経済 盛岡市 岩手県

コメ余剰で在庫膨張、県内業者に深刻な打撃

2025年の不足から一転、2026年5月時点で民間のコメ在庫は過去最大の223万トン。岩手県でも在庫が4万トン増え、流通業者は赤字覚悟の値下げで在庫処分を迫られている。

コメ余剰で在庫膨張、県内業者に深刻な打撃
©イラスト AI生成 :高橋 誠/プレスリリースジェーピー

岩手でも在庫急増、業者は値下げで対応も損失膨らむ

2025年の一時的な不足局面から市場が反転し、2026年5月時点で民間が抱えるコメの在庫量は全国で223万トンに達しました。これは前年を約70万トン上回る規模で、農林水産省の集計が示しています。岩手県内でも在庫は2025年の約5.8万トンから4万トン増加し、合計でおよそ9.8万トンに膨らんだ計算になります。

盛岡市内の米穀店は、2025年に高値で確保した玄米が倉庫に山積みになり、販売難に直面しています。吉田米穀店の倉庫では、2025年に仕入れた玄米300トンのうち約150トンが未だ残る状態で、経営に重い負担がかかっています。

「半分くらいまだ残っている状態。本来であればもう4分の3はなくなっているはずだった」

吉田米穀店の説明によれば、2024年の不作や消費の増加を背景に価格が高騰したため、2025年秋に新米を確保する目的で仕入れを急ぎ、60kgあたり約3万3000円という高値で玄米を購入しました。しかし市場はその後、全国的な増産と政府の備蓄米放出により供給が拡大し、急速に価格が下落。加えて、高値を経験した消費者の間で節約志向が強まり「コメ離れ」が起きたことが、在庫の滞留を招きました。

現場の業者は在庫圧縮のため、利益を度外視した価格設定を進めています。吉田米穀店が店頭と自販機で販売する商品では、銘柄米を含めた一部が今年、従来より大幅に値下げされ、5kgあたり3000円を切る商品もあります。店主は労を惜しまず値下げを続ける一方で、年内の損失が数千万円規模に達する可能性を示唆しています。

県も事態の深刻さを把握しており、保管場所の不足や秋の新米シーズンに向けた価格下落(値崩れ)を懸念しています。達増知事は、政府が現在保有する在庫から備蓄米として買い上げるなど、国による調整を要望する考えを示しました。

「政府が今積んでいる在庫から備蓄米として買い上げてくれれば、この2つの問題が解決に向かうので、それをやってほしい」

今回のコメ余剰は、次のような要素が重なって生じています。

  • 生産面:2025年の全国的な収穫量増加による需給の緩み。
  • 政策面:政府の備蓄米放出が市場供給を増やした。
  • 消費面:価格高騰を経験した消費者の節約志向により、家庭での消費量が減少した。

県内の小売業者や精米業者にとって、当面の課題は在庫の保管と資金繰り、ならびに秋口に向けて予想されるさらに大きな価格下落への備えです。倉庫スペースは限られており、在庫が滞留することで保管費や品質管理の負担が増します。特に中小規模の米穀店では、仕入れ時の高騰を見越して確保した在庫がそのまま損失になるリスクが高く、経営継続に関わる深刻な問題になっています。

消費者への影響としては、短期的に価格が下がることで家計の負担軽減となる一方、値崩れが長期化すると生産者の所得が圧迫され、次年度の生産意欲や地域農業の維持に悪影響を及ぼす懸念があります。地域の農商連携や直販の強化、加工・外食分野への販路拡大など、地元での受け皿づくりが求められます。

データで見る在庫の変化(岩手を含む概要)

項目数値
民間在庫(全国、2026年5月時点)223万トン
前年との差約70万トン増
岩手県在庫(2025年)約5.8万トン
岩手県在庫(増加分)4万トン増

(注)数値は農林水産省の集計を基に当社で整理したものです。

業界関係者や行政が検討すべき対応策としては、次の項目が挙げられます。

  • 国による一時的な買い上げや備蓄の調整による市場安定化。
  • 県内外への新たな販路開拓、地元消費の回復を狙ったPR施策。
  • 加工品や業務用需要向けの供給シフト、食品ロス対策を含めた流通の再構築。

岩手のコメは食味で評価される品種も多く、付加価値化やブランディングによる需要掘り起こしは可能です。しかし、それには時期を要するため、当面は在庫処理と資金繰り支援が急務です。地元の小売や農協、自治体は連携して短期・中期の対策を検討する必要があります。

県内の消費者は、一定の価格低下で家庭の食費には一時的なメリットがありますが、地域農業を守る観点からは、地元産の継続的な購入や需要創出の取り組みに目を向けることが重要になります。業者・行政・消費者がそれぞれの立場で解決策を模索する中、秋以降の動向が地域経済に与える影響は大きく、注視が必要です。

(高橋 誠)

高橋 誠
高橋 AI編集 岩手県担当記者 オンライン

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