高知市中心部の医療拠点で新設備が稼働
高知市の近森病院で、新設された薬剤棟(耐震構造)と空中通路(免震構造)が相次いで運用を開始した。薬剤棟は6日から、空中通路は7日から稼働している。両施設は南海トラフ地震や津波が発生した場合の医療提供継続に向けた対策として整備されたもので、建設には約10億円が投じられ、2025年6月から工事が進められていたと病院側は説明している。
病院が立地する地域は、南海トラフ地震や津波発生時に最大でおよそ2メートルの浸水が想定されている。このため、これまで本館1階にあった薬剤部を4階以上に移設し、貯蔵する医薬品や医療資材が浸水の影響を受けにくい配置に改めた。あわせて空中通路を使うことで、災害発生時に建物間を安全に移動できる導線を確保した。
- 薬剤棟:耐震構造、薬剤部の高層化により浸水リスクを低減
- 空中通路:免震構造で建物間の往来を確保、患者や職員の安全移動を支援
- 工事費用:およそ10億円、工期は2025年6月着手から完了まで
近森病院の入江博之理事長は、報道陣に対し「高知市の中心街にありまして、逃げ込む病院はうちになる。そこがしっかりしていないと多くの方が、最悪の場合死亡・後遺症などいろいろなことが起こる。そういった数を少しでも減らすために、こういった設備を1つの手段として考えている」と述べ、地域の避難先として病院が果たす役割と新設備の意義を説明した。
「高知市の中心街にありまして、逃げ込む病院はうちになる。そこがしっかりしていないと多くの方が、最悪の場合死亡・後遺症などいろいろなことが起こる。」— 入江博之・近森病院理事長
住民にとっての具体的な影響
今回の整備は単に施設が新しくなったというだけではない。実際に災害時の医療提供に直結する複数の利点がある。
まず、薬剤部の高層化により、浸水による医薬品の損失リスクが低減する。災害時に必要となる救急薬や抗菌薬、持続投与が必要な薬剤などが安定して確保できれば、救命処置や急性期の治療の継続性が高まる。これは、被災した住民が病院に避難してきた際の初期対応能力に直結する。
次に、空中通路による建物間の移動経路の確保だ。地上通路や外部の歩行経路が浸水や瓦礫で使えない状況でも、安全に移動できる導線があることで、診療体制の維持、患者の転送、物資の搬送が円滑に行える。特に高齢者や重症患者の避難・移動の負担を軽減できる点は重要である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬剤棟構造 | 耐震 |
| 空中通路構造 | 免震 |
| 工事費 | 約10億円 |
| 薬剤部の配置 | 4階以上に移設 |
| 運用開始 | 薬剤棟:7月6日、空中通路:7月7日 |
これらの整備は、救急受け入れ病院としての信頼性を高めるだけでなく、自治体の避難計画や周辺医療機関との連携にも影響を与える。災害時にどの病院へ避難・搬送するか判断する際、施設の耐震・免震性能や医薬品の備蓄状況は重要な要素になるからだ。
今後の運用と住民への注意点
運用開始に伴い、病院側は内部の運用フローや職員の訓練、備蓄管理の見直しを行う必要がある。設備があっても日常の運用が整っていなければ効果は限定的になるためだ。住民としては以下の点を押さえておきたい。
- 避難時の受入れ先:高知市中心部で避難先に指定される場合、近森病院が候補になり得ることを認識する。
- 服薬情報の携帯:被災時に治療継続が必要な薬がある場合、薬の名前・用量・服薬履歴を記したメモや薬手帳を携帯することが重要。
- 最新情報の確認:病院や自治体からの避難情報・受け入れ状況は変化し得るため、ラジオや自治体の発信を確認する習慣を持つ。
病院側は今回の整備を通じて、災害対策の強化を図ったが、地域全体での備えも不可欠だ。自宅や家庭での備蓄、避難経路の確認、近隣住民との連携など日常の備えを進めることが、災害時の被害軽減につながる。
今回の整備は、地震・津波リスクが現実味を帯びる高知にとって、医療提供体制の強化という観点から意義が大きい。病院の担当者は今後も訓練や点検を重ね、地域医療の応答力を高めていく方針だ。住民は医療機関の役割と自身の備えを再確認しておくとよい。