ネーションズチャンピオンシップで示された現在地
ラグビー日本代表は7月に開幕した新設大会「ネーションズチャンピオンシップ」で、強豪と対峙する3連戦を消化した。大会前の世界ランキングは12位で、日本は大会の組み分けにより「南半球」グループに入った。7月4日からの連戦では、イタリア、アイルランド、フランスという北半球の強豪と順に対戦し、最終的に1勝2敗の成績でひとまず一巡を終えた。
結果の数値だけを見れば波乱は限定的だが、試合内容からは来年のワールドカップ(オーストラリア大会)を見据えた具体的な示唆が多く得られた。勝利となったイタリア戦(27―10)では狙いどおりの動きが見られた一方、アイルランド戦(20―36)、フランス戦(15―42)では空中戦やモール対応など、対上位国で露呈する課題も明確になった。
| 対戦国 | スコア |
|---|---|
| イタリア | 27―10(勝利) |
| アイルランド | 20―36(敗戦) |
| フランス | 15―42(敗戦) |
代表はエディー・ジョーンズヘッドコーチ(66)の下、’23年のフランス大会の苦杯を踏まえつつ、’27年大会での上位進出を目標に取り組んでいる。復職以降は若手中心への舵取りと並行して、スタッフやコーチ陣の入れ替えが続いており、チーム作りには難しい局面が見られる。
試合で浮かんだ技術的・戦術的課題
最も顕著だったのは空中戦の弱さだ。高弾道のキックを捕り合う場面で競り負けることが多く、こぼれ球を相手に拾われてピンチに転じる場面が散見された。特にフランス戦では相手に押し込まれる状況が続き、6トライ中5本のきっかけになったモールへの守りが脆弱だった。これらはフィジカル面の差だけでなく、対応の仕方やポジショニングの問題を示している。
チーム内ではウイングに長身選手が少ない点が以前から検討課題であり、昨季は別ポジションの選手を捕球役に回すなどの工夫を見せたが、今季は再びウイングが対応する形で試合に臨んだ。ウイングの一人である石田吉平(26、身長167cm)は自身の不足を認めつつも、「自分でしっかり工夫しながら、空中戦に向き合っていきたいです」と語っている。
「相手へのプレッシャーを(自分たちから)抜いてしまうところがある」
この指摘はジョーンズヘッドコーチによるもので、攻守双方における主体性の欠如が最上位国との違いの一因になっていると強調された。また攻撃面ではバリエーションの不足があり、試合によっては相手のモールや圧力に対し受け身になってしまう場面があった。
光る部分──局面での優位とコンセプトの浸透
一方でポジティブな評価点もある。対人での衝突、特にフォワード第2、3列の衝突耐性は世界の上位国に見劣りしないレベルに到達しているとの指摘がある。ロックやフランカーといった選手たちが強い当たりを作り、タックルで相手の前進を阻む場面は増えている。
攻撃面では「超速ラグビー」を標榜するジョーンズHCの意図が浸透し、決まり事の中でスペースを見つけて速やかに仕掛けるシーンが増えてきた。イタリア戦やフランス戦のトライには、ボールを持たない選手の積極的な回り込みや、キック後の迅速な戻りからの反撃など、狙いどおりの動きが出た場面があった。
- フォワードの衝突耐性向上でフィジカル面は改善
- 攻撃の基本コンセプト(速い動き出し)は浸透
- 空中戦とモール守備は継続的な改善課題
齋藤直人(スクラムハーフ、28)は練習段階から、スペースを見れば即座に仕掛ける選択が増えてきたと語り、チーム内の判断速度の向上を示唆している。だが、その即興性が勝利につながるためには、基礎技術と人数・体格面での対応力も併せて整備する必要がある。
今後の見通しと代表の取り組み
直近の活動としては、7月25日から11日間にわたる網走合宿で基礎的な鍛え直しを行ったうえで、8月に予定されるオーストラリア代表との2連戦で成果を検証する見込みだ。攻守両面での細かな修正が求められ、特に空中戦対策とモール守備の強化は急務といえる。
なお、昨年退任した攻撃担当コーチの後任については外部からの候補に一本化され、正式発表へ向けて手続きを進めているという。人事の固まり方が戦術の安定と直結するため、スタッフ構成の確定は今後の準備にとって重要な要素となる。
総じて今回の3連戦は、勝敗以上にチームの“現在地”を測る良い試金石となった。強豪国相手に通用する基盤が整いつつある一方で、細部の完成度が勝敗を左右することも明白になった。来年のワールドカップ本番へ向け、時間をどう使い、どの課題を優先して潰していくかが日本ラグビーの浮沈を決めるだろう。