空間をまちづくりに生かしたいという思いは覚書当時はあった。30年にわたり活用を具体化できていない。市の財政を考えると将来的にも実現が見込めない」
鴨田秋津市長は、市議会議員協議会でこのように述べ、防衛省の申し入れを受け入れる方向で調整する意向を示した。一方で市は、防衛施設が整備されることによる地域への影響を踏まえ、防衛省に対し交付金の増額や地域振興に資する幅広い支援を要請する方針だと説明している。
対象区域と経緯
対象となるのは、浜地区と東山地区にある海自施設(現在は造修補給所や艦隊基地隊が所在)及び背後の国有地東山。市は1989年の府の「丹後リゾート構想」を背景に民間活用を検討してきたが、土地買収コストや地質面での制約などが障害となった。
| 地区 | 面積(報道による) | 現状 |
|---|---|---|
| 浜地区・東山地区 | 約4.6ヘクタール | 造修補給所・艦隊基地隊などが所在 |
| 背後の国有地(東山) | 約4.1ヘクタール | 未活用、地盤に脆弱性の指摘あり |
過去の調査では、東山の地下に旧海軍が防空指揮に用いた空間が確認され、山頂部への大規模施設整備は難しいとの結果も出ている。取得費用は当時の市場評価で約14億円とされ、これらの事情が民間活用を難しくした要因とされる。
住民生活・観光への影響
舞鶴では赤れんがパーク周辺が観光の拠点として定着し、湾内では遊覧船やプレジャーボートの運航もみられる。今回の方針転換は、以下の点で地域に具体的な影響を及ぼす可能性がある。
- まちづくりの選択肢の変化:市が民間中心の開発を断念したことで、観光拠点の拡大や新たな商業施設誘致といった計画は制約を受ける。
- 雇用・経済面:海自施設の機能強化は施設整備や維持運用に伴う雇用や発注の増加をもたらす一方、観光資源としての沿岸空間活用の機会が狭まる。
- 景観・生活環境:燃料貯蔵施設や係留施設の設置は水際の景観や利用形態に影響を与える可能性があり、防災や環境面での配慮が求められる。
市側は、防衛省からは「燃料貯蔵施設が全国的に不足している」との説明を受けたとしている。防衛上の必要性と地域の生活・観光資源保全のバランスが議論の焦点となる。
今後の手続きと残る課題
市は申し入れ受け入れに際し、国からの交付金や地域振興策の支援拡大を求める方針だ。過去には赤れんがパーク周辺のまちづくりに関して、24年度までに関連補助金として計約25.9億円を受けているが、今回の対応で新たな財政的・行政的調整が必要になる。
また、覚書に含まれる区域のうち、赤れんがパーク西側に隣接する「三角地」(約1ヘクタール)については、今年度中に海自施設の撤去工事が完了予定で、市はここをパークの玄関口として整備する意向を示している。これは一部地域の利活用が進む例外的な動きといえる。
他方で、舞鶴市内にある基地面積は今年3月末時点で約260ヘクタールに及び、今回の整備が完了する見込みの204?年度にはさらに約3.1ヘクタール増える見込みだと市は説明している(報道ベース)。基地機能の集積は、防災・雇用面での利点をもたらす一方で、地域の土地利用の制約や住民の懸念を生む要因にもなる。
市民にとっての実用情報
- 今後の説明会や公聴会の予定は市役所から改めて告知される見込み。関心のある市民は市の広報や議会報告の確認を。
- 三角地の整備など、具体的なまちづくりは年度ごとの事業計画に反映されるため、赤れんがパーク周辺の変化は段階的に進行する。
- 防衛省からの支援や交付金の内容、環境・防災対策の詳細は今後の折衝で決まるため、説明資料の公開がポイントとなる。
舞鶴では、歴史的資源と海辺の景観が観光基盤となっており、水際空間の使い方は地域の将来像を左右する重要な要素だ。市は今後、防衛省との協議を続けながら、住民説明や地域振興策の具体化を進める方針を示している。まちづくりの方向性が明確になるにつれ、地域経済や生活環境への影響も具体化するため、関係者や住民の関心は高いままだ。