県産材でつくる“出雲サウナ”が駅前に設置
出雲市の温泉施設「らんぷの湯」は、9月の施設リニューアルに合わせて、島根県産の木材を用いた樽型サウナ(通称「出雲サウナ」)を導入した。導入費用は約200万円で、定員は6人程度。天井が曲線を描く樽型構造により蒸気が循環しやすく、室内の温まり方にムラが出にくいのが特徴だという。
サウナに使用された木材はすべて県産材で、特にヒノキを用いることで清涼感のある香りが広がるとしている。製作は出雲市内で木材加工を続けてきた老舗の増原木材工業が担当。増原社長は、建築需要の先行き不安がある中で、サウナという製品に加工することで新たな販路を模索していると説明した。
「資材高騰だったりとか、そういうような逆風の中でもだからこそ元気を出してください!みたいな思いも掲げてまして」 — 出雲駅前らんぷの湯 支配人 石田純
地元企業の工夫と防水性確保
増原木材工業は、木材の組み方を工夫することで必要な防水性を確保し、樽型の形状を実現した。会社側は、長さや窓の大きさなどを要望に応じて変更できるとし、オーダーメードでの対応も可能だと説明している。これは、建築資材の価格高騰や人口減少に伴う建築需要の低下が懸念される状況下で、加工技術を生かして新たな需要を開拓する試みでもある。
観光・地域経済への期待と利用状況
サウナの導入以降、らんぷの湯では利用客が増えたと報告されている。JR出雲市駅前という立地は観光客にとってアクセスが良く、県産材の香りや地場色を打ち出すことで、地域らしさを演出する観光資源としての価値も期待できる。
- 出雲駅前の温泉施設に設置、アクセス良好で観光客の利用増が見られる。
- 材料・製作は地元企業が担当し、地場産業の新たな販売先となる。
- オーダーメード対応が可能で、他施設や自治体との連携余地がある。
地域にもたらす具体的な影響
今回の導入は、単なる施設改修にとどまらず、以下のような地域への波及効果が想定される。
| 分野 | 想定される効果 |
|---|---|
| 観光 | 駅前立地を生かした滞在促進や土産物・飲食利用の増加 |
| 林業・製材 | 加工品としての木材需要創出、技術継承の契機 |
| 地域ブランド | 県産材の魅力発信によるイメージ向上 |
特に製材業にとっては、住宅建築需要が今後縮小する懸念がある中で、サウナのような非住宅用途への木材供給は生産・加工を維持する上で重要な出口となる。増原社長は、自社で製造可能な樽型サウナに着目した背景として、建築需要の落ち込みを不安視していた点を挙げている。
課題と展望
一方で、導入を広げる際には建築基準や都市計画法上の制約がネックになる場合があるとされる。自治体や施設側が設置条件を整備する必要があり、設置場所や用途に応じた対応が求められる。また、資材価格の高止まりが続くと初期投資をためらう事業者も増えるため、補助金や共同プロモーションなどの支援策が活用されれば導入拡大につながりやすい。
今回の事例は、地元の製造技術と観光資源を結び付けるモデルケースとして注目される。駅前の温浴施設での実績が示す通り、訪問客に対して地域色のある体験を提供することで、短期的には利用者の増加、長期的には県産材の需要喚起や地域経済の底上げにつながる可能性がある。
今後、同様の取り組みが他の温浴施設や宿泊施設、公共施設に波及するかどうかは、コスト面・法規制への対応・マーケティング次第だ。地元企業の加工ノウハウを生かした商品化が進めば、島根県内の木材産業にとって新たな成長分野となるだろう。
(取材・文=村上 彩)