公立プール利用料、県内で相次ぎ改定
兵庫県内の各市町が管轄する公立プールで、近年の光熱水費や人件費の上昇を理由に利用料を引き上げる動きが広がっている。2024年以降に値上げに踏み切った施設は十数か所にのぼり、運営を担う指定管理者や自治体双方が財務負担の増大に頭を抱えている。
具体例として、稲美町の「いなみアクアプラザ」では条例改正により1回利用料を200円引き上げて900円、月会費を1300円引き上げて6000円とする改定が行われた。開設以来の来館者は年間で延べ約13万人に達し、地域の健康づくりの拠点として利用者層は幅広い。施設を管理する指定管理者は光熱費やスタッフの人件費が増加している実情を示し、自治体側も一定の補填を続けてきたが、負担は増す一方だ。
運営側からは、日常の節電・節水で対応できる余地には限界があるとの声が上がっている。ある指定管理者の担当者は次のように述べた。
「節電や節水の努力は限界。コーチ一人が受け持つ人数を増やすのも安全を考えると難しい」
同様の課題は他の自治体でも見られる。豊岡市は条例で利用料の枠を引き上げる方向に改定したが、実際の運営価格は指定管理者側の判断で抑えられるケースがあり、自治体側が条例改正で柔軟な対応余地を持たせる一方で、指定管理者の収支は厳しい状況が続いている。
住民生活と施設運営に及ぶ影響
公立プールは高齢者の水中運動や子どもの水泳指導など、健康維持や福祉に直結するサービスを提供している。利用料の上昇は、特に年金生活者など可処分所得が限られる世帯にとって負担感を強める要因となる。稲美町では70代の女性利用者が値上げを受けて「年金暮らしにはつらい」と話すなど、生活実感としての懸念も表れている。
一方で、施設を維持するための現実的な対応として、自治体や県は指定管理者への支援策を導入している。兵庫県は人件費が契約時の見積もりを一定以上上回った場合、補填する仕組みを設け、契約上のリスク軽減を図っている。だが、光熱水費の高騰など構造的なコスト増は長期的な課題であり、補填策だけで全体をカバーするのは困難な側面がある。
自治体ごとの対応の違い
自治体によって対応は分かれている。加古川市では条例改正で屋内プールの利用料を引き上げる案が示されたが、指定管理者が実際の運営価格を据え置くケースがあり、市側が一部を補填している。豊岡市は条例により上限を設定しつつも、指定管理者の裁量で価格を決められる仕組みにしている。こうした違いは、各地の住民負担や施設の運営安定性に直結する。
以下に、報道で示された主な事例の要点を表にまとめる。
| 自治体・施設 | 改定の要点 | 備考 |
|---|---|---|
| 稲美町・いなみアクアプラザ | 1回利用料を900円に、月会員を6000円に引き上げ | 年間延べ利用者約13万人、運営は指定管理者 |
| 豊岡市・ウェルストーク豊岡 | 条例で上限を引き上げ(案内)する一方、指定管理者は実際の運営価格を抑制 | 指定管理者側の価格は報道時点で抑えられている |
| 加古川市(複数施設) | 条例改正で上限は引き上げたが、指定管理者は改定前価格を維持 | 市が一部増加分を補填 |
住民にとっての実務的な影響と選択肢
利用料の上昇は頻繁に通う利用者にとって家計面での負担増を意味する。特に次のような利用者が影響を受けやすい。
- 高齢者の健康教室やアクアビクスの常連
- 子どもの水泳教室に通う保護者
- 複数回利用する月会員やファミリーユーザー
自治体や指定管理者は利用者の負担を抑えるために、回数券や割引制度の継続・拡充、低所得者向けの減免措置、時差利用による料金割引などの工夫を検討する余地がある。利用者側も、自治体の窓口で減免や割引の有無を確認したり、複数の施設を比較して利用計画を見直すことが考えられる。
今後の見通しと課題
光熱費の高止まりや最低賃金の上昇といったコスト上昇要因が継続する場合、さらなる料金改定や運営形態の見直しが避けられない。短期的には自治体の補填や県の補助制度が運営を支えるが、長期的には施設の省エネ設備投資や運営効率化、地域ニーズに応じたサービス設計の見直しが求められる。
地域の公共施設は単なる娯楽の場にとどまらず、健康増進や子どもの学び、地域コミュニティの拠点としての役割を果たしてきた。利用料の上昇がこれらの機能に影響を及ぼさないよう、自治体と指定管理者、住民が協働して解決策を模索することが重要だ。
(藤田 早紀)