職員が作成した「復命書アプリ」で事務負担を軽減
熊本県農林水産部森林局の林業振興課が、ノーコードのモバイルアプリ作成ツール「Platio」を活用して職員自ら開発した「復命書アプリ」の運用で、報告業務の工数を大幅に削減したことが明らかになった。アステリアの発表を受け、県内の行政業務の効率化と現場対応の変化が注目されている。
同課では従来、出張や会議の内容を記載する簡易な業務報告書(復命書)を紙で作成・回覧しており、出先で撮影・記録した写真やメモを帰庁後にWordへ転記、印刷・回覧するといった作業に1件あたり20分以上かかっていた。こうした手続きの煩雑さが、現場での小さな気づきの共有を妨げていたとされる。
Platioを使って職員が作成した復命書アプリは、現場や移動中にスマートフォンで入力や写真添付、共有まで完結できる設計で、電波の届かない林業現場でも利用できるオフライン機能などが評価された。これにより、従来20分以上かかっていた報告が約5分に短縮され、報告業務に関わる年間の工数が50%削減されたという。
- 報告時間の短縮:1件あたり20分超→約5分
- 年間工数:報告業務全体で50%削減
- 報告件数の増加:フローの効率化で報告件数が倍増
また、復命書アプリの成功を受け、職員自らが他業務向けにアプリを内製する動きが広がっている。具体例として、県産特産物のしいたけに関する「品質表示調査アプリ」を導入し、紙ベースの調査を電子化したことで転記や帳票作成の工数を約90%削減した事例も報告されている。アステリア側は、林業振興課が作成した復命書アプリをPlatioのテンプレートとして全国の自治体向けに提供を開始した。
「Platioを使い、現場業務を熟知した職員が自らアプリを作成できることを評価した」(出典:アステリア発表)
地域への影響と住民への具体的な利点
今回の事例は単なる事務効率化にとどまらず、熊本の林業現場や地域住民にとって次のような実利が期待される。
- 対応の迅速化:現場で確認された問題点や被害、改善案などが早く管理部門へ共有されることで、現地対応や支援の指示が速まる。
- 情報の蓄積と活用:報告が増えることで現場の小さな気づきが組織内に蓄積され、長期的な施策立案や改善策の検討に資する。
- 現場負担の軽減:書類作成にかける時間が減るため、職員が現場での作業や住民対応に充てる時間が増える。
林業に関わる事業者や地権者にとっては、行政への連絡や調査対応が簡便になることで、手続きの負担が軽くなる可能性がある。例えば、被災木の報告や現地確認の申請、助成金に係る報告などのフローに波及すれば、支援の実行や復旧作業が迅速化するだろう。
展開の条件と今後の留意点
一方で、自治体内でのノーコードツール活用を広げる際には留意点もある。業務データの管理、利用権限の設定、長期的な保守・運用体制の確立は欠かせない。アプリのテンプレート化が進めば導入は容易になるが、各部署の業務実態に即した設計や、オフライン利用時のデータ整合性確保、個人情報や機密情報の取り扱いルール整備が必要だ。
また、今回の報告ではPlatioを提供するアステリアの発表をもとにしており、県庁側の運用細部や今後の拡大スケジュールなどについては、各部署での正式な公表や説明が待たれる。県民や関係者は、導入が進む際の運用ルールや問い合わせ窓口などを確認しておくと良い。
今回の取り組みは、熊本県内の行政現場でのデジタル化が現場発想で進展していることを示す。住民サービスの質向上や迅速な現場対応につながる可能性が高く、今後、他の部署や市町村へ波及するかが注目される。
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 報告1件あたりの時間 | 約5分(従来20分超) |
| 年度工数削減 | 約50% |
| 品質表示調査アプリ(しいたけ) | 転記等の工数約90%削減 |
(太田 健二)