作成率は4人に1人、目標に届かず
広島県が推奨する災害時の個人行動計画「マイ・タイムライン」の作成状況について、県が実施した2025年度の県民意識調査で、実際に作成している人は4人に1人にとどまることが分かった。県は当初の普及目標を掲げているが、今回の結果はその半分にも満たない水準だったとして、認知度の低さを課題に挙げている。
「マイ・タイムライン」は、災害発生時に個人や家族が取るべき行動や早めの判断基準を事前に整理するものだ。県はこれを県民一人一人が持つことで、避難行動の迅速化や二次災害の抑制を期待しているが、作成率が低迷している現状は、実際の災害時の被害軽減に結びつきにくいことを示している。
県の対応と対象拡大の方針
県は、認知不足が普及の阻害要因と見ており、周知の強化策を進める方針だ。特に企業や大学など組織単位での周知を重視する姿勢を示している。自治体や事業者が関与することで、職場や学内での具体的な行動基準の共有が図られ、個人での作成につながることを期待している。
「認知度の低さが課題とみており、企業や大学への周知を強める」
住民にとっての具体的な影響
作成率が低いことは、次のような具体的な影響を地域にもたらし得る。
- 避難の判断が遅れ、被害が拡大するリスクが増す。
- 家族間での避難場所や連絡方法が共有されておらず、混乱が生じやすい。
- 地域の自主防災活動や職場の安全対策に取り組む際、個々の準備状況にばらつきが出る。
広島県は過去にも豪雨や土砂災害、沿岸部での高潮リスクなど、複数の自然災害を経験している。こうした背景を踏まえれば、個々の「マイ・タイムライン」が普及することは、地域全体の耐災力向上に直結する。
作成促進のために期待される取り組み
県が示す企業・大学への周知強化に加え、住民が自身で作成・点検しやすくするための仕組みも重要だ。以下は実務的な観点から有効と考えられる取り組み例である。
- 市町村窓口や防災担当課でのワークショップやチェックシートの配布。
- 地域の自主防災組織や自治会と連携した説明会の開催。
- 通学・通勤ルートに基づいた具体的な避難経路の確認や訓練の実施。
これらは県の周知施策と相互補完的に機能することで、個人の行動計画作成率を押し上げる可能性がある。
住民が今すぐできる実務的なステップ
マイ・タイムラインの作成は専門的な知識を必要としない。基本的なステップは次の通りだ。
- 自宅や職場の所在地を基に、最寄りの安全な避難場所と避難経路を確認する。
- 家族や同居者と連絡手段と集合場所を決める。
- 避難判断のタイミング(気象情報や避難勧告・指示の受け止め方)を事前に取り決める。
- 非常持ち出し袋の中身やペット対応など、個別の事情を反映させる。
県や市町村の防災情報、気象庁の警報・注意報、地方自治体の避難指示に注意して、定期的に見直すことが推奨される。
| 現状 | 県の認識 |
|---|---|
| 作成率:4人に1人(2025年度) | 認知度の低さを課題と判断、周知強化を計画 |
| 県の目標 | 今回の作成率の約2倍を想定(県の設定目標に到達していない) |
行政に求められる視点
県民の安全を担保する観点から、行政側には単に情報を発信するだけでなく、受け手の理解と行動につながる工夫が求められる。若年層や働き盛り世代、単身高齢者など生活パターンが多様な層への周知方法を分けること、企業内研修や学内カリキュラムと連動させることは効果が見込まれる。県が示した企業・大学への周知強化はこうした考え方に合致する。
今回の調査結果は、県民一人一人が災害に備える必要性を再確認させるものだ。発災前の準備と具体的な行動計画が、被害軽減につながる点は広く共有されるべきであり、行政と地域が連携して実効性のある普及策を進めることが重要だ。
(石井 裕子、プレスリリースジェーピー広島県担当記者)