歴史的風致形成建造物に久保田酒造庭園と酒井家住宅を指定
福井県坂井市は、国に認定された「坂井市歴史的風致維持向上計画」に基づき、同市内の久保田酒造庭園(丸岡町山久保)と酒井家住宅(丸岡町楽間)の2件を「歴史的風致形成建造物」として指定し、7月28日に所有者に指定証を手渡した。福井県内で同制度による建造物指定が行われるのは今回が初めてで、今後の保存・活用に向けた支援が本格化する契機となる。
市が策定した計画は2024年3月に国(国土交通、文部科学、農林水産の各大臣)から認定を受け、以降10年間で15事業を展開する枠組み。計画では、継体天皇の事跡や三国湊、丸岡城周辺などを含む6つのテーマを軸に、地区の風致を保全しながら観光や地域振興につなげる方針を示している。特に丸岡城周辺(約2687ヘクタール)と三国エリア(約240ヘクタール)を重点区域に設定し、建造物の保存だけでなく、町並み整備、史跡の発掘や保存・復元、無電柱化など面的な整備も計画に含めている。
「このたびの指定は、歴史・文化・伝統ある建物を大事に保存活用しながら、今後のにぎわいづくりに結びつけようというものです。市もこれから、しっかりとサポートしてまいりますので、所有者さまも末永く未来につながるように保存活用をよろしくお願いします」
(池田禎孝坂井市長の式辞要旨)
指定対象の概要と意義
久保田酒造庭園は1753年創業の久保田酒造の本宅にある庭園で、庭の中央を幅約3.4メートルの清流が流れる構成。酒造は市内唯一の現存する酒造業者で、庭園は江戸時代中期ころからの景観を伝えるとされる。代表である久保田直邦さんは、地元の歴史的つながりを示す存在として今回の指定を歓迎している。
酒井家住宅は国の登録有形文化財にも登録されている建造物群で、和風の主屋や土蔵、門など9棟で構成される。主屋は明治後期に移築された近代和風住宅の要素を残し、屋敷内の座敷や梁などに重厚な造りが見られる。敷地西側には1930年代に建てられた鉄筋コンクリート造の洋館があり、地域では珍しい洋風要素も併存する点が特徴だ。所有者の酒井利恵さんは、指定を受けて責任の重さを感じつつ、地域や若い世代と連携して保存に取り組みたいと表明した。
住民・観光・行政への具体的な影響
今回の指定により、両件は国の支援対象として優先的に助成を受けやすくなる。保存修理や改修の際の財政的負担が軽減される可能性が高く、所有者が適切な維持管理を行いやすくなる点は実利的な利点だ。また、指定建造物を核とした周辺の景観整備や史跡調査が進めば、観光資源としての価値向上や地域のにぎわい創出にもつながる。
一方で保存と活用の両立には課題もある。私有財産である両建物の活用方法や維持費の確保、観光客の受け入れ体制、周辺住民との調整などが必要となる。市は今後、候補に挙がっている建造物の順次指定や、丸岡城の発掘調査、三国湊の無電柱化といった面的事業を進める方針で、地域の合意形成や資金計画が重要になる。
- 指定日:2026年7月28日(指定証授与)
- 指定件数(今回):2件(久保田酒造庭園、酒井家住宅)
- 計画期間:2024年度から10年間で15事業を展開
| 指定物件 | 所在 | 特徴 |
|---|---|---|
| 久保田酒造庭園 | 丸岡町山久保 | 1753年創業の酒造に伴う庭園。中央を清流が流れる伝統的景観。 |
| 酒井家住宅 | 丸岡町楽間 | 登録有形文化財。和風主屋と昭和期の洋館が共存する邸宅群。 |
今後の見通しと住民向け情報
坂井市は今回の初回指定を皮切りに、旧森田銀行本店や大木道具店、白道寺庭園など13件を候補として順次指定を進める考えだ。指定される建造物は国からの支援配分の優先対象となるため、地域全体の保存修理や景観整備の実施可能性が高まる。
保存修理や公開を希望する所有者は、市の総合政策部企画政策課に相談すると、補助の申請手続きや整備計画の作成支援について案内を受けられる。観光や教育利用を考える団体は、市の計画に沿った連携提案ができるため、具体的な活用を検討する際は早めの協議を推奨する。
今回の指定は、地域の歴史的資源を次世代へつなぐための制度活用の一歩だ。保存と活用のバランスをどう取るかが今後の課題となるが、国の認定計画に伴う支援を活かし、地域に根差した魅力の掘り起こしと持続可能な維持管理の仕組み構築が期待される。