闘病経験を糧にベンチ外からチームを支える
第108回全国高校野球選手権神奈川大会が7月5日に開幕する中、県立川崎北高校(有馬)には大会を前に緊張と期待が入り混じる空気が漂っている。副主将の荒川千尋さん(3年、18)は、選手としてグラウンドに立つ機会が限られる中でも、仲間を鼓舞する役割を果たしている。荒川さんは小学3年生で小児がんと診断され、以後しばらく入退院を繰り返した経験を持つ。そこから復帰して野球を続け、現在はチームの精神的な支柱の一人になっている。
荒川さんは小学校1年生で野球を始め、闘病生活を経て川崎北へ進学した。入退院を繰り返す中で同じ病棟で親しくなった友人が亡くなったことにも直面し、それを糧に「つらい思いも楽しい思いもできなかった仲間の分まで、自分は全力で楽しみたい」という思いを抱くに至った。こうした体験が、プレーや応援に向ける姿勢の原点になっている。
昨夏はベンチ入りを逃し、大きな悔しさを味わったが、それを契機にチームへの関わり方を模索した。自ら応援団長の役割を買って出て、吹奏楽部やダンス部と連携を図り、選手個人の応援曲やベンチの配置を細かく調整するなど実務面でも動いた。こうした取り組みが評価され、新チームでは副主将に選ばれている。
- 所属校:県立川崎北高校(有馬)
- 氏名:荒川千尋(3年、18歳)
- 大会:第108回全国高校野球選手権神奈川大会(開幕:7月5日)
荒川さんは自分の役割を「良い空気を作ること」と言い、守備位置や相手投手の特徴を仲間に伝えるなど客観的にチームを見る姿勢を重視する。ベンチ外からの応援が試合の流れを変えることがあると考え、実践してきた。
「自分にできることは選手を盛り上げること。大好きな先輩たちの力になりたい」
高校卒業後は野球を続けない意向を示しているが、彼女の目標は一貫している。「全力」を胸に、一日でも長く仲間と夏を過ごすことを望んでいるという。チームとしては「ベスト16」を目標に掲げ、団結して大会に臨む。
地域への波及効果と住民にとっての意味
荒川さんのケースは、川崎市内の多くの家庭や学校関係者にとって示唆に富む。病気を経験した生徒が復学し、部活動で後輩やチームを支える姿は、教育現場での「包摂(インクルージョン)」を具体化する一例だ。保護者や教員にとっては、病後の学校生活や部活動参加の在り方を考える契機となる。
また、部活動や地域の他部と連携して試合を盛り上げる取り組みは、学校と地域団体の協働の可能性を示す。吹奏楽部やダンス部との調整を通じて、学校内での役割分担や連携のノウハウが蓄積されれば、今後の体育祭や文化祭、地域イベントの運営にも好影響を与えるだろう。
今後の大会観戦や支援のヒント
住民として関心を持つ点は、大会を通じた選手たちの成長や学校間の交流、そして地域ぐるみの応援体制だ。観戦を希望する場合は、各大会の入場ルールや会場の感染対策など主催者発表の情報を確認することが必要である(大会の具体的な当日情報は主催者の公式発表を参照されたい)。
また、病気を経験した子どもとその家族を支える地域資源についても注目したい。医療・福祉機関や学校の相談窓口、地域のボランティア団体などにつながりを持つことで、復学後の生活や進学・就職の選択肢を広げる手助けにつながる。本稿で紹介した荒川さんのように、競技を続けない選択をする生徒にも、多様な進路支援が必要だ。
川崎北高校のチームは、選手個々の事情を尊重しつつ大会へ挑む。荒川さんが示す「全力で楽しむ」姿勢は、勝敗を越えた地域の励ましとなる。大会の行方とともに、部活動を通じた若者の成長と地域の支え合いに注目したい。