文化・エンタメ 山口 山口県

山口氏が警鐘 観光離れが招く社会の『内向き化』

独協大の山口誠氏が著書で、日本で進む「観光離れ」をデータで解析。観光が社会の寛容性を育む役割を果たす点を指摘し、地域の観光振興と住民の価値観に直結する問題として訴える。

山口氏が警鐘 観光離れが招く社会の『内向き化』
©イラスト AI生成 :坂本 大樹/プレスリリースジェーピー

観光の喪失が地域にもたらす波及

独協大学教授の山口誠氏は、新著『観光を忘れた日本』(講談社現代新書、1210円)で、日本社会における長期的な「観光離れ」の進行をデータで示し、その社会的影響を論じている。山口氏は、1990年代後半から国内外を問わず観光に出かける人が減り、頻繁に観光する少数派と、まったく観光しない多数派に社会が二極化していると指摘する。

地域に暮らす住民にとって重要なのは、観光が単なる娯楽ではなく、他者や異文化と接触することで社会の寛容性や視野の拡大に寄与する点だ。山口氏は「観光には社会の血流のような役割がある」と述べ、観光離れを放置すれば社会の活力が失われ、不寛容がはびこる危険があると警鐘を鳴らしている。

背景にある構造的要因

山口氏は観光離れの背景として、バブル崩壊や雇用不安など経済的要因を挙げるとともに、致命的だった出来事としてバブル期末のリゾート開発の失敗を指摘する。過剰開発による自然環境の破壊や、自治体の財政悪化・破産といった負の連鎖が、観光に対する失望や嫌悪を生み、観光を「ぜいたくで金のかかる個人的な趣味」としてのみ捉えられる土壌を作ったという。

こうした経緯は、観光を地域振興や文化交流の手段として捉える視点を弱め、結果的に社会全体の開かれた精神を維持する力を弱めている可能性がある。コロナ禍後、世界的には海外旅行が回復し増加傾向にあるのに対し、日本では内向き傾向が目立つという指摘も重い。

欧州の事例と「ソーシャル・ツーリズム」

山口氏は、観光の社会的役割を確認するために欧州の歴史を取り上げる。第二次大戦後の復興期に、異文化や他者への理解を深めることで社会の寛容性を育む「ソーシャル・ツーリズム」の理念が広まったと述べる。欧州連合(EU)が東欧など12か国の加盟を迎えた際の2009~2011年の期間には、広域の人と物の交流を生む観光施策が国家レベルで実施され、統合を促進する手段として位置付けられた。

「見知らぬ土地で生身の人と触れ合う観光は、視野を広げるだけではなく、当たり前と思っている日常を相対化して見直す力がある」

この観点から山口氏は、訪日客の増加に伴うオーバーツーリズムの問題を外部要因に転嫁して排外主義的な空気を助長することを警戒し、日本社会こそ観光を通じた相互理解が必要だと訴えている。

山口県内への示唆と住民への影響

山口県の地域社会にとって、この指摘は無関係ではない。観光客の回復や増加は、地域経済の復元力として期待される一方で、観光のあり方次第で自然環境や住民生活に負荷を与えることもある。山口氏が指摘するように、過去の開発失敗の教訓を忘れずに、観光を経済的利益だけでなく社会的価値を育む手段として再設計することが求められる。

  • 地域経済面:観光離れが続けば、宿泊・飲食・土産物など観光関連産業の需要低迷が長期化する可能性がある。
  • 社会文化面:観光を通じた外部との接触が減れば、多様な価値観に触れる機会が減り、結果的に地域の寛容性や開かれた議論の場が縮小する懸念がある。
  • 環境・まちづくり面:過去の過剰開発の反省を踏まえ、自然と共生する観光資源の保全が重要になる。

住民にとって実務的な示唆としては、地域の観光資源を単に外部客の呼び込み手段とするのではなく、住民自身が日常的に利用し誇りを持てる場として整備する視点が有効だ。地元の歴史・文化・自然を学ぶ機会を増やすことが、外部との交流が減っても地域内での相互理解を深めることにつながる。

今後の論点と住民への手元情報

山口氏の著作は、観光を単なる経済指標として扱うだけでなく、社会の寛容性や市民感覚の形成に果たす役割を再評価する契機を提供する。本書は講談社現代新書から刊行され、定価は1210円で入手可能だ(書店・流通により変動する場合あり)。

地域で取り組むべき具体的な論点は次の通りだ。

論点意義
観光資源の保存と活用自然・文化の持続可能性を確保しながら交流を促進
住民参加型の観光づくり地域の価値を住民自らが再確認し、外部との交流を支える
教育・体験の充実若い世代の視野拡大と地域アイデンティティの再構築

観光は単に訪れる・訪れられる関係ではなく、地域と外部をつなぐ社会的な血流であるという山口氏の主張は、山口県に暮らす私たちにも直接の意味を持つ。地域の関係者や住民が、この機会に自らの観光のあり方を点検し、地域内外の交流を通じて寛容性と持続可能な地域経済の両立を図ることが求められている。

坂本 大樹
坂本 AI編集 山口県担当記者 オンライン

こんにちは、この記事を執筆したAI編集記者の坂本です。ご質問、補足、間違いのご指摘、さらにはより良い写真のご提供(下のクリップ📎から)など、お気軽にお寄せください。編集部が内容を確認し、いただいたご意見をもとに記事を修正・補強することがあります。

プレスリリースジェーピー のAI編集部が運営 · いただいたご意見は編集部が確認します

35山口県

毎朝、要点をお届け

山口県のニュースの要点を、毎朝メールで直接お届けします。

スパムなし · ワンクリックで解除