自治体と企業が平時活用から有事運用まで議論
埼玉県の大野元裕知事は8月6日、越谷市に本社を置く日本特種ボディー株式会社を訪れ、同社が開発・製造するフェーズフリー認証キャンピングカーの工場を視察した。越谷市長や県議会議員、市議会議長らも同行し、製造工程の確認や車両の実走試乗、災害支援での活用事例を踏まえた意見交換を行った。
視察で紹介された車両は、大容量リチウムバッテリーとソーラーパネルにより長時間のエアコン稼働が可能で、運転は普通免許(AT限定対応モデル)で行える仕様や、荷物の積載性を高める着脱式ベッドを備えるなど、日常利用と災害時の両方を想定した設計が特徴だという。企業側は、平時はレジャーやレンタル、移動オフィスなどで稼働させ、災害発生時には迅速に支援車両へ切り替える運用(フェーズフリー)の考え方を示した。
「キャンピングカーはレジャーだけのものではない」として、平時から有事まで機能するモビリティの普及を進めたい。
今回の訪問は、製造現場の確認にとどまらず、移動診療や移動投票所、福祉支援など行政サービスへの応用、自治体と民間が継続的に車両を運用・整備する仕組みづくりといった具体的課題が話題になった点も重要だ。参加者からは、単に車両を備えるだけでなく、平時の利用を通じて稼働・整備状態を保つことが有事の即応性を高めるとの共通認識が示された。
住民に届く具体的な利点
- 避難所の代替・補完拠点:電源や空調を備えた車両は、インフラが損なわれた地域での宿泊や打ち合わせ拠点として機能する。
- 行政サービスの移動化:移動診療や移動投票所など、人口密集地以外でのサービス提供手段を補強する可能性がある。
- 平時の地域経済貢献:レンタルやイベント運用を通じ、地域の観光やイベントを支援しつつ有事に備える運用が可能になる。
越谷市内に拠点を置く企業での実装が進めば、災害時における越谷市民や周辺自治体の初動対応能力が高まると期待される。千葉・東京と接する埼玉の東部地域は地震や風水害のリスクがあり、現場で運用可能な電源・空調設備を持つ車両が早期に稼働することは住民生活の安全確保に直結する。
自治体側の運用と課題
意見交換では、自治体が車両を保有する場合の運用コスト、保守整備体制、運用責任の所在、レンタル事業者との契約条件など実務面の検討が必要だと指摘された。自治体と民間の連携により以下のような点を整理しておくと運用が円滑になる。
| 論点 | 具体的検討事項 |
|---|---|
| 所有と運用 | 自治体直営か民間委託か、平時の稼働計画 |
| 整備・点検 | 定期メンテナンスの頻度と費用負担 |
| 迅速展開 | 緊急時の移動ルールや優先配備先の優先順位 |
また、車両に搭載される電源や通信機器の耐久性、充電インフラの確保、運転や現地での運用に関する人材育成も継続的な課題になる。こうした実務面の整理が進めば、平時の社会活動と有事の支援を両立させやすくなる。
地域展開に向けた今後の見通し
日本特種ボディーは、自治体や大学、企業との連携を重ねながらフェーズフリーの普及を目指すとしている。製造元が県内にある利点を活かし、越谷市や周辺自治体が先行的に導入モデルを作れば、他自治体への横展開や自治体横断の共同運用といったスキーム構築につながる可能性がある。
今回の視察は具体的な導入決定を示すものではないが、製造現場での確認と自治体関係者との議論が行われた点は、地域防災力強化の実効性を高めるプロセスとして評価できる。実務面の整備が進めば、住民にとっては災害時の避難・生活支援の受け皿が増える利点が直接的に得られる。
企業の詳細や製品情報は企業サイトで確認できる。視察は2026年8月6日に実施され、今後も自治体と連携しながら地域実装の検討を進める方針だ。
(執筆:プレスリリースジェーピー埼玉県担当記者 吉田 亮)