調査が示した数字——平均と中央値の格差
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」を基に、70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額の分布が明らかになりました。調査では、金融資産の平均は2416万円、より実態を表す中央値は1178万円で、両者の差は1238万円に上ります。平均値が高く出る背景には、資産を多く保有する一部世帯の影響があることが示唆されます。
こうした統計は、見かけ上の「平均」が必ずしも多数派の暮らしを反映していないことを端的に示しています。中央値が示すのは「多くの世帯のほぼ中央に位置する実態」であり、実感に近い指標と言えるでしょう。
分布の特徴と深刻な層の存在
分布を見ると、3000万円以上の資産を保有する世帯が25.2%を占める一方で、金融資産を保有していない世帯が10.9%存在します。また、資産保有額の細分では1000万円〜1500万円未満が11.1%、2000万円〜3000万円未満が12.3%と、中間層も一定数を占めています。一方で100万円未満や200万円未満といった非常に少額の層もあり、世帯ごとの格差は大きく分かれています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 平均(70歳代・二人以上) | 2416万円 |
| 中央値(70歳代・二人以上) | 1178万円 |
| 3000万円以上の割合 | 25.2% |
| 貯蓄ゼロの割合 | 10.9% |
年金生活だけで暮らす世帯の課題
記事では年金生活の夫婦が「毎月の家計で赤字になる」という指摘も含められており、貯蓄の多寡にかかわらず、定期的な収入(年金)だけで安心して暮らせない世帯が存在する点が問題です。貯蓄が少ない、またはない世帯は、突発的な医療費や介護費、住居の修繕などに対応する余裕が乏しく、生活の脆弱性が高まります。
一方で資産を多く持つ世帯は相対的に余裕がありますが、金融資産の構成(現金預金か株式等か)や取り崩し方によって将来の不安は残ります。したがって、統計が示す格差は生活の安全網に直結します。
具体的にできる備えと選択肢
調査結果を踏まえ、現実的に取り得る対応策を整理します。個々の事情で最適解は異なりますが、以下は検討に値する項目です。
- 公的給付や各種手当の受給漏れチェック:申請が必要な支援制度が使えていない場合がある。
- 家計の可視化と固定費見直し:支出構造を把握し、削減余地を探る。
- 資産の流動性確保:いざというときに取り崩しやすい形(普通預金など)を一部確保する。
- 地域の支え合い・福祉サービス活用:地域包括支援センターなど相談窓口の活用。
- 相続・資産承継の早めの整理:家族と話し合い、トラブルを避ける準備を。
政策と社会の視点——何が問われているか
今回のデータは、単純な平均額だけを見て安心することの危うさを示しています。政策面では、貯蓄ゼロや低貯蓄の高齢世帯に対する支援の手厚さ、年金制度の持続性と給付水準、さらには高齢期の生活保障を補う地域・民間サービスの充実が改めて問われます。全国規模での議論としては、分配の偏りを是正しつつ、個々のライフコースに沿った支援をどう仕組化するかが今後の焦点になるでしょう。
また、個人レベルでは早めの家計対策と地域資源の活用、家族間のコミュニケーションが不可欠です。調査が示す数字を現実の暮らしに結びつけ、実効性のある対策を各世代で考える契機としたいところです。
生活に直結する課題として、数値が示す「格差」と「脆弱な層」の存在を広く伝え、具体的な備えや地域・制度の改善を促すことが求められます。