政治

米上院の暗号資産法案、可決観測と政治的停滞が並走

米国の暗号資産制度を定めるCLARITY法案を巡り、上院での早期可決観測と日程未確定の現実が交錯。利益相反条項を巡る与野党の対立が焦点となり、60票の壁が最終局面入りを阻む。

米上院の暗号資産法案、可決観測と政治的停滞が並走
©イラスト AI生成 :長瀬 麻里/プレスリリースジェーピー

米国の暗号資産(仮想通貨)規制の枠組みを定めるCLARITY法案を巡り、上院審議の行方が読みづらくなっている。共和党の下院議員が「来週」の可決を示唆して市場の期待を刺激する一方、公式スケジュールや水面下の交渉状況は最終局面入りを裏付けていない。制度論はおおむね収束しつつあるものの、与野党の利益相反・倫理規定を巡る対立がボトルネックとなっている。

「来週可決」発言と公式日程の乖離

共和党のブライアン・スティール下院議員は7月17日、テレビ番組で上院可決への楽観を明言した。発言は暗号資産コミュニティで影響力を持つ関係者により拡散され、市場の強気ムードを強めた。しかし、7月18日時点の上院銀行委員会の公的スケジュールには、同法案に関する公聴会や採決の予定は掲載がない

来週、米国上院でこの法案を通せるだろうと楽観している

根拠となる実務日程が見えないなか、強気なトーンと議会手続きの現実が乖離しているのが現在地だ。

立法プロセスの現在地と票読み

法案は2025年7月17日に下院を294対134の賛成多数で通過。さらに2026年5月14日、上院銀行委員会を15対9で可決し、本会議審議入りは6月1日から組み込まれている。ただし、本会議での最終採決は未実施で、当初目標とされた7月4日までの成立は見送られた。

段階日付結果
下院本会議2025/07/17294-134で可決
上院銀行委2026/05/1415-9で可決
上院本会議2026/06/01〜審議日程に組込み、採決未了

上院で通常手続きを進めるには60票が必要だ。共和党は53議席だが、少なくとも2名が反対と見込まれ、民主党から約7名の賛同を得る算段が不可欠となる。票読みの難しさが、スケジュール確定を阻む要因となっている。

争点は制度から政治へ──利益相反条項が焦点

制度設計の技術論よりも、政治的な倫理・利益相反を巡る調整が最大の壁となっている。民主党は、トランプ大統領や家族、議員が暗号資産ビジネスで利益を得る可能性を問題視し、行政府関係者を含む保有・取引の禁止条項の追加を主張している。トランプ氏の財務開示では、再任後の暗号資産関連収益が14億ドルに達するとされ、透明性要求が強まった。

「市場構造法を整備するのであれば、政治家自身の利益相反も同時に整理すべきだ」

エリザベス・ウォーレン上院議員は7月16日、暗号資産関連資産の最新開示を求める書簡を提出。民主党側は法案審議と倫理規範の一体的整理を崩していない。他方、共和党は早期の制度化を重視し、下院金融サービス委員会が7月17日ニューヨークで現地公聴会を開催するなど、成立機運の演出を続けている。

制度面は収束へ──監督枠組みの方向性

行政当局の姿勢はおおむね一致している。証券取引委員会(SEC)は暗号資産専門の「Crypto Task Force」を設置し、包括的ルール策定を進める。商品先物取引委員会(CFTC)も市場構造法の必要性を公に支持。財務長官のスコット・ベッセント氏も法案成立を促しており、政策当局内では「市場構造法は必要」との認識が共有されつつある。

法案が成立すれば、XRPなど複数の主要暗号資産が「商品」として明確に位置づけられる。XRPはすでに規制上の整理が進んでいるが、立法化により将来政権でも覆しにくい恒久的な法的地位を得ることになる。市場では数兆ドル規模の資金流入期待が語られており、当該資産にとって未実現の主要カタリストとみる見方も出ている。

シナリオと見通し──夏季休会前は2割

サンフランシスコの市場アナリスト、デリア・ロホ氏は、8月7日開始の夏季休会前に上院を通過する確率を約20%と推定。秋以降、修正を経て成立する公算を約50%、対立長期化で見送りとなる展開を約30%とみる。短期は政治の影響が大きい一方、政府内の議論は「禁止」から「制度への組込み」へ舵を切っており、制度立法そのものが消える可能性は低いと分析する。

  • 上院での可決観測は強まるが、公式日程は未確定
  • 鍵は60票到達と利益相反条項の与野党合意
  • 成立時はXRPなどの資産分類が法的に恒久化

何が最終合意を左右するか

短期的な市場心理を左右するのは、上院本会議での採決日程と、倫理規定の落としどころだ。共和党が主張する迅速な制度化と、民主党が求める保有・取引制限の線引きが一致すれば、可決までの道筋は一挙に開ける。逆に、条項の文言調整が難航すれば、休会入りで先送りとなり、秋以降の再調整に重心が移る。

制度の骨格は既に見え、当局も必要性を共有している。残されたのは、国家の市場設計と政治倫理の折り合いをどの水準で付けるかという、政治の決断である。

長瀬 麻里
長瀬 AI編集 政治担当デスク オンライン

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