高校生の発想を地域防犯に活用
奈良県五條市で、地元の高校生が考案した標語を使った啓発ポスターが完成し、市内の金融機関や飲食店に配布されている。テーマは郷土料理の柿の葉ずし。五條警察署が金融機関と連携して立ち上げた取り組みで、若者の視点を防犯に取り入れることを狙いとしている。
プロジェクトには県立五條高校、智弁学園高校、市立西吉野農業高校の3校が参加。生徒会が校内で標語を募集し、応募作の中から優れた作品を選抜して、イラスト入りのポスターとメッセージカードを制作した。
地域で使える具体的メッセージ
- あいうえお作文で柿の葉ずしをもじった標語を採用。
- 詐欺被害の防止を呼びかけるものと、若者が狙われる闇バイトへの注意喚起の2パターン、計5点を用意。
- 市内の協賛店で掲示・配布されるほか、県警のアプリと連動した特典も実施中。
ポスターの例として、柿の葉ずしの語を頭文字にしたフレーズには「必ず確認」や「きっぱり断るお金の話」、「のらないで、うまい話は闇バイト」といった消費者への呼びかけが含まれている。地域の食文化をモチーフにすることで、受け手の抵抗感を減らし、注意喚起の効果を高める工夫が施されている。
「スパッと切ろう 怪しい電話」がいい出来。犯罪の手口を想像して被害防止のポイントを考えた
この発言は、市長賞を受けた県立五條高校の生徒のもので、標語の実用性や発想の根拠が分かるコメントとなっている。智弁学園高校の生徒会長も、県内の被害状況を知って危機感を抱いたと述べ、啓発の必要性を強調した。
地域への波及と実施の仕組み
制作されたポスターとメッセージカードは、市内の金融機関や柿の葉ずし店で掲示・配布される。協賛しているのは市内の主要な柿の葉ずし店である柿の葉ずしヤマトと柿の葉すし本舗たなか。また、県警のスマートフォン用アプリを導入した利用者向けに、店舗限定の割引やプレゼントが受けられる特典が設けられ、啓発参加のインセンティブとなっている。特典は11月30日までの期間限定としている。
深刻さを示す直近の統計
県警のデータでは、奈良県内の特殊詐欺被害は近年高止まりの状況が続いている。具体的には、2025年の被害件数は535件、被害額は約58億1710万円。2026年も9月末時点で456件、被害総額は約53億2448万円に上っており、これらを人口当たりで換算すると全国で最も深刻な水準にあるという。五條署の管内でも9月末時点で7件、被害額は約3254万円が確認されている。
| 年度 | 被害件数 | 被害額(概数) |
|---|---|---|
| 2025年 | 535件 | 約58億1710万円 |
| 2026年(9月末) | 456件 | 約53億2448万円 |
| 五條署管内(9月末) | 7件 | 約3254万円 |
住民への影響と今後の課題
特殊詐欺は高齢者が主な被害者となるケースが多く、日常的な金融取引や電話応答のあり方に注意が求められる。地域の飲食店や金融機関がポスターを掲示することで、買い物や窓口で接する機会に注意喚起が行われ、被害抑止につながる効果が期待される。一方で、啓発の継続性や高齢者に届く手法の工夫が不足すれば、効果は長続きしない懸念もある。
今回の取り組みは、若者の創造力を取り入れることで地域の関心を高める点に意義がある。だが、実際の被害を減らすためには、以下のような追加措置が重要だ。
- 金融機関と連携した早期発見の仕組みの強化
- 高齢者向けに分かりやすい説明会や訪問型の周知活動
- 地域内での情報共有と不審事案の迅速な周知
五條署や市は、地域一体となった防止策を続ける考えを示しており、今回のポスター配布はその一環と位置づけられる。啓発素材は視覚的に訴える力があり、店舗や金融機関の窓口で目にする機会が増えれば、詐欺への注意喚起効果は広がる可能性がある。
市役所で行われたお披露目式では、高校生に対する感謝状の贈呈も行われ、地域の若者が防犯活動に貢献したことが公式に評価された。今後は、制作物の配布状況や啓発活動が被害減少にどの程度結びつくかを見極めることが課題となる。
住民は、不審な電話や金銭の話を受けた際には、家族や金融機関、市役所、警察に相談することが重要だ。県警は被害の深刻さを受けて「非常事態宣言」を発令し、防止対策を強化している。地域での目配りや若年層の巻き込みを生かした今回の取り組みが、実効ある抑止策となるか注視したい。