印西市、英語を“使う学び”に方向転換
千葉県印西市教育委員会は、令和8年度から市内全ての市立中学校の3年生を対象に、生成AIを活用した英会話アプリと海外中学生とのリアルタイムのオンライン交流を組み合わせた「オンライン国際交流授業」を本格導入すると発表した。従来の知識中心の英語教育から、学んだ表現を実際に使う場面を増やす取り組みで、異文化理解やコミュニケーション能力の向上を図るのが狙いだ。
先行実践の成果と授業の構成
印西市は令和7年度に先行実践校での試行を行い、7月に小林中学校と印旛中学校で実際の授業を実施した。両校の生徒はフィリピンやインドネシアの中学生とオンラインで交流し、当初は緊張して単発の質問にとどまっていた生徒も、交流を重ねる中で次第に積極的に対話する姿が見られたという。
今回の授業では、以下のような学習の流れが採られている:
- 生成AI英会話アプリによる事前の反復練習
- 事前学習で作成した自己紹介スライドやクイズなどの教材準備
- 海外中学生とのリアルタイム交流で実践
- 交流後の振り返りと異文化理解を深める探究型学習
授業での具体的なやりとりと生徒の反応
小林中学校ではフィリピンとインドネシアの生徒と交流し、SNSやゲーム、学校生活やアニメといった身近な話題で会話が展開された。生徒からは「国際交流を肌で感じることができた」「事前に調べた言葉で『サラマッポ(ありがとう)』と言えたのがうれしい」といった声が寄せられている。一方で、インドネシアの生徒の方が英語力が高い場面もあり、印旛中学校の活動では生徒が「One more time!」と繰り返し相手に伝えようと試みる姿も見られた。
「今回は通信接続に不安もありましたが、周囲のフォローのおかげで生徒たちはスムーズに交流を始めることができ、『スーパー楽しかった!』と大喜びしていました。」
教員側の観察と教育的意義
教員は、単に英語表現を覚えるだけでなく「どうすれば相手に伝わるか」を生徒自身が考え、工夫する姿勢が育まれた点を評価している。例えば、自己紹介スライドや日本文化クイズの作成を通じて、自分たちの文化を客観的に見つめ直す機会となったという。また、交流がうまくいくためには日頃からの授業で「伝える工夫」やコミュニケーションの在り方を教員が継続して指導する必要があるとの指摘があった。
導入に伴う課題と今後の展開
オンライン交流に伴う通信環境の不安定さは今回の試行でも認識された課題だ。市は2学期以降、今回実施した学校以外でも順次授業を拡大する計画であり、安定した通信環境の確保や機器操作の支援体制、教員の指導力向上が運用面での重要点となる。
| 対象 | 市内全市立中学校3年生(令和8年度から本格導入) |
|---|---|
| 先行実践 | 令和7年度、7月に小林中学校・印旛中学校で実施 |
| 主な手法 | 生成AI英会話アプリ+海外中学生とのオンライン交流+探究型学習 |
地域の生徒にとっての具体的な影響
今回の取り組みは、次のような具体的効果が期待される。
- 実践機会の増加:授業内でのリアルな会話機会が増えることで、机上の知識を実用に結びつける経験が得られる。
- 主体性の向上:事前準備や伝え方の工夫を通じて、生徒自身が学習に主体的に関わる姿勢が育まれる。
- 異文化理解の促進:交流を通じて相手の文化や価値観を肌で感じることで、国際理解が深まる。
印西市の方針は、英語教育の「知識偏重」から「使う力」への転換を地方自治体レベルで推進する具体例として注目される。今後、市内全校での展開が進むにつれて、授業設計やICT整備、教員研修の体制がどのように整備されるかが、成果の鍵を握るだろう。
(取材・文=山田 香織)