自治体職員の実務適用を前提にした中級研修が実施
2026年9月14日、兵庫県川西市の職員を対象に、行政向け生成AI「QommonsAI(コモンズAI)」の活用研修(中級編)が実施された。研修はPolimill株式会社の主催で、午前に初級編(参加約30名)、午後に中級編(参加約15名)を現地で行った。
川西市では数か月前にQommonsAIが全庁展開されており、日常業務で同AIを利用する職員が一定数いることが今回の研修でも確認された。こうした背景から、参加者の多くは基本操作を超えた実務的な応用や高度な活用方法に関心を示した。
研修の構成と参加者の反応
研修は初級・中級の二段階カリキュラムで実施され、初級ではプロンプトの基本や簡単な文章生成ワークが行われた。会場ではグループごとに生成結果を比較し、表現改良の手法を学ぶ場面が目立った。
- 初級ワーク:「あいさつ文を作成しよう」など、実務に直結しやすい題材で基礎を確認
- 中級:実務課題に即した応用や複数の活用方法の比較を想定した内容(参加者のスキルに合わせた指導が課題)
研修終了後、日常的にQommonsAIを使っている職員からは機能に関する具体的で高度な質問が寄せられ、実務に照らした学びが進んでいることが示された。一方で、受講者の一部から「内容が物足りなかった」との率直な意見も挙がり、参加者全体のスキル水準に応じたプログラム設計の必要性が明らかになった。
「もっとQommonsAIを学びたい」というニーズに十分に応えきれなかった点は今後の課題だと考えている(担当:森田)。
実務適用の広がりと研修の課題
川西市での全庁展開は、職員自身が生成AIを日常業務に取り入れていることを示している。これに伴い、研修には次のような要素が求められる。
- 実際の業務課題を題材にした演習の充実:単なる操作説明では解決できない業務プロセスへの組み込み方を学ぶ必要がある。
- 複数ツールや機能の比較検討の場:他サービスとの併用や機能選定に関する実務的判断力の向上。
- 習熟度別のフォローアップ:日常利用者と未経験者が混在する場合の学習設計の工夫。
研修を担当したPolimillは、初級から上級、管理職向けまで段階的なカリキュラムを用意し、導入後も「現場で使いこなせる」状態まで伴走するとしている。川西市のように全庁で導入が進んだ自治体では、継続的な学習支援と実務に直結する課題の反映が重要になる。
住民サービスへの影響と留意点
自治体が生成AIを実務で使いこなすことは、以下の点で住民サービスに直接的な影響を与える。
- 文書作成や問い合わせ対応の効率化:窓口対応や広報文書作成の迅速化が見込まれる。
- 政策立案やデータ整理の支援:エビデンスに基づく情報整理が進めば、政策の質が向上する可能性がある。
- 議会対応など専門性の高い業務への応用:南あわじ市での研修事例にあるように、議会答弁の再質問予測など高度用途への活用も視野に入る。
ただし、生成AIの業務適用に際してはプライバシー管理、データ更新の仕組み、誤情報やバイアスのチェック体制など技術的・運用的な留意点が残る。自治体が機能を信頼して運用するには、内部ルールの整備と継続的な検証プロセスが不可欠だ。
全国的な普及状況と今後の展望
Polimillが提供するQommonsAIは、2026年10月時点で全国約1100以上の自治体、約60万人が利用しているとされる。自治体業務に特化した機能群は議会対応や住民対応など幅広い分野で試行されており、導入自治体ごとに活用の深度や重点分野が異なる。
| 項目 | 数値(提供値) |
|---|---|
| 導入自治体数(2026年10月時点) | 約1100以上 |
| 利用者数(2026年10月時点) | 約60万人 |
| 川西市での研修実施日 | 2026年9月14日 |
川西市の今回の研修で示されたのは、導入を終えた後に生じる「次の段階」の課題だ。日常利用が進むと、単なる操作習得では満足できない職員が増える。その結果、より実務に即した応用演習や、部門横断的な利活用設計、管理職を含めた意思決定層の理解促進が求められる。
今後は、研修の構成を参加者の習熟度に応じて分けることや、実際の行政文書や住民対応事例を使ったハンズオン、他システムとの併用事例を共有する場の定期化が有効だろう。川西市の現場から上がった意見は、他自治体の運用設計にも示唆を与えるものになり得る。
以上が今回の研修の概要と地域への影響分析である。研修で得られた知見が今後の運用改善、住民サービス向上につながるかどうかは、継続的な学習支援と運用ルールの整備にかかっている。