テクノロジー

「人とモビリティのテクノロジー展」へ 展示会の領域拡大が示す潮流

自動車技術会は従来の「人とくるまのテクノロジー展」を2027年から「人とモビリティのテクノロジー展」に改称。電動化やAI、通信、半導体など異分野との融合を踏まえ、横浜・名古屋での大型開催とオンライン併催を通じモビリティ分野のハブ化を目指す。

「人とモビリティのテクノロジー展」へ 展示会の領域拡大が示す潮流
©イラスト AI生成 :編集部/プレスリリースジェーピー

展示会名称の変更とその意図

自動車技術会は10月16日、1992年から続く総合展示会「人とくるまのテクノロジー展」の名称を、2027年に迎える同会の創立80周年にあわせて「人とモビリティのテクノロジー展」へと刷新すると発表した。従来の自動車技術に限らない、電動化や知能化に加え、AI・通信・半導体・ロボティクス・次世代エネルギー・航空宇宙など多様な分野との連携が進む現状を踏まえ、展示会の対象領域を広げる狙いが示されている。

「モビリティ産業のハブ」とすることを目指すとともに、出展者や来場者の裾野を幅広い分野や地域、次世代へ広げる

発表文では、産学官や異業種の技術と人が出会う場としての役割を強調し、展示会の価値を維持しつつ領域の拡大を図るとされる。従来の自動車メーカー・部品供給者に加え、新規参入の事業者や異分野の企業、研究機関を取り込むことで、新たな連携や事業創出を促す意図が明確だ。

開催計画の概要とスコープ

2027年の開催は、横浜と名古屋の実会場に加え、オンライン展示を組み合わせたハイブリッド形式で実施される。主な開催概要は以下の通りだ。

  • YOKOHAMA:2027年5月26日~28日、会場はパシフィコ横浜 展示ホール・ノース、展示規模は約600社・約1400小間(見込み)、来場者は8万人(見込み)
  • ONLINE STAGE 1:2027年5月19日~6月9日
  • NAGOYA:2027年7月21日~23日、会場はAichi Sky Expo、展示規模は約400社・約900小間(見込み)、来場者は3万人(見込み)
  • ONLINE STAGE 2:2027年7月14日~8月4日
開催地会期展示規模(見込み)来場者(見込み)
YOKOHAMA2027/5/26–28約600社・約1400小間8万人
NAGOYA2027/7/21–23約400社・約900小間3万人

背景:自動車からモビリティへ――領域拡大の必然性

自動車を取り巻く技術潮流は、単なる車両性能改善から、交通インフラ・エネルギー・通信網といった広範な社会システムと一体化する方向へ変化している。電動化(電気自動車や二次電池技術)、知能化(先進運転支援/自動運転)、そしてAIや高性能半導体、車載通信(V2X)、ロボティクス、さらにはドローンや都市型エアモビリティといった要素が、従来の自動車産業の枠組みを超えて交錯している。

こうした技術横断的な変化は、サプライチェーンや産業構造、規制や安全基準の在り方にも影響を与える。展示会名称の変更は、単なる言葉の置き換えではなく、業界の実態と産業政策に即した方向性の表明と受け取ることができる。

意義と期待される効果

名称変更とハイブリッド開催の組み合わせは、以下のような効果を期待していると考えられる。

  • 異分野プレーヤーの参入促進:AIや半導体、エネルギー、航空宇宙などからの出展拡大により新たな協業が生まれやすくなる。
  • 地域間の接続強化:横浜・名古屋の両会場開催により、首都圏と中京圏という主要な産業集積地を結ぶ機会を提供する。
  • デジタル併催によるアクセス向上:オンラインステージを通じて、物理的来場が難しい国内外の参加者にリーチできる。

課題と留意点

一方で、展示会運営と産業側にとっての課題も明確だ。出展分野の多様化は場の価値を高めるが、参加者のニーズが細分化するリスクも伴う。来場者が求める情報やマッチングの精度を高めるためには、出展ゾーニング、講演・セッション設計、マッチング支援など運営面での工夫が不可欠となる。

また、物理展示とデジタル展示の価値をどう両立させるかも重要だ。オンライン展示はアクセス性を高める一方で、実機展示や試験・デモンストレーションの訴求力は実会場に依存する部分が大きい。ハイブリッド化に伴うコスト構造と収益モデルの設計も運営側の課題となる。

業界への示唆

今回の名称刷新は、モビリティを巡るプレーヤーが自社の技術・事業領域を再定義する契機ともなり得る。自動車メーカーや部品サプライヤーは、従来の製造・製品中心の発想からサービスやソリューション提供者としての転換を迫られる場面が増えるだろう。また、スタートアップや異業種企業にとっては、既存の業界枠組みを超えた市場接触の機会が拡大する。

学術界や規制当局にとっても、技術実装や安全・規範の議論を産学官でより密接に行う必要性が高まる。展示会が単なる展示の場を超えて、政策議論や標準化の場として機能することにも期待がかかる。

まとめ

自動車技術会による展示会名称の変更と開催計画は、技術と産業の境界が溶け合う現在の潮流を映している。「モビリティ」という広義の枠組みへと踏み出すことで、産業横断的な出会いと協業が促進される一方、運営・出展・来場双方に新たな課題も提示される。今後の開催内容や出展者の顔ぶれ、オンラインとオフラインの連携の在り方が、次世代モビリティ産業の方向性を占う重要な指標となるだろう。

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