実質公債費比率の算定誤りで将来の健全化に懸念
兵庫県は13日、財政状況の見通しについて、2030年度に財政再建が急務となる「早期健全化団体」に陥る可能性があると有識者検討会で明らかにした。問題の発端は、収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率の算定に用いるべきでない収入を誤って含めていた点だ。算定をやり直した結果、同比率は年最大で0.8ポイント悪化し、2030年度以降に25%を超える見込みが浮上した。
「用先債を活用して得た収入490億円を算入していた」
県が誤って算入していたのは、公共用地先行取得などに充てるため発行した「公共用地先行取得等事業債(用先債)」に関連する収入で、金額は490億円に上る。用先債はルール上、県債管理基金に組み込めないにもかかわらず計算に含めていたため、除外して再算定したところ比率が悪化したという。
兵庫県は阪神・淡路大震災の復旧・復興関連で約1兆3千億円を県債で賄っており、2024年度決算時点でも返済残高は1,478億円に達している。加えて、防災インフラ整備や、実質的に破綻した分収造林事業の債務処理が重なり、長期金利の上昇により利子負担が膨らんだことが財政を圧迫している。
県が公表した対応方針と市民への影響
県は早期健全化団体への転落を回避し、起債許可団体への移行を阻止するため、総務省に提出する「公債費負担適正化計画」を二段階で策定する方針を示した。第1段階の素案では、使途が決まっている特定目的基金を県債管理基金に振り替えることや、公共工事などの投資規模を2027年度以降に少なくとも10%削減する方針を掲げている。第2段階では歳入・歳出の全面的な見直しを行い、2057年度までに実質公債費比率を18%未満に抑える計画だ。
この方針により、県民生活や地域経済に次のような影響が想定される。
- 公共工事の規模縮小や先送りによる建設業や関連産業の受注減少
- 防災や社会インフラの整備計画の見直し、着手時期の先延ばし
- 県庁舎の建て替えなど大型投資の延期や縮小
用先債の返済手続きに違法性の疑い
県は用先債の返済を巡る手続きについても問題を認めている。用先債は2000年度に発行され、返済期間は30年で設定されたが、土地が売れた場合に売却益を10年ごとに返済する取り決めがある。県では2017年度から2020年度にかけて計338億円分の土地が売却されているが、本来返済すべき年度に返済を行わず、売却可能な土地がないにもかかわらず全額を借り換えた経緯が確認された。この点について県は地方財政法に抵触する可能性があるとし、詳細な経緯を調査中である。
県の基金残高も懸念材料だ。2026年度当初予算時点で県債管理基金の残高は5,686億円にとどまり、国が定める水準の6割弱にとどまっている。基金残高が多いほど資金繰りの安定性は増すが、今回の修正で余裕が一段と薄くなった。
住民・事業者にとっての実務的留意点
県が示した「投資縮小」や「歳出見直し」は、具体的には公共事業の入札機会の減少や補助事業の見直しを伴うため、建設業者や地域の中小事業者は今後の入札情報や補助金の公表を注視する必要がある。また、公的サービスの提供優先順位が見直される過程で、福祉・教育・防災といった分野での事業スケジュールや支援策が変わる可能性がある。県は近く公債費負担適正化計画の素案を示す予定であり、住民説明会やパブリックコメントの実施状況を確認するとよい。
| 項目 | 金額・数値 |
|---|---|
| 用先債に関する誤算入額 | 490億円 |
| 売却済みの土地による返済対象額 | 338億円 |
| 震災復旧関連の県債発行総額 | 約1兆3,000億円 |
| 2024年度時点の県債残高 | 1,478億円 |
| 2026年度当初時点の県債管理基金残高 | 5,686億円 |
県当局は、今後の対応として総務省との協議を進めるとともに、内部手続きの問題点の洗い出しと関係者への説明を急ぐ方針だ。ただし、検討会の示した見通しは現時点の前提に基づくものであり、今後の経済動向や金利の変化、土地売却の見込みなどによって見通しは変わり得る。
兵庫県は人口や産業構造が多様で、大規模インフラや災害対策のニーズも高い。こうした事情が財政上の負担を増幅している側面があり、県民への説明責任と透明性の確保が今後、一層問われることになる。
今後の注目点は、総務省が県の公債費負担適正化計画をどう評価するか、そして県が掲げる投資削減や基金の再編がどの程度具体化され、県民サービスにどのような影響を与えるかだ。県は8月にも起債許可団体への移行が確実となるとの見通しを示しているため、短期的な政策決定と説明が求められる状況にある。
(プレスリリースジェーピー兵庫県担当記者 藤田 早紀)