売上か、所得か——判断の出発点を押さえる
手作り雑貨やアクセサリーの販売で「月に5万円」を稼ぐ――こうした話を耳にする機会が増えています。しかし、税や社会保険で問題になるのは単に受け取った金額(売上)ではなく、そこから必要経費を差し引いた合計所得金額です。例えば、年間の総売上が60万円でも、材料費や梱包資材、出品手数料、送料などに年間で15万円使っていれば、課税上の所得は45万円になります。これが「扶養」や配偶者控除の判定材料になります。
- 売上(収入の総額)ではなく、売上から必要経費を引いた「所得」が基準になる
- 材料費や発送費、販売サイト手数料などは経費として計上できる
- 電気代や通信費は、事業使用分を合理的に按分して計上する必要がある
経費がほとんどかからない場合には、年間の売上がそのまま所得に近くなり得ます。したがって、同じ「月5万円」の売上でも、実際の所得次第で扶養の扱いが大きく変わる点に注意が必要です。
最新の制度改正と具体的な数値
令和8年度の税制改正により、2026年・2027年にかけて配偶者控除の判定基準となる合計所得金額は見直されています。配偶者控除の対象となる目安は合計所得金額が62万円以下に引き上げられ、従来の「年収136万円」という給与目安は給与所得を前提としたものであり、ハンドメイド等の事業所得ではそのまま当てはまりません。
つまり、副業が給与所得ではなく事業所得や雑所得に該当する場合は、年間の収入額そのものではなく、経費を差し引いた後の所得額で判断することになります。所得が62万円を超えると配偶者控除の対象外になり得ますが、一定の範囲内であれば配偶者特別控除が適用される可能性もあります。
| 項目 | 基準・例 |
|---|---|
| 月の目安売上 | 月5万円(年間売上約60万円) |
| 例:経費 | 材料等で年間約15万円→所得約45万円 |
| 配偶者控除の目安(改正後) | 合計所得金額が62万円以下 |
記録と証憑が最も大切になる理由
税の判定においては、どの費用を経費として認めるかが大きなポイントです。ハンドメイド制作に使った布や金具、梱包材、販売サイトの手数料、振込手数料などは経費に当たる可能性があります。自宅の光熱費や通信費を事業に使っている場合には、その事業用に相当する割合を合理的に按分して計上しなければなりません。
そのため、日々のレシートや領収書、売上の記録を残しておくことは、税務上だけでなく家計管理の面でも有用です。年末になってから慌てて整理するのではなく、取引の都度記録を付け、経費を明確にしておくことで税負担の見通しが立てやすくなります。
働き方と家計設計への影響
配偶者控除の対象から外れると、世帯全体の税負担が変わるだけでなく、配偶者自身の社会保険の加入状況にも影響が出る場合があります。ハンドメイド販売が継続的であれば、将来的に所得が増える可能性もあるため、短期的な見通しだけでなく中長期での収支予測を立てることが重要です。
とりわけ、以下の点を早めに整理しておくと安心です。
- 年間の売上見込みと想定経費を算出する
- 経費として計上できる項目を洗い出し、領収書を保管する
- 年末時点での所得見込みを早めに確認し、必要なら税理士などに相談する
現実的な対応と相談窓口
実務上は、税務署や市区町村の相談窓口、あるいは確定申告を扱う税理士など専門家に相談することが有効です。また、販売プラットフォームの利用履歴や入金明細は証憑として役立ちます。重要なのは、売上の数字だけで判断せず、必要経費を差し引いた後の実際の所得を基準に考える習慣をつけることです。
家計に関わる判断は、収入の増減だけでなく制度の仕組みを理解してこそ最適な選択ができます。副業や副収入が当たり前になってきた今、日々の記録と早めの情報整理が家計の安定につながります。