県が最新の被害想定を公表
栃木県は8月4日、県庁直下や周辺断層での地震発生を想定した被害予測の改定結果を公表した。発表では、建物の耐震化の進展により前回調査(2014年)に比べ被害は縮小するとの見通しが示された一方、最大規模を想定した県庁直下のシナリオでは死者が3692人、負傷者が1万8965人、建物の全壊・全焼が7万968棟、資産被害が8兆9426億円に上るとされた。
想定の内訳と比較
今回の想定は、マグニチュード(M)7.3の県庁直下型を最大被害ケースとして扱っている。県庁直下の発生可能性については、宇都宮市周辺に活断層の確認がないため県危機管理課は「可能性は低い」としているが、自治体の防災対策を検討するモデルケースとして位置付けられている。
| 想定項目 | 県庁直下(M7.3) | 最悪断層例(深谷・綾瀬川帯等) |
|---|---|---|
| 死者 | 3692人 | 374人 |
| 負傷者 | 1万8965人 | 4039人 |
| 全壊・全焼棟数 | 7万968棟 | 1万228棟 |
| 資産被害 | 8兆9426億円 | 2兆8968億円 |
耐震化の進展と効果
県は前回調査以降、住宅や公共施設の耐震化が進み、耐震化率は約71%から92%へと大きく改善したと説明している。県の概算では、この耐震化の進展と家具の転倒防止や感震ブレーカーの普及状況を踏まえ、建物被害や死者数が約3割減る見込みだという。
- 耐震化率を仮に100%にできれば建物被害は約5分の1、死者数は約6分の1に減らせる。
- 家具転倒防止を100%にすれば、転倒による死者を3分の1に減らせる(現状実施率27.7%)。
- 感震ブレーカーを100%導入すれば、死者・火災を半分に減らせる(現状設置率20.6%)。
県の姿勢と市町への対応要請
県危機管理課は想定結果を単に公表するだけでなく、ハザードマップなどに反映して市町村へ提供するとしている。今回の想定は地域ごとの特性に応じた対策立案の材料と位置付けられ、住民には自宅周辺のハザード情報を確認し、耐震補強や家具の固定、避難場所の再確認など具体的な備えを進めるよう求めている。
「発災の確率は低いが、住居がある地域の特性に合わせた対策をしてほしい」
住民生活への具体的影響と必要な行動
今回の想定は県全体を対象にした大規模な数値であり、住民一人一人のリスクは居住地域や建物種別で差が出る。例えば、木造住宅の耐震性が低い地域や老朽化した共同住宅に居住する世帯では、建物被害と負傷リスクが相対的に高まる可能性がある。自治体は高齢者や障がい者の避難支援計画の見直し、避難所の耐震性確認、在宅避難が必要な住民への物資備蓄支援などを強化する必要がある。
個人が取るべき具体策は次の通りだ。
- 自宅の耐震診断や補強工事の検討・実施。
- 家具の固定、普段からの避難経路と緊急持ち出し品の確認。
- 地域のハザードマップや避難所の場所を家族で共有。
- 感震ブレーカー等の導入検討や、自治体の補助制度利用の確認。
今後の課題と展望
県の想定は、耐震化率の向上が被害軽減に有効であることを改めて示したが、現状では完了していない対策も多い。特に感震ブレーカーの普及率や家具の固定実施率に改善余地がある。自治体と住民が連携し、費用負担を伴う耐震補強や設備導入に対する支援策を拡充することが、被害をさらに減らす鍵となる。
今回の想定結果は、確率が低い事象も含めた“もしも”の備えを促すものであり、県は今後、想定を活用して市町村ごとの防災計画を見直すとともに、住民向けの周知・支援策を進めると説明している。地域の実情に合わせた具体的な対策の実施が、被害軽減と県民の安全確保につながる。