県調査で明らかになった傾向
石川県は2025年11〜12月に実施した被災者向けの健康調査の結果を公表した。調査対象は建設型仮設住宅、いわゆるみなし仮設、また公営住宅入居者や在宅高齢者などで、回答は約1万1千人に上った。年代構成は70代が最多で、60歳以上が約8割を占めている。
調査では過去30日間の心理的ストレスやうつ・不安の指標を点数化して評価した。その結果、うつや不安障害の高度疑いと判断される割合は全体で7.5%。一方で、みなし仮設では9.3%、建設型仮設では8.9%と、仮設に暮らす人の方が高い割合を示した。被災前の住居や公営住宅に比べ仮設のほうでリスクが高まる傾向が見られた点が特徴だ。
調査が示す生活面の変化
心の健康に加え、生活行動にも変化が確認された。食生活では「料理をする意欲が低下した」と答えた人が約27.9%で、前回調査の約30.6%から小幅に改善したものの依然として高い割合にとどまる。運動習慣では「週1日以上、歩行やストレッチなどを行う」と答えた人が約65.6%で前回より増加し、外出頻度も「ほぼ毎日」が約49.3%と改善傾向がみられた。
ただし、「運動する機会がほとんどない」は依然として約32.3%に達しており、外出頻度がほとんどない人も約6.5%いる。こうした生活機能の低下は身体的健康だけでなく、精神面の悪化と相互に影響し得る。
専門家の指摘と県の対応方針
調査に関わった専門家は、長期化する避難生活が将来に対する見通しの持てなさや、将来設計の保留といった負担を生み、心理的ストレスを助長している可能性を指摘している。県は、心の健康状態が悪化している懸念や治療の中断・未治療の問題を踏まえ、個別に状況把握を行うべき対象を抽出した。
「心の健康状態の悪化の懸念」「かかっている病気の治療中断・未治療」
この観点から保健師などによる個別確認が必要な人は約9.3%。前回の約11.2%から減少したものの、相当数が支援を要する状況にあることに変わりはないと県は説明している。
住民に及ぼす具体的影響と地域支援の必要性
今回の調査結果は、仮設住宅暮らしが長引くほど心身の負担が蓄積する構図を示している。高齢者が多い回答者構成を踏まえると、治療の中断や通院困難、閉じこもりによる体力低下といった二次的な健康問題が懸念される。加えて、食事や運動の機会減少は慢性疾患の管理にも影響し、医療・介護の現場での負担増にもつながる。
地域住民にとって重要な点は次の通りだ。
- 仮設やみなし仮設で暮らす人は、精神面の不調を周囲が早期に察知し、行政や医療機関に相談する仕組みが必要。
- 治療中断を避けるための通院支援や訪問診療など、医療アクセスの確保が急務。
- 孤立を防ぐ地域イベントや運動プログラムなど、社会的つながりを保つ場づくりが効果を持つ。
行政と市町の連携、住まいの早期確保がカギ
県担当者は調査のタイミングが震災から約2年であることを踏まえ、「避難が長引けば新たな健康問題が生じる」と述べ、各市町と協力して対策を継続する考えを示した。恒久的な住居の確保は、心理的負担を軽減する重要な要素だが、その実現には住宅供給や住替え支援、資金面や手続きの支援など多面的な取り組みが必要となる。
行政が取り組むべき具体策としては以下が考えられる。
- 保健師や相談員による定期的な巡回と個別支援の強化。
- 臨床心理士や精神科医と連携した相談窓口の周知とアクセス拡大。
- 通院支援のための交通手段や訪問診療の充実、薬の受け取り支援。
- 地域での交流プログラムや運動教室など、孤立を防ぐ取り組みの継続的支援。
住民への実用的な案内
被災地で暮らす住民や支援者に向けて、まず知っておくべき点は次の通りだ。体調や気分の変化を感じた際には、我慢せず市町の保健窓口やかかりつけ医に相談すること。通院が難しい場合は訪問診療や在宅医療の相談を行う。地域の集まりやサロン、運動教室は心身の回復に有用で、参加にあたっての負担を減らすための送迎や連絡支援を自治体や支援団体に求めるとよい。
また、支援や相談先が分からない場合は市町の担当窓口に連絡し、具体的な支援メニューや手続きの案内を受けることを推奨する。行政は今回の調査結果を踏まえ、地域の事情に即した支援計画を改めて詰める必要がある。
石川県内の被災者支援は、住まいの確保と心身両面のケアを同時に進める長期戦だ。今回の調査はその方向性を示す重要な資料であり、自治体、医療機関、地域団体が連携して具体策を実行に移すことが求められている。