テクノロジー

保育現場の採用にAI導入 24時間対応で潜在保育士の壁に挑む

保育園ポポラーが運営する採用サイトに、マイキャリアの「worktalk」を利用したAI採用担当者を導入。24時間対応で求職者の疑問を即時解消し、採用機会の拡大と職場理解の促進を目指す取り組みが国内で初めて開始された。

保育現場の採用にAI導入 24時間対応で潜在保育士の壁に挑む
©イラスト AI生成 :編集部/プレスリリースジェーピー

保育園ポポラー、採用サイトにAI担当導入へ

保育園ポポラーを運営する株式会社タスク・フォースは、2026年6月22日から、マイキャリア株式会社が提供する採用支援サービス「worktalk(ワークトーク)」を利用したAI採用担当者を自社の保育士採用サイトに導入した。民間保育園としては国内初の事例とされる(マイキャリア社の調べ)。

導入の狙いは、深刻化する保育士不足の中で発生している採用機会の損失と、応募者が必要な情報を必要なタイミングで得られないという問題を解消することにある。AIは早朝・深夜・休日を含めて24時間リアルタイムに対応し、求職者の疑問にインタラクティブに回答することで応募機会の最大化を図るという。

背景——採用プロセスにおける“タイミングのズレ”

堅調とは言えない保育業界の人材需給を示す指標として、子ども家庭庁によると、保育士の有効求人倍率は全国平均で約2.7倍(2025年)に達している。記事は、従来指摘される「給与水準」「労働環境」に加え、採用現場での対応遅延が応募離れを招くことを問題として挙げる。保育園の採用担当者は日中の保育業務と並行して対応するため、電話が繋がらない、メールの返信が遅いといったケースが起きやすく、特に夜間や早朝に就職活動をする潜在的な求職者が取りこぼされやすいと指摘されている。

AI採用担当者の機能と目的

公表された導入説明によれば、AI採用担当者は園の理念や勤務実態、制度に関する基本的な質問から、具体的な働き方や職場の雰囲気を尋ねるような質問まで対応可能で、必要に応じて動画による回答も行う。これにより求職者は入職前に職場理解を深められ、ミスマッチや早期離職の抑制が期待されるという。

  • 24時間応対:深夜・早朝・休日でもリアルタイムに情報提供
  • 具体的な勤務実態の提示:人事制度や一年目の働き方等に対応
  • インタラクティブな情報提供:テキストだけでなく動画による説明も可能

統計的な位置づけと対象層

記事は、保育士登録者数と従事者数の差異を示し、潜在保育士の存在を強調している。こども家庭庁の資料によれば、保育士登録者は179万人である一方、実際に従事しているのは約68万人にとどまり、資格を持ちながら現場で働いていない潜在保育士は約111万人存在するとされる。こうした層は待遇面だけでなく、園の雰囲気や人間関係といった「ソフト面」への不安から復帰をためらうケースが多いと説明している。

期待される効果と現実的な課題

AI導入によって期待される効果は、応募機会の拡大と応募者の早期段階での職場理解の促進だ。24時間対応により、時間的制約で問い合わせが滞っていた層にリーチできる可能性がある。また、求職者が自分に合った園を選びやすくなることで、入職後のミスマッチを減らし、早期退職の抑止につながることが期待される。

一方で、実運用に際しては幾つかの課題が想定される。AIが提供する情報の正確性・最新性の担保、個人情報や応募者データの取り扱い、そしてAIだけで対応しきれない複雑な相談にどのように人間が介在するかといったオペレーション面の整備が必要だ。加えて、AIの回答によって求職者の期待が過度に高まり、そのギャップが離職に結びつくリスクもあるため、情報の提示方法やトーンの調整が重要となる。

導入の意義と政策的観点

国は令和8年度に保育士の処遇改善・賃上げに向けた予算を配分するなど、保育士確保と処遇改善を進めている。こうした中で、AIによる採用支援は直接的な賃金改善には繋がらないが、求人情報の提供効率化や職場理解の促進といった点で補完的な役割を果たす可能性がある。特に、待遇改善が進んでも現場復帰をためらう潜在保育士に対して、園ごとの“ソフト面”情報を充実させることは有効なアプローチとなる。

指標数値(出典:記事)
保育士の有効求人倍率(2025年)約2.7倍
保育士登録者数179万人
従事者数約68万人
潜在保育士数約111万人

今後の注目点

今回の導入は一保育園グループによる試みであるが、広く民間や公的施設に波及するかどうかが注目される。導入効果を定量的に評価し、どの程度応募率の向上やミスマッチの低下に寄与したかを把握することが、次の展開を左右するだろう。また、AIの活用が個別園の魅力を正しく伝えられるか、人の手によるフォローとどのように連携させるかといった運用面の設計も重要だ。

保育サービスの提供現場は子どもや保護者の安全・福祉に直結する分野であるため、採用に関わる情報の透明化と信頼性の確保は不可欠だ。AIを活用した新たな採用手法が、現場の実情に即した形で成熟すれば、人材確保の一助となる可能性がある一方で、技術導入の副作用を慎重に検証する姿勢も求められる。

保育園ポポラーとマイキャリアは今後、導入効果や運用上の課題をどのように公表し改善していくのか。保育業界全体の人材確保に向けて、技術と現場運営の両面からの検証が続く。

編集部
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