学校菜園で始まった「川口根深」復活の試み
福山市立川口東小学校(東川口町)で、地元特産のネギ「川口根深(ねぶか)」の復活に向けた取り組みが始まった。地域住民と児童が連携して今春から学校菜園で栽培をスタートさせており、品種を知る高齢の生産者と直接触れ合いながら育てることで、栽培技術の継承と地域愛着の醸成を目指している。
川口根深は香りが良く甘味が強いのが特徴で、江戸時代に京都の九条ネギが移植されたのが起源とされる。かつては川口東学区を中心に広く栽培されていたが、都市化や離農・高齢化の進行で生産者が減少。現在、同学区で栽培を続けている農家は今川賢二さん(83歳)だけになっているという。
住民グループと児童が連携、実地で学ぶ場に
地域の交流拠点「ゆうゆうサロン」で野菜作りに取り組んでいた40~80代の住民7人が中心となり、川口東小の「畑づくりサポーター」を結成。3月に児童とともに学校菜園の整備を行い、今川さんが提供した苗を植えた。学校菜園では既にインゲンやサツマイモなどが育てられており、川口根深は長さ約5メートル、6列の根深畑に約100株以上が成長している。
栽培の世話は3年生57人が担当し、6月23日にはサポーターが来校して川口根深の特徴や栽培方法、地域の歴史を説明した。児童からは「水やりのペースは」「おいしい食べ方は」「種はどこにあるの?」といった具体的な質問が相次ぎ、サポーター側は土の管理や調理例を伝えた。
- 栽培管理のポイント:頻繁な水やりではなく土の状態を見て行うこと
- 伝統的な食べ方:すき焼き、天ぷら、焼いて味噌をつけるなど
- 今後の管理工程:太くするための植え替えを8月下旬に予定、収穫は12月ごろ見込み
「昔は町の至る所が根深畑だったのに、幻になりそうで寂しい。みんなが大人になった時、どこかに植えてほしい」――畑づくりサポーター
今川さんは先祖代々このネギを手がけてきたことを明かし、「これからもこつこつと作り、地域の伝統を残したい」と述べている。児童の一人は「今は今川さんだけと知ってびっくりしたし、1人でここまで続けてきてすごいな、と思う。ぼくたちも大切に育てていきたい」と話した。
地域への効果と今後の展望
この取り組みは単に作物を育てるだけでなく、地域資源の保存と住民間の連携、児童の食育と郷土理解を同時に進める点で意義がある。以下のような効果が期待される。
| 期待される効果 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 伝統の継承 | 高齢の生産者が持つ栽培ノウハウを次世代へ伝える |
| 地域の結びつき強化 | 住民と学校が協働することで交流の機会が増える |
| 食育・郷土学習 | 児童が食材の由来や調理法を学ぶことで地元理解が深まる |
地域の生産基盤が回復すれば、地産地消の取り組みや地域ブランド化の可能性も見えてくる。だが現実には生産者の高齢化や耕作放棄地の増加といった課題が残るため、今回の学校菜園からどのようにして実地の生産へつなげるか、継続的な支援体制をどう確保するかが今後の焦点となる。
児童が大人になったときに再び地域で栽培する選択肢を持てるように、苗や種の保存、栽培マニュアルの整備、地域イベントでの販路づくりなど具体的な取り組みを段階的に進める必要がある。今回、学校で育てている株の一部を地域の学びの場で公開するなどして、住民の関心を高めることも有効だろう。
今回のプロジェクトは、地域資源を守るために住民が主体的に動き、学校という場を活用して次世代へ技術と記憶を伝えるモデルケースになり得る。福山市内の他地域でも同様の品種や伝統作物を巡る危機感はあり、成功例が共有されれば波及効果が期待できる。
今後の作業予定は、苗の植え替え(8月下旬予定)や12月ごろの収穫といった季節ごとの工程が控えている。見守る住民や教職員、関係者は、その時期に合わせた公開や収穫体験を通じて、さらに多くの住民を巻き込む方針だ。
福山の「幻のネギ」を守る試みは、地域の記憶を未来へつなぐ取り組みとして注目に値する。児童と高齢の生産者、住民が一緒になって育てる菜園から、どのような変化が生まれるか。今後の成長と展開を地域で見守りたい。