知事の節水要請に農家が反論、収穫期直前の水管理で緊張が続く
愛知県を巡る水問題が地域の農業現場で波紋を広げている。ダムの渇水が深刻化する中、8月25日の会見で大村秀章知事が「水田は不需要期になり、水がいらなくなる」と発言したことに対し、豊川用水を利用するコメ農家から戸惑いと反発の声が上がった。豊橋市内の圃場で取材した農家は、収穫を約1か月後に控えた現状を説明し、継続的な湛水管理の必要性を訴えている。
取材に応じたある農家は、花の交配時期に当たるため水を張り続けることが不可欠だと語った。水が不足すると「乳白米」と呼ばれる品質低下を招き、等級や収入に直接響くという。現場での管理は品種や植え付け時期によって段階的に異なるため、一律の節水指示では対応しきれない実情がある。
「交配中です。これから実になる。そのときに水がなくなると白い米になってしまう」
こうした声に対し、県の見解は渇水緩和のため節水を呼びかけるという趣旨だが、農業用水と工業用水など用途ごとの事情を踏まえた緻密な調整が求められる。現場の農家は「工業用水とは違う。農業では年間を通じて安定した供給が必要だ」としている。
地域への影響と今後の懸念
農家の懸念は生産だけにとどまらない。米価の下落も重なり、収入面での打撃が拡大する恐れがある。JAあいち経済連は2026年産のコシヒカリの概算金を60キロ当たり1万6800円に設定しており、前年の2万8500円から大幅に下落している。生産量や品質が落ちれば、さらに農家経営を圧迫する可能性がある。
また、夜間の湛水は高温障害を抑える効果があり、気温上昇の続く夏期には重要な対策とされる。節水が長期化すると、品質低下や歩留まり低下、さらには地域の食料供給の安定性に影響を与えかねない。
関係者の整理と実務的対応
現時点で確認できる事実は次の通りだ:
- ダムの渇水が続き、県は節水を呼びかけている。
- 知事は一部の時期で水田の需要が低下すると説明したが、農家は収穫期を控えた現在でも水が必要と反論している。
- 米価は前年に比べて下落しており、生産上の影響は経済的打撃に直結する。
行政側と農業関係者の間で詰めるべき点は明確だ。まずは、品種別・作期別の細やかな用水配分の検討と、その基準の共有が必要になる。さらに、緊急時の優先配分ルールや、節水による影響を補填するための財政支援策の可否も焦点となる。県や水利組合は実需を踏まえたデータの提示と、現場の声を反映した運用を示すべきだ。
住民・農家が取るべき具体的行動
影響を受ける地域住民・農家にとって有益な実務的情報は次のとおりだ。
- 農業関係者は作期・品種ごとの湛水管理記録を整理し、自治体や水利組合との協議で提示すること。
- 被害が出た場合に備え、写真や時系列の管理記録を保存しておくこと(保険や補償申請時に必要)。
- 地域住民は県や市町の発表を定期的に確認し、用水制限や支援制度の情報を早めに把握すること。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| コシヒカリ概算金(60kg) | 1万6800円 |
| 前年(60kg) | 2万8500円 |
現場の実情を尊重した対応が取られなければ、単なる節水呼びかけだけでは生産現場の不安は解消しない。農家と行政が対話を深め、具体的な運用基準と補償の有無を示すことで初めて地域の理解と協力を得られるだろう。今後、県がどのような詳細ルールを示すか、農業関係者がそれをどのように受け止めるかが焦点となる。
池田 修(プレスリリースジェーピー・愛知県担当記者)