全国舞台で評価、DXと多職種連携で“看護に戻る”職場づくり
2026年7月10日に東京ビッグサイトで開催された「ナースまつり2026」内の「日本一働きやすい病院アワード2026」本選で、近森病院(高知市/社会医療法人近森会)が大賞を受賞した。全国からエントリーした医療機関の中で、同院は看護職員の働きやすさ改善に向けた取り組みを示し、審査員と視聴者投票で高い評価を得た。
同アワードは、看護職の離職意向が高い現状を踏まえ、現場でワクワクして働ける職場を示す優れた事例を共有することを目的としている。近森病院の発表テーマは「看護に戻れた私たち ─ DXとチームの力で取り戻した『看護の喜び』」。発表内容によれば、長年課題となっていた情報の分散を解消するために、GEコマンドセンターとスマートフォンを活用して情報の一元化を進めたことが中核にある。
「探す・待つ」から解放され、本来の看護に集中できる環境を実現した。
この情報一元化は、院内に以前から根付く病棟常駐型チーム医療と組み合わせることで効果を高めた。病院では「誰の仕事か」ではなく「患者のために誰がやるか」を問い続ける多職種協働体制を整備し、RRT(迅速対応チーム)や心不全チーム、リエゾンチームが24時間体制で支えることで、現場の心理的安全性が向上したとされる。
アワード発表では、こうした取り組みの成果として始業前残業の削減や、業務から看護へのパラダイムシフトが進んだ点が示された。また、一度離職した看護師が「やっぱりここで働きたい」と戻ってくるケースがあることを紹介し、人材確保・定着面での手応えをアピールした。
高知県内への波及と現場への示唆
高知県内の医療現場は慢性的な人手不足や長時間労働の課題に直面しており、県内病院における人材確保は重要な地域課題である。今回の受賞は、地域の他施設にとって有効な改善モデルを示す意味を持つ。とくに次の点が高知県内の医療関係者や住民にとって注目される。
- 業務負担の軽減:情報の一元化により看護師が情報収集の時間を削減できれば、直接ケアの時間確保につながる。
- 定着・復職の促進:柔軟な職場環境とチーム支援が整えば、離職者の復職や離職率の低下が期待できる。
- 多職種連携の定着:看護師だけでなく医師やリハビリ、薬剤部などの職種間での役割分担が明確化されることで、院内全体の効率化が進む。
高知県内の中小病院や診療所で全てを即座に導入することは難しいが、情報共有の改善やチームでの役割分担は段階的に取り組める要素が多い。県保健医療行政や医師会・看護協会は、今回の受賞事例を踏まえた情報共有や働き方改善の支援策を検討する余地がある。
今回の受賞概要とほかの入賞施設
本選には予選を勝ち上がった6施設が出場し、特別審査員、一般看護師審査員50名、視聴者投票で審査が行われた。近森病院のほか、福島県のいわき湯本病院がワクワク賞とベストプレゼン賞のダブル受賞を果たしている。両施設とも2025年大会に続いてのリベンジ受賞となった。
| 賞 | 医療機関 | 主な評価ポイント |
|---|---|---|
| 大賞 | 近森病院(高知市) | 情報の一元化、病棟常駐型チーム医療、始業前残業の削減 |
| ワクワク賞・ベストプレゼン賞 | いわき湯本病院(福島県) | 福利厚生の充実、DX推進、患者に寄り添う時間の確保 |
住民への影響と実用的な情報
今回の受賞は、高知市および周辺地域の患者と家族にとっても間接的な恩恵が期待できる。看護の質が高まり、看護師の疲弊が抑えられれば、日常の入院ケアや退院支援、在宅医療との連携などで良好なサービスが維持されやすくなる。
住民が注意すべき点や利用時の参考情報は以下のとおりだ。
- 急性期病院の機能強化は転院先の選択肢に影響するため、かかりつけ医と連携して入院先を相談すること。
- 看護師の業務改善が進むことで、病院窓口や問い合わせ対応の仕組みが変わる可能性があるため、利用する病院の最新の受診・面会ルールを確認すること。
- 地域での人材確保策や職場環境改善は徐々に波及するため、県や市の保健医療施策の動きを注視すること。
今回の発表はイベント主催のナースまつり実行委員会(事務局:マインヘルスケア株式会社)が公表したもので、イベントは2026年7月8日から10日にかけて東京ビッグサイトで開催された。入賞理由や取り組みの詳細は、今後同病院や主催者が公表する資料を通じてさらに詳しく共有される見込みだ。
高知県内の医療現場が抱える課題は依然として多いが、今回の受賞は地域の実践例として注目に値する。働きやすさを改善する取り組みの広がりが、県内の医療サービスの安定と質の向上につながることが期待される。