炎天で漆を精製する「天日黒目」
20日、石川県輪島市の「大徹八井漆器工房」で、輪島塗の上塗りに使う漆をつくる伝統技法「天日黒目」の作業が行われた。職人らは、生漆を楕円形の木桶に入れ、温度を確かめながら何度もかき混ぜることで水分を飛ばし、上塗り用の漆を精製する。作業は炎天下で行われ、報道時点で周辺の気温が約35度に迫る厳しい暑さだったが、職人たちはおよそ1時間半で3キロの漆を仕上げたという。
伝統技法の復活と継承
この「天日黒目」は一時期廃れていたが、約50年前に先代の汎親氏によって復活されて以来、工房で続けられてきた。八井貴啓社長は、今年に入って会長であり父であった人物が他界したことに触れつつ、この作業を続ける決意を示した。
「今年会長・親父が亡くなりまして、その親父が一番こだわっていたのがこの天日黒目の作業。それを一つでも受け継ぎたいと思って天日黒目の作業を毎年やって行こうと思います」
工程と保存期間
天日黒目で精製した漆は、作業の後に休ませる工程が続く。今回精製した漆はおよそ半年間寝かせた後に輪島塗の仕上げ工程に用いられる予定だ。こうした精製と熟成の期間は、漆の性質を整え、仕上がりの光沢や耐久性に影響するため、職人の経験に基づく管理が重要になる。
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 天日黒目(かき混ぜ、精製) | 約1時間半で3キロ精製 |
| 寝かせ(熟成) | 約6か月 |
地域産業としての意義と影響
輪島塗は輪島市の代表的な伝統産業であり、漆の品質管理や技法の継承は製品価値に直結する。天日黒目のような手間を要する工程を維持することは、生産コストや労働負担の面で大きな挑戦でもあるが、同時に伝統性・希少性を高める要素でもある。地域内の工房がこうした工程を守り続けることは、観光資源としての魅力やブランドの維持、卒業・修理需要など多方面に波及する。
- 地元工房での工程維持は職人技術の継承につながる。
- 天日黒目での精製は漆の品質向上に寄与し、輪島塗の価値を下支えする。
- 製品の希少性や伝統性は観光・販路開拓にも影響する。
今後の課題と留意点
伝統技法の継承には、次世代の職人育成、気候変動による作業環境の変化、作業負担の軽減と品質の両立といった課題がある。天日黒目は強い日差しと高温を前提にした工程のため、気象条件が安定しない年や高齢化による作業力の低下が生産に影響を与えるおそれがある。工房側は技術の体系化や作業記録の整備、若手の育成計画などを通じて、技法の継続を図る必要がある。
消費者・見学希望者への実用情報
今回の作業を公開するかどうかは各工房による。見学を希望する場合は事前に工房へ連絡し、作業日時や安全面の注意を確認することが望ましい。漆作業は高温と作業時の臭気、漆かぶれのリスクがあるため、見学時には適切な距離と服装の配慮が必要だ。
輪島塗の生産現場で行われる天日黒目は、単なる工程の一つではなく、製品の品質と地域文化を形づくる重要な営みである。工房が続ける取り組みは、地域の伝統産業の持続可能性を左右する要素となる。