長崎県内で初開催 ロケ地を持続的な観光資源に
長崎県観光連盟は県内における映画やテレビドラマのロケ地活用を強化する目的で、初めてとなる「ロケツーリズム」セミナーを実施した。受講者は県内の自治体でロケ支援を担当する職員を中心に約20人が参加し、外部の専門家からロケ地効果を短期的な話題に終わらせず、地域の持続的な観光振興につなげるためのノウハウを学んだ。
講師の指摘と自治体の現状
講師を務めたロケツーリズム協議会の藤崎慎一会長は、エンターテインメントによる集客が地域の「聖地化」を生み出す一方、それを受け止めるだけで終わらせない仕組みづくりが必要だと指摘した。
「エンタメの力って『聖地』になっていくんです。来たのを受け止めるだけではなくて、今日の課題は、どうやってそれを活かすか?」
セミナーでは、ロケがもたらす経済的効果の可視化、来訪者を再訪・拡散につなげるプロモーション、地域内の受け入れ体制整備など、具体的な取り組みが共有された。参加した自治体側からは、実績を観光資源として整理し、内外に発信することの重要性や、地域内での連携の必要性が改めて確認された。
事例紹介:新上五島町と島原市
セミナーでは県内での実例も紹介された。朝の連続テレビ小説のロケ地となった新上五島町では、4年前のロケ後の扱い方について課題が示され、講師からの問いかけに対して町の担当者は外部の話題に対する即応の難しさを認める場面があった。また、5年前に専門部署を設けてロケツーリズムに注力してきた島原市は、ロケ実績と効果を反映したパンフレット作成など具体的な発信物を整備しており、2025年度にはロケ件数とふるさと納税の額が過去最高になったことが示された。
学びと今後の方針
今回のセミナーで共有された主なポイントは次の通りだ。
- 受け入れ態勢の整備:ロケ誘致と同時に、地域側の受け入れルールや窓口、撮影以外の観光対応を整える必要がある。
- プロモーションの設計:ロケ番組放送時だけでなく、継続的に来訪を促す導線づくり(情報発信・体験プログラム)を組み込むこと。
- 地域内の誇りの形成:地元住民の理解と協力を得て、シビックプライドを醸成することが持続的な観光につながる。
住民と観光地への具体的な影響
ロケツーリズムは単なる一過性の来訪を超え、地域経済や地域社会に複合的な影響を及ぼす。番組の放送で注目が集まれば宿泊や飲食、関連商品の消費が増えることが期待できる一方、来訪者の受け入れに関しては交通、案内表示、マナー対応、撮影場所の保全など実務的課題がある。住民側では地域の誇りや再評価につながる面が報告されているが、外部からの注目に対する準備不足が逆に機会損失を招くリスクも示唆された。
自治体が取り組むべき具体策(セミナーで提示された項目を整理)
| 項目 | 具体例 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 窓口整備 | ロケ支援の一本化、撮影手続きの標準化 | 誘致の円滑化、地域内調整の効率化 |
| 情報発信 | パンフレット、ウェブでの体験情報発信 | 放送後の継続的な誘客 |
| 住民連携 | 地域説明会、マナー啓発 | トラブル低減、地域の支持確保 |
広域連携の意義
県観光連盟は、今回のセミナーで得たノウハウを各市町で個別に活用するだけでなく、市町をまたいだ広域での受け入れ体制や共同プロモーションに活かしたい考えを示している。長崎県は島嶼部や歴史的景観など多様なロケ地候補を抱えており、広域連携が有効に機能すれば、訪問者の滞在延長や複数地域の周遊に結びつく可能性がある。
読者への実用情報
ロケ地巡りを計画する際は、以下の点を確認すると安全で有意義な訪問につながる。
- 訪問先の自治体や観光協会が公開する公式情報やパンフレットを確認すること。
- 撮影で使用された場所が私有地や保護区域でないか、立ち入りルールを事前に調べること。
- 地元住民への配慮(騒音や駐車マナーなど)を守ること。
まとめ
今回のセミナーは、ロケがもたらす短期的な話題性に頼るのではなく、地域資源として定着させるための実務的なノウハウ共有に主眼が置かれた。自治体の窓口整備、継続的な情報発信、住民と観光客双方の理解形成が揃うことで、ロケが地域経済や地域の誇りに持続的に貢献する道筋が開ける。県観光連盟は今回の知見を基に、各市町と連携した取り組みを進める方針であり、長崎県内の観光施策にとって注目すべき動きだ。